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駄目(俺+魔女)  作者: モンチャン
114/168

114 ゆたかの持ち物?


ゆたかの持ち物?



人は、それぞれ「持ち物」があります。


ゆたかが住んでいる家は、おとうさんの”もの”らしいのです。

勿論、ゆたかのお祖父じいさんが建てたのですが、生前贈与的におとうさんの”もの”になったという事らしいのです。


お話にはあまり出てこない、いや、殆ど出てこないのですが、お祖父さんもお祖母ばあさんも健在です。

お祖父さんもお祖母さんもお互い仕事をしており、かなり儲けているらしく、ホテル住まいです。

色々なところに行けるし、仕事のついでに旅行を楽しんでいる様です。


お祖父さんは好みのものは有るらしいのですが、所有欲は少なく、息子のひろしやゆたかにあげてしまいます。

勿論、要らないものなら処分して構いませんが、処分するようなものは他人ひとにはあげないので、売れば結構なものが殆どです。


お祖母さんも同じ様な性格で、義理の娘のめぐみやナオミにあげてしまう様です。

どういう訳かこの家の女性は、自分の産んだ娘ではなく息子の嫁を好きになる様です。

もしかしたら、”呪い”が掛かっているのかもしれません。

まあ、お祖母さんの子供は男の子だけですが ・・・



おかあさんが出掛ける時に持っていくバッグは義理の母親(お祖母さん)からの”それ”で、海外の有名店のものらしいのですが、日本には入ってこない”かなりの高級品”です。

おかあさんも目立つのが嫌いなので、自分には掛けませんが、そのバッグには”人に気付かれない魔法”をかけています。


因みに、”人に気付かれない魔法” は ”人に気付かれないオーラ” と同じです。

魔法よりもオーラの方が格好良いので、オーラを使う人が多い様です。


高級品と気付かれると、頭のおかしい連中に襲われたりするからです。

おかあさんは面倒臭いのは嫌いです。

おかあさんは襲われれば、当然、相手を叩き潰します。


大概、おかあさんを狙ったやからは”再起不能”になります。

おかあさんは手加減をしません。

魔女や鬼女や魔法使いの特性です。


魔女や鬼女や魔法使いに「躊躇」はありません。

長い歴史の中で、躊躇したことによってたくさんの仲間が痛めつけられ、殺されていったからなのです。



でも、確認はします。

チェックはするのです。

自分での判断だけでは時間が掛かります。

その為にも”魔法”を使うのです。

お陰で、瞬時に確認が出来るのです。



魔女や鬼女や魔法使いは余計な争いを好まないのです。

出来るだけ避けるのです。


例え最初の人や人達に勝てたとしても、人間の数は多いからです。

そして、執念深いからです。


ですから、戦いは避けたいのです、いや、避けるのです。


そうして、魔女や鬼女や魔法使いは生き延びてきたのです。


でも、悲しい事に迎合は出来ません。

人間は卑怯なのです。

最初は良くても、そのうちに自分達の都合の良い様に、関係を変えてくるからです。



でも、魔女は信頼出来るひとを探します。

それが自分の夫なのです。

本当に信頼できるひとだから、夫を魔女の一部にするのです。

当然、魔女も夫の一部になるのです。

二人で一つになるのです。


”存在”としては”二人”のままですが ・・・




話を戻して、「持ち物」の話です。

タイトル通り、”ゆたかの持ち物”の話。



本当は、ナオミの持ち物の話にしようと思ったのですが、ナオミは最小限のものしか部屋に置いていません。

下着とTシャツにジーンズのパンツくらいです。

靴はスニーカーが玄関の下駄箱に入っているだけです。


他のものはどうしたのか?

もしかして、持っていないのか?

いえ、いえ、 たくさん有るのです。

多過ぎるくらいです。


仕舞っているのです。

あそこです。

そう、我々が言うところの”四次元”です。


品物ごとに分かれている様で、汚れたり虫に食われたりしない”優れもの”の場所なのです。


ただ、自分で何が何処にあるのか覚えておく必要があります。


たまに酔っぱらったナオミが、訳が分からなくなる様ですが、ご愛敬です。


そんな訳で、ナオミの持ち物の詳細は不明です。



では戻って、”ゆたかの持ち物”です。

男物の下着や背広の話では面白くも何ともないので、他の話です。

最初のものは、少しマニアックです。




* 自転車ロードレーサー

ゆたかが大学生の頃に使っていた自転車で、ロードバイクではなく、ロードレーサーです。


その1 プジョー PX10


フレームカラー : ホワイト + ラグ部分ブラック

フレーム : レイノルズ531 (マンガンモリブデン鋼)

ラグ : ナベックス

ヘッド小物 : ストロングライト

ドロップアウト(エンド) : サンプレックス

シートポスト : サンプレックス

サドル : イデアル 90

ステム : AVA

ハンドルバー : AVA

ブレーキキャリパー : マファック レーサー ブレーキゴム部分最新シマノ

ブレーキレバー : マファック アッパーラバーカバー

チェーンセット : ストロングライト

カセット : シクロ

ギアシフター : サンプレックス (ダウンチューブ)

フロントディレイラー : サンプレックス スライド式

リアディレイラー : サンプレックス クリテリウム

ハブ : ノルマンディー ラージフランジ

クイックレリーズ : サンプレックス

リム : アラヤ 27Ⅹ11/4

タイヤ : million共和 27Ⅹ11/4



その2 チネリ スーパーコルサ


フレームカラー : メタリックシルバー + ラグ部分メッキ

フレーム : コロンブス クロームモリブデン鋼

ラグ : チネリ

ヘッド小物 : カンパニョーロ

ドロップアウト(エンド) : カンパニョーロ

シートポスト : カンパニョーロ

サドル : チネリ 革張り

ステム : チネリ 鉄

ハンドルバー : チネリ ジロ・ディ・イタリア

ブレーキキャリパー : ユニバーサル 68サイドプル ブレーキゴム部分最新カンパ

ブレーキレバー : ユニバーサル ラバーカバー 最新のレプリカ

チェーンセット : カンパニョーロ レコード

カセット : レジナ

ギアシフター : カンパニョーロ (ダウンチューブ)

フロントディレイラー : カンパニョーロ レコード

リアディレイラー : カンパニョーロ 鉄レコード

ハブ : カンパニョーロ ラージフランジ

クイックレリーズ : カンパニョーロ

リム : アラヤ 27Ⅹ11/4

タイヤ : million共和 27Ⅹ11/4



その3 ビアンキ レパルトコルサ


フレームカラー : チェレステ・ブルー (ビアンキ・グリーン)

フレーム : コロンブス クロームモリブデン鋼

ラグ : ビアンキ

ヘッド小物 : カンパニョーロ

ドロップアウト(エンド) : カンパニョーロ

シートポスト : カンパニョーロ

サドル : ブルックス プロフェッショナル

ステム : アンブロッシオ

ハンドルバー : アンブロッシオ

ブレーキキャリパー : カンパニョーロ ブレーキゴム部分最新カンパ

ブレーキレバー : カンパニョーロ ラバーカバー 最新のレプリカ

チェーンセット : カンパニョーロ

カセット : レジナ

ギアシフター : カンパニョーロ (ダウンチューブ)

フロントディレイラー : カンパニョーロ スーパーレコード

リアディレイラー : カンパニョーロ スパーレコード

ハブ : カンパニョーロ スモールフランジ

クイックレリーズ : カンパニョーロ

リム : アラヤ 27Ⅹ11/4

タイヤ : million共和 27Ⅹ11/4



殆ど、ビンテージ物です。

ゆたかのお祖父さんが、大昔に乗っていたらしいのですが、この自転車でレースには出たことはなく、殆ど傷はなく綺麗です。

まあ、レースにも出ていたらしいのですが、こちらの”ロードレーサー”はお金を儲けた時に手に入れた様です。

軽く走るだけの”趣味の品物”です。

お祖父さんは、若い頃から商才があった様です。


ロードレースに出ていた"マシン”は、上野の老舗のロードレーサーで、トーエイがフレームを作った様ですが、傷だらけで、孫のゆたかには良いものを渡した様です。

ただ、元々のタイヤは”チューブラー”で、通学に使うというので、リムとタイヤを交換してあります。

また、ブレーキキャリパーは当時のものですが、ブレーキラバーは”容量不足”なので、最新のものに交換されています。


プロショップでメンテをしたらしいのですが、殆ど”骨董品”なので、「雨の日」用に”泥除けのついた”クロスバイク”も買ってあげたようです。

お祖父さんは世の中のジジイと一緒で、孫には「大甘」です。


まあ、その分、おかあさんはゆたかに厳しくではなく、いい加減の大雑把な扱いです。

その反動なのか、おかあさんはゆたかの嫁、ナオミには大甘です。




ゆたかが大学に入学すると、ゆたかに大甘のお祖父さんが、運転免許を取らせてくれました。

ゆたかの両親は、本人が言って来ないものは気にしないのです。

大学の入学に関しては口を出しましたが、他は大雑把と言うか、いい加減です。

特におかあさんはその傾向が強いのです。


運転免許は普通車はマニュアルで、それだけではなく、自動二輪も取得させ限定解除もさせられました。

お祖父さんが隠れて?乗っていた、国産のアメリカンにゆたかを乗せたかったようです。


ゆたかは運動も兼ねて自転車通学をしていて、結構気に入っていたので、あまり自動二輪には乗りませんでした。

ガソリン代もかかるし、大きいモーターサイクルなので、停めておくところを探すのが大変だったからです。


因みに、ゆたかが世話になっているゼミの教授は、おとうさんの親友ですが、お祖父さんのお友達の息子さんです。



就職してからは、お祖父さんから受け継いだ自転車ロードレーサーは、普段は地下室に飾ってあります。

お休みの日の天気の良い日に、散歩がてらに乗っています。


ナオミと結婚してからは、土曜日の早朝に、たまに二人でサイクリングをする様です。

特にナオミの身体に合わせるとサドルの高さが高く、ゆたかの乗っているロードレーサーよりも”格好良い”のです。


でも、近頃は自転車ロードレーサーが2台ではなく、3台になった様です。

詳細については、最終項でお話します。





色々調べてみても、ゆたかの「持ち物」は少ない様です。

特に着るものに、あまり拘りが無いのです。

まあ、筋肉を付け過ぎているので、モデルさんが着て格好良い様なものが似合わないのを、知っているからだと思います。


筋肉が多い人の通例で”暑がり”で”汗っかき”なので、Tシャツや短パンは多く持っていますが、高級品ではありません。

アウトレットに行くと、その手のものを物色する癖があります。


通勤も現場の時は”ラフ”な格好でも良く、本社勤務になってからも、背広ネクタイではなくジャケットなので、”お高いもの”を着ていません。

気にする人は徹底的に気にして頑張る様ですが、ゆたかは自分の着るものに無頓着なのです。



ナオミと結婚してからは、ナオミがお金も着るものも管理しているので、ゆたかは益々良く分かっていません。


でも、ナオミは”高給取り”なので、ゆたかの給料ではなく、ナオミのお金で背広やジャケットを買ってくれている様です。

ゆたかは身体が横に大きくオーダー物になって”お高い物”になるのですが、ナオミのお好みの生地とデザインにするので、ゆたかではなくナオミの満足の為の様です。



靴も、チロリアンが好みで数足持っていますが、踵や底を張り替えて何年も同じものを履いています。

チロリアンは丈夫なので、ナオミが磨いただけで綺麗になるので、修理はしますが、まだまだそのまま履く様です。

一応、色違いのローカット2足と、ハイカット2足があります。

他にも、冠婚葬祭用に黒いフォーマルの靴もある様です。

ナオミとパーティーに出掛ける時用なので、ナオミのお靴と一緒に仕舞われています。



そうそう、ゆたかが買った高いものがありました。

車です。

フォルクスワーゲンの”ゴルフGTI”です。

本当は、マニュアルシフトが欲しかった様ですが、新車の時はオートマの方が高いのですが、中古車になるとマニュアルの方が”物凄く高額”になって諦めた様です。

それに、おとうさんの車が何でもない”セダン”なので、少し早い車が欲しかったのです。


まあ、実際は”バカっぱや”の車です。

ポルシェのオーナーが「これで十分だ」と言ったとか言わなかったとか ・・・


就職して、現場勤務でひたすら頑張って仕事をしていたら、お金の使い道がありませんでした。

一応、親にはそれなりのお金を渡していましたが、会社の寮や一人暮らしと比べれば、大したことはありません。


それで、中古車ですが車を買ったのです。

ゆたかはCAD等のデジタル機器を使うのですが、本当はあまりデジタルは好きではありません。

最新の車を分割払い等で買っても良かったのですが、中古車の方がアナログ部分が多くて気に入ったのです。


特にゴルフはモデルチェンジをするのですが、日本車と違って”劇的な変化”はありません。

ゴルフに興味のない人には殆ど同じに見えるのです。


まあ、車に興味のない人には、車などは”色”以外は同じに見えているのでしょう。



実際は、殆どおかあさんに使われているのですが、ガソリンは満タンにしてくれているので文句は言いません。

車は”道具”なので、使わないと駄目になるからです。

でも、のんびり運転している感じではない様です。

おかあさんは”走り屋”です。


ゆたかが結婚してからは、おかあさんとナオミが使っています。

二人揃って”走り屋”です。




まあ、ゆたかの持ち物はこんなものです。


ああ、大事なものがありました。

「ナオミ」です。

”もの”と言ってはいけないのかもしれません。

でも、ナオミもゆたかの事を”自分のもの”と思っているので、同じです。


ナオミの仕様についても詳細を載せたいのですが、身長以外は「極秘事項」が多くて書けません。


取り敢えず、サービスに「オッパイ」だけを記載します。

サイズは「極秘」なので不明です。

形は、ナオミが”目標”としている、おかあさんのオッパイの形と大きさです。

ナオミが生まれてから、2年間はお世話になった乳房です。

当然、ゆたかもお世話になったし、大好きだったと思われます。

多分、ゆたかの理想のオッパイは、おかあさんの”それ”で、ナオミもそう思っているのです。


おかあさんのオッパイと、ナオミのものとの違いは、「張り」です。

おかあさんの方は、多少”経年劣化”なのかもしれません。

でも、若い子には負けていないと、自負しています。




そして最近、ゆたかにもう一つ”大事なもの”が増えました。


まだ子供は生まれていません。


なんと、ゆたかに妹が出来たのです。


おかあさんが妊娠したのではありません。

おかあさんの”避妊”は完璧な様です ・・・ 方法は分かりませんが ・・・


おかあさんが近頃連れ歩いている、若手の優秀な魔女の”きらら”です。

きららがゆたかの妹になったのです。



きららは、本当は幸せな高校生活を送っている筈だったのですが、悲しい事があったのです。



おかあさんがきららを連れてパトロールに出掛けた時でした。


きららには弟がいて、親子三人で車で出掛けていたのです。

土曜日だった所為か道路が混雑していて、渋滞で信号待ちをしていたのです。

そんな時、酔っ払い運転の大型ダンプカーが、ノンストップで渋滞の列に突っ込んできたのです。


きららの家族はシートベルトをしていたのですが、渋滞の最後尾で、大型ダンプカーの直撃をもろに受けたのです。

三人とも、”即死”だったそうです。


きららだけが、おかあさんからのアルバイトのお陰で助かったのです。



お葬式をしました。

喪主はきららで、おかあさんとおとうさんは、ず~っと一緒にいてあげました。

親戚もいるのですが、みんな北海道に住んでいました。


きららは涙を見せず、参列者にこう挨拶をしました。

「これからは、この家で一人で生きていきます。」


参列者は、仕事や学校関係者以外は、魔女や鬼女や魔法使いです。

親戚関係も魔女の関係者です。

親戚の誰かがきららを引き取ると言いましたが、きららは頑固です。

こう、言い切ったのです。

「一人でやっていきます。」



きららの母親は魔女です。

経済的に問題はありません。

でも、誰も、まだ高校生のきららを一人にしておけなかったのです。


東京に住んでいる魔女が、交代交代で確認することで、取り敢えずは終わりにしました。


おかあさんは家に帰ってきてから泣きました。

「きららを連れて帰ってくれば良かった。」

そう言って、一晩中泣きました。


おかあさんには常にきららの状況報告が届きました。

おかあさん以外の魔女からの報告です。


本当はおかあさんが毎日確認に行きたかったのです。

でも、きららに断られたのです。

「おかあさん! 私一人で大丈夫だから。」


きららは、ゆたかの母親の事を「おかあさん」と呼んでいます。

おかあさんはナオミも大好きですが、きららも大好きなのです。

そのきららにじっと目を見て言われたのです。

「大丈夫」と。



しかし、1週間もしないうちにこんな連絡が入りました。

「きららが学校から帰ってきていない。」


もう、おかあさんはパニックです。

会社にいるおとうさんやゆたかを呼び寄せました。

おかあさんのパニックを喰らったのか、ナオミも冷静ではありません。


おとうさんとおかあさんとナオミがすっ飛んで、出掛けて行きました。

ゆたかは家で”電話番”です。

スマホ全盛の時代ですが、こんな時に誰も家にいないのは問題があるからです。



特に連絡はありません。

ゆたかは暇なので、軽い夕食の用意をします。

食べる量が変化しても良い様に、”キムチ鍋”にしてみました。



”最強の魔法使い” と ”最強の魔女”の二人と、普通のおじさんの三人は夜になると帰ってきました。

午後3時頃から、午後9時頃までの6時間でした。

”最強”と言われる二人ですが、パニクッていると普通の人間と変わりません ・・・ それ以下かもしれません。

役立たずが三人だった様です。


帰ってきた誰も、食事をしたいとは言いません。

おとうさんが淹れた、苦いコーヒーを飲んでいます。

因みにナオミは”お水”です。



沈黙が続きます。


ゆたかが伸びをしてから立ち上がると、ジャンパーを羽織りました。


ナオミ。

「何処に行くの?」


ゆたか。

「きららのとこ!」


誰もゆたかに何も言いません。

ただ、ソファーに座っているだけです。



ゆたかはワンコのタロウとニャンコのクロを連れて出掛けました。


家の門を出ると、ゆたかは左手薬指の青い石の指輪に言いました。

「俺の妹はどっちにいる?」


指輪の青い石がある方向を照らしました。

映画でペンダントがラピュタの方向を示す様な感じです。


それを見たワンコのタロウとニャンコのクロの瞳が青く光りました。

タロウがゆっくりとゆたかの持ったリードを引っ張ります。

クロはいつもの様にゆたかの肩の上です。


傍から見れば、夜のお散歩です。



結構歩きました。

ゆたかの知らない道も通りました。


30分もすると、道のたもとでうずくまっている女の子がいました。


金曜日の夜なので、酔っぱらったおじさんや、イキったお兄さんが声を掛けますが、恐ろしい目をみて、みんなたじろいでいます。


タロウはゆっくり歩きます。

その代わり、クロがゆたかの肩から降りで、女の子の肩に乗りました。


女の子が立ち上がります。

結構、身長があります。

176cmのナオミ位です。

顔は何も考えていないかの様に”無表情”です。


ゆたかが言いました。

「うちに帰るぞ。」


きらら。

「もう、うちには帰りたくない。」

「ひ、一人が怖い ・・・ 」


ゆたか。

「俺の妹なんだから、言う事を聞け!」


きらら。

「え? ・・・ 」



ゆたかは持っていたタロウのリードをきららに持たせます。

きららは、リードを離そうとするのですが、手のひらにくっ付いたまま離れません。


そうしているうちに、タロウがゆっくり歩きだしました。

タロウに引っ張られる様に、きららも歩き始めます。


ニャンコのクロは、きららの肩に乗ったままです。



ゆたか。

「何故、泣かないの?」


きらら。

「涙は見せたくない。」


ゆたか。

「涙の効果って知ってる?」


きらら。

「目の潤滑?」


ゆたか。

「もう一つ。」


きらら。

「何かあるのかよ?」


ゆたか。

「悲しみを洗い流す。」


きらら。

「 ・・・・・・ 」


ゆたか。

「思いっきり泣けよ!」


きらら。

「嫌だ!」

そう言いながら、きららの目からは涙が止まらなくなりました。


ゆたかときららとワンコのタロウとニャンコのクロの二人と二匹は、来た道を戻っていきました。

きららは、何度も涙を拭いましたが、止まりませんでした。


もう少しで家に着く前に、ゆたかがナオミに連絡を入れます。


門の前におとうさんとおかあさんとナオミが立っています。

おかあさんの顔は”泣き笑い”です。


おかあさんはきららを抱き締めます。

「もう、離さないからね!」


きらら。

「うん。 お・か・あ・さ・ん。」



その後は、キムチ鍋で夕食です。

みんな食欲旺盛です。




後日、きららの家は売却され、きららの預金通帳にお金が入れられました。

ゆたかの家は部屋が沢山あるので、きららの部屋も出来ました。

きららの意志を最優先にしましたが、おとうさんとおかあさんの”養女”になる事が決まりました。


本当に、ゆたかに妹が出来たのです。


今まではゆたかはきららに「おじさん」と言われていましたが、「お兄さん」と言われる様になりました。

あの夜から、きららはゆたかを本当の兄の様に思っていたのです。



きららの部屋は男子禁制ですが、ワンコのタロウとニャンコのクロは”出入り自由”です。

夜は三人、いや、一人と二匹で寝ています。





お休みがあると、ゆたかとナオミときららとワンコのタロウとニャンコのクロが、おとうさんのキャンピングカーで出掛けます。

ゆたかのお祖父さんからもらった、自転車ロードレーサーを分解して積んでいきます。

早朝だけではなく、夜中に出掛けてお泊りもしています。

最新のキャンピングカーは、快適です。



車の少ない舗装路を、自転車ロードレーサーで三人と二匹が”疾走”します。


ナオミは妊娠しているのですが、空気抵抗を減らす為に”前傾姿勢”を取ります。

魔法がお腹の子供を守っているので、大丈夫な様です ・・・ ?


ワンコのタロウはゆたかがリードを持って、ニャンコのクロはゆたかの背中のバッグから顔を出しています。

タロウに引っ張られて早い筈なのですが、ナオミときららが滅茶苦茶に頑張るので、いつもゆたかは”ドンべ”です。


家からもまあまあ近く、オートキャンプも可能なので、富士五湖方面がお気に入りです。


三人と二匹でテーブルを出して食事をします。

仲良しの三人の笑い声が、湖に響きます。


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