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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
12/167

12 普通の日

普通の日


平日の行動は月曜日と変わらない。


一緒にジムに行って俺は会社、ナオミは多分料理教室。

料理教室以外、何処に行っているのかは聞かない。


ナオミの姉ヒロミの言葉「ナオミはあなた以外の人を好きにはならない」。

俺を好きでいてくれる人を信じないで誰を信じるんだ。

人が良すぎると言われようとナオミは俺の女神だから。



就業終了後、帰るメールを送ると駅で待っていてくれて一緒に帰る。

これ以上の幸せを望むまい。

絶世の美女と言っても過言ではない女が、俺だけを好きだと言ってくれている。

これ以上の贅沢は要らない。



ナオミはスマホを持っていないが俺の居場所は分かる。

「どこいら辺まで分かるの?」と聞いてみた。

「世界中何処でも」

「あなたの隣なら直ぐにでも行く事が出来る」とも。


意地悪そうな微笑みを顔いっぱいにして「逃がさないから」と脅しを入れられた。


「俺も直ぐにナオミの元に行きたいけど、魔力は無いし」と力なく呟く。

「ある事をすればあなたも一回か二回は魔力を使えると思う」


「ある事を何回もやって貯めておくことは出来るの?」

「やってみたことが無いから分からない」


「ナオミがやってみた事がないと言うのは、何か怖いな」

「でも皆やってるみたいだけど、私は姉から奥手だと言われているし」


「俺みたいな普通の人が魔力を使っても大丈夫なの?」

「さあ?」



魔力や魔術の話題で夜は更けていった。




ジムにて


出勤の日は、ジムに通っている。


早い時間に起床するのは辛いが、会社帰りの時間帯のジムの混雑は心が折れる。

ただ、近頃はナオミが一緒に来てくれるので、正直嬉しく、ひたすら嬉しい。



学生時代は時間に余裕があって、ジムの会員の集いには積極的に参加し、スタイルの良いオネーサンとのお付き合いを夢見ていた。


だが、小さい頃から男だらけの世界と、見た目とは裏腹の可愛らしさとは無縁な姉貴のお蔭で、女性への対応適正が欠落していた。


何度頑張っても女性との会話が続かない。結果、話の上手いチャラい男にかなわなかった。

どうする?俺!

ひたすらストイックにトレーニングに打ち込む事となった。



社会人になると時間の制約もあり、ルーチン間のインターバルも短くなり、端から見てもストイックさが増した。

まるで愛想がない雰囲気を纏っている為、毎日通っているので顔見知りも多いが、挨拶を交わすくらいだ。


しかしヨーロッパ系の人種は違った。

どんなにストイックに愛想がない雰囲気を纏っても、ルーチン終わりにタイミング良く声をかけてくる。

俺の愛想は日本語で、英語圏のヤツには通じないのかもしれない。


結果、やたら仲の良いジム仲間はビルとジョージというアメリカ人二人となった。



ビルは海兵隊上がりのアフリカ系で185cm110kgとでかい。

ジョージはアメフト代表選手だったイギリス系で200cm120kgと更にでかい。

アメリカと戦争して勝てるわけがない。



俺が一生懸命英語で話しかけ彼らが流暢な日本語で返すので、いつもインストラクターに笑われている。



流石に海外勢は女性に声を掛けるのが上手く、ナオミにも声を掛けたが、俺の奥さんと分かったときは腰を抜かしていた。


いつもは流暢な日本語を話す奴らが、「Why? Damn it!」を繰り返した。

ついでに「Naomi! あいつに愛想が尽きたら連絡してくれ」とウインクしていた。



真面目な連中が揃っているジムではあるが、例外もある。

水着もどきのトレーニングウェアーに舌なめずりをしながら、目をギンギラにしている奴もいた。


有段者で、空手の技を組み合わせたエアロビクスも担当するインストラクターのオネーサンがいた。

助平で馬鹿なヤツのトラブル防止の為、拳のタコを撫でながらいつも監視を怠らなかった。


姉貴の空手の力を吸収し、その姉貴の大学空手部の後輩であったそのインストラクターと、ナオミが仲良しになるのに時間は掛からなかった。



殆どの水着もどきのトレーニングウェアーに無視された目ギンギラの馬鹿は、ナオミにちょっかいを出した。

俺の居る位置からは見えているがかなり遠い位置だった。


ナオミに手を掛ける直前に、男はビルとジョージに囲まれ「俺たちの友人の奥さんに何をしてる!」とえらい剣幕で脅しあげられた。


直ぐにインストラクターが飛んできて「会員資格を剥奪します。よく恥ずかしくないですね!」と言われながら事務所に連れて行かれた。

余罪がタップリのその男を、二度と見る事は無かった。



ビルとジョージの二人にウインクされたが、渋い顔で首をかしげながら握りこぶしをあげることしか出来なかった。

受付前のカウンターでプロテインドリンクを奢らせられたのは、言うまでもない。



今まではナオミと一緒にジムから出ていた。

その日からは、ナオミが空手エクササイズの申し込みをした為、寂しく一人で駅に向かう事となった。



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