124 高性能?
高性能?
魔女の能力は高い。 ・・・ 記憶力も身体能力も、その他全てもである。
何故そうなったのか?
人間の迫害から逃れる為である。
魔女は絵本や物語にある様に、オドロオドロしい姿形ではないのである。
教会などの宗教関係者が、”醜い生き物”であるとしたかったからなのである。
実際に、宗教画などに描かれる悪魔やその関係者は、”醜悪”に描かれている。
英国では幽霊は怖くも何ともないが、悪魔には恐れおののく。
宗教関係者が、諄いくらいに教え込んだ結果である。
長い間、宗教の関係者がそう言った考え方を民衆に刷り込んできたのである。
フランスを含めたヨーロッパの各国も、同じ様な感じである。
そういえば、ロールス・ロイスの車名にも幽霊に関する名前が多い。
・ ゴースト Ghost(幽霊、面影)
・ ファントム Phantom(幽霊、生霊、幻影)
・ レイス Wraith(幽霊、死霊、亡霊)
・ ドーン Dawn(夜明け)
・ シャドー Shadow(陰影、気配)
名前は色々ですが、どれも、「静か」で、そして「ぼんやりしか見えない」感じです。
そして、英国らしく、「ゴールド」ではなく、「シルバー・・・」となるものが多い様です。
キンキラキンではなく、シックに白っぽいのが良いのでしょう。
話が戻って、 実際の魔女は、美人でスタイルが良いのです。
以前にも説明しましたが、魔女のお相手は”普通の男性”なのである。
普通の男性の理想では、自分の相手は”美人でスタイルが良い”が基本です。
まあ、実際は”妥協”と言うものも必要になるという、悲しい現実があります。
でも、「どうしてあんな美人にあんな男が」という場合もありますが、人間には「好き好き」と言うものがあるのです。
見えない部分で、女性を惹きつけているのかもしれません。
しかし、魔女は意中の男性に”一途”なのである。
その男の為ならば、何でもしてあげたいのである。
そして魔女は、徐々にではあるが、自分をその男の”好み”に変化させる事が可能なのである。
結果的に男の理想である”可愛くて美人でスタイルが良い”女性に変わっていくのである。
だから魔女は、絵本や物語にある様な、”目がギョロ”つき、”大きく曲がった鼻”などではないのです。
ただ、魔女は自分の意中の男だけに、そんな姿を見せたいのである。
その為に、人間からは見えにくくなる”目立たなくするオーラ”を纏い、意中の男にだけ自分を見せるのである。
魔女は勉強が出来る。
勉強が好きなわけではありません。
生きていく為には、色々な事を学習しなければいけないのです。
普通の人間ならば、ある部分だけでも”出来”が良ければ十分であるが、自分一人で生きる場合がある魔女は、色々な知識を吸収するのである。
常に平和な状況で生きていける保障がないからである。
だから、記憶力を良くして、沢山の知識を吸収するのである。
魔女の視力や聴力は、普通の人間と変わらない。
多少、良い方の部類に入るかもしれない。
ただ、近視や遠視にはなりにくい。
何故なら、人間からの迫害から逃げる為には必要な”感覚器官”だからである。
魔法によって、遠くのものを見たり、雑踏の中から対象となるものの音を聞き分けることは可能である。
迫ってくる敵の脅威から、逃れる為の”悲しい”機能なのである。
間違えても、”ながらスマホ”や”両耳にイヤフォン”などはしない様に教育されている。
自分から危険な方向に進むのは、愚か者の所業なのである。
自分から危険な方に向かわない様に、何度も教育されるのである。
諄いくらいに教育され、習慣になるまで続けられるのである。
髪型や髪の毛の色は、特に、とやかくは言われない。
これに関しては、各自の好みである。
服装も特には言われない。
何と言っても、人間からは見えにくくなる”目立たなくするオーラ”を纏うので問題はない。
走れば足は速い。
人間に襲われたとしても、出来る限り逃げ切る為である。
足が長いのも、足の速さに貢献している様である。
昔、魔女狩りがあったヨーロッパでは、魔女は犬をけしかけられる事が多かったので、猟犬以上の速さで走れる様である。
「様である」と言うのは、犬に囲まれても魔女が犬を手懐けて、自分の思う様にコントロールしたからである。
魔女は、基本、動物好きである。
次いで、跳躍力も優れている。
かなりの高さの物でも、飛び越えることが出来る。
でも、普段はその能力は使わない。
目立つことは禁止されているからである。
全ては逃げ切る為に、仕方なく備わった能力である。
実はそれに”オマケ”が付く。
”オマケ”とは魔法である。
本来は一番最初かもしれないが、魔女も人間と同じで、パニックになると「直ぐに魔法を・・・」となるとは限らないからである。
より早く、より高く、そして、より遠くへ。
卓越した身体能力に、魔法をプラスして追手から逃げ切る為である。
”瞬間移動”は一番の武器になるかもしれないが、行った先の安全が担保されていなければ、逆に危険なのである。
強力な武器ほど、確認が必要なのである。
腕力はそれほどではないが、そのつもりになれば強い力を発揮出来る。
これは、魔法を使う前である。
魔法の力を加味すれば、恐ろしい力を出すことも可能なのである。
でもそれは、逃げ切れない時の最後の方法である。
では、魔法を利用して”追手”を叩き潰せばよさそうであるが、人間と言うのは執念深く、自分だけでなく魔女の知り合いにも危害が及ぶかもしれない。
そして人間の数は、果てしなく多いのである。
大昔は、魔女である自分が逃げ切れれば、何とかなる事が多かったので、その様に魔女は進化していったのである。
まあ現代であれば、そんな心配はなくなってきているのであるが、何百年もそうした暮らしをしてきた所為で、その様に進化したのである。
現在は情報化社会である。
それを有効に活用したのが「デジタル魔法システム」である。
優秀なシステムであるが、人間が作ったシステムと確実に異なる部分がある。
各機器の入出力部分に小さいボックスが付いているのである。
見ても分からないくらいの大きさである。
魔法で作っているので、いくらでも小さく出来るからである。
そしてボックスの中身は「魔法」である。
魔法にも色々あって、セキュリティに関わる魔法も開発された。
セキュリティを凝縮した魔法が、そのボックスに詰め込まれている。
魔法による、デジタル機器の防御システムである。
一般のセキュリティもそうであるが、日進月歩である。
新しくなった魔法のセキュリティが、常に更新されて盛り込まれている。
ユーザー側の魔女が使うパソコンやスマホは、外敵から守るだけである。
しかし、ナオミ達が使っているパソコンやサーバーやルーター関係は、守るだけでなく攻めに行く事が可能である。
勿論、どこかのサーバーを攻撃するのではなく、自分達が使っているパソコン等に侵入しようとする様な外敵に対してである。
人間が困っていても、夫とかが関連していなければ、気にもしない。
しかし、矛先が自分達”魔女”に向けられてる場合は、瞬時に対応する。
降りかかる火の粉を振り払うのに、躊躇はない。
特にサーバーやルーターにアクセスしてくる外敵には、瞬時に反応して対抗する。
初期の頃は、相手のパソコンを瞬時に探し出して、爆発させていた。
しかし、事故となると色々調査が行われ、面倒が起こり易い。
近頃は、相手のパソコンやサーバーを木っ端微塵にするくらいで止めておく。
でも、それは一度目だけで、同じ外敵と判断した場合は、パソコンを使っている当事者も木っ端微塵となる。
猶予は「1回」だけである。
二度目は無い!
近頃は魔法でAIの機能強化を行って、デジタル魔法システムにも導入されている。
現在進行中なのは、各端末であるパソコンやスマホへの不正アクセスに対して、この防御システムを導入する予定である。
どういう訳か、怪しい勧誘の電話やメール等の迷惑なものが後を絶たない。
そして、闇バイトなどの悪質な連中も、利用しているのである。
実際、電話会社や携帯会社は、その様な連中から使用料を受け取っている。
電話会社や携帯会社は、迷惑電話やメールを送って来る連中も”お客様”と思っているのである。
しかるに、迷惑電話やメールの拒否機能は、電話会社や携帯会社ではなく、電話機やスマホのメーカーが対応しているのである。
大会社も、口では立派な事を言うが、要はお金が儲かれば、それが最優先になってしまうのである。
魔女である事が世間に知られる訳にはいかないので、デジタル魔法システムには新しい機能が追加されている。
魔法によるエゴサーチ機能で、SNS上の「魔女」に関わる文言のチェックをしているのである。
魔法によるAI機能が、魔女に代わってお仕事をしている。
魔女の個人氏名などが投稿されれば瞬時に反応し、関係データのみならず、投稿者を抹殺することも厭わないのである。
投稿する方は面白半分であっても、魔女が魔女だと知られれば、死活問題となり、生死に関わる事もあるからである。
本当は、人間と共存共栄を図っていきたいのであるが、約束を破るのは常に人間の方なのである。
その為に、雁字搦めのようなシステムを構築したのである。
その反動で、結婚した魔女は、夫に甘える。
唯一、信頼出来る人間だからである。
安心出来る人間だからである。
日頃の緊張を和らげてくれる、この世でただ一人の人間だからである。
さかんに、魔女の見た目が意中の男の為に変化すると書いてきましたが、一番変わる部分があります。
アソコです。
例え、夫となる男のアレが「租〇ン」でも、それに合わせる様に変化するのである。
しかし、魔女と一緒になる男は、魔女の一部になる。
魔女の為に生きていく男になるのである。
魔女の為に一生懸命働く事は勿論、男のアレも変化するのである。
魔女が自分の意中の男の為に変化する様に、魔女の一部となった男は、自分自身を変化させる事が可能になるのである。
魔女を喜ばせる為に、自分の全てを捧げるからである。
魔女であるナオミは、夫の事が大好きである。
子供が生まれても、それは変わらない。
魔女は、子供の事も夫の事も、同じ様に愛しむのである。
そこいら辺が、普通の人間と違うところである。
子供の事は、勿論一生懸命であるが、夫の事を疎かにする事は無い。
子供が生まれる前以上に、夫の事を愛するようになるのである。
世間でもインフルエンザが流行り、夫の会社でも大流行となって、夫のゆたかもうつってしまった。
会社から帰ってきた夫のゆたかを見たナオミは、危機管理システムで、夫がインフルエンザにかかった事を感知しました。
長い魔女の歴史を積み重ねてきた ”考え” や ”やり方” を集積して出来上がったシステムなのです。
直ぐにナオミは夫を隔離します。
年寄りのジイジやバアバ、赤ん坊の息子のゆういちもいるからです。
大きい家で部屋が余っているので、2階の客間の和室に夫のゆたかを押し込めます。
狭い家であったら、インフルエンザによって、全滅になりかねません。
ナオミは自分自身に「病原菌対抗バリア」を張って対応します。
夫に手洗いうがいをさせて、近くの内科に行かせます。
治癒の魔法で何とか ・・・ と思われますが、 薬と言うのは、大昔は魔法のようなものなのです。
魔女の容姿については間違いだらけですが、魔女が扱っていた薬草等に関する知識に関しては間違えてはいません。
今ある薬は、漢方薬を含めて、大昔は「魔法」なのです。
”病”と言う悪魔から守ってくれる、「有難い魔法」なのです。
ですから、魔女が自分達で薬草などを集めるよりも、医者に行って薬を処方させてもらった方が早いのです。
会社から帰って来れたくらいですから、ゆたかは一人で近くの内科に行きました。
まだ、熱は出ていない様です。
医者の所で検査はしましたが、結果は「陰性」でした。
インフルエンザのウイルスは検知されなかった様です。
医者からは「様子を見ましょう」で終わりました。
それでも、ゆたかが家に帰ると、ナオミは強引に夫を隔離しました。
そして次の日に熱が出て、もう一度医者に行きました。
医者が言いました。
「インフルエンザのAです。」
医者から家に帰る前に、処方箋をもって薬局で薬を貰って家に帰ってきました。
玄関で、勝ち誇った様にナオミが言いました。
「ほら、 やっぱりインフルエンザにかかっていたじゃない。」
現代医学よりも、魔女の危機管理システムの方が優れているのです。
インフルエンザのイヤらしい体質?が、直ぐには病原菌を見せないのです。
でも、魔女の危機管理システムには、お見通しなのです。
早めの対応のお蔭で、家族にはうつりませんでした。
同じ会社に行っているおとうさんですが、ナオミがチェックしても大丈夫でした。
おとうさんはお酒を呑むので、アルコール消毒が効いたのでしょうか?
いえ! 絶対そんな事はありませんので、お気を付けください。
若手がたくさん集まっている工事部や設計部ではない”お偉いさん”なので、人の数が少なかったのです。
病原菌に効果のあるバリアーのお蔭で、ゆたかの世話を焼くナオミにはうつりません。
ゆたか用には、ナオミの愛情たっぷりの食事メニューです。
ナオミが付ききりで、食べさせます。
いつも、よく噛まないで飲み込んでしまうゆたかです。
でも、ナオミが一口ずつ食べさせて、こう言うのです。
「はい! ア~ンして!」
ゆたかが口を開くと、ナオミがスプーンで食べさせます。
「はい! 30回噛みましょうね! いち、にい、さん、 ・・・ さ~んじゅう。 はい、良~し!」
食事のメインは「おかゆ」です。
30回は大変です。
でも、ナオミが許しません。
仕方なく、ゆたかは30回噛むのです。
一応、梅干しや、柔らかい卵焼きや、ほぐしきったアジの開きも付いている様です。
数日経ったある日の夕方も殆ど同じ感じで、ゆたかの夕食は終了です。
ナオミが、ゆたかが食べ終わった食器を片付けて廊下に出ました。
扉は閉まっていますが、声が聞こえます。
ナオミときららです。
きらら。
「お姉ちゃんはお兄ちゃんの世話だと、嬉しそうね?」
ナオミ。
「そう? いつも通りだよ。」
きらら。
「だって、ゆうちゃんの世話よりも、一生懸命じゃない。」
ナオミ。
「ゆういちの世話は、おかあさんやバアバがやりたがっているから、お任せしているのよ。」
きらら。
「え~~、 そうかな~? でも、本当に嬉しそうだよ。」
ナオミ。
「うふふふふ。 愛しているからかしら?」
きらら。
「はい、はい。 そういえば、今日の夕食は何? 」
ナオミ。
「おかゆじゃないわよ。 この前、ジイジのお友達が送ってきてくれたお肉の”ステーキ”よ。」
きらら。
「やった~~! どこのお肉?」
ナオミ。
「北海道の襟裳岬近くの牧場の牛肉だって。 赤身だけど、物凄く美味しいんだって。」
きらら。
「お姉ちゃん! 手伝うから早く食べようよ!」
そう言って、二人は階段を下りていきました。
1階のリビングでは、ゆういちがうつ伏せになって、手足をバタバタさせています。
おかあさん。
「もうすぐ、ハイハイが出来そうね。」
バアバ。
「赤ちゃんは直ぐに大きくなるのよね。」
近くにワンコのタロウがいて、ハイハイを教えたくてムズムズしています。
その頃、2階に隔離されているゆたかはこういう状態です。
「あ~~! お肉食べたい!」
そう言って、手足をジタバタしています。
息子のゆういちと一緒です。




