110 ちょっと
ちょっと
ちょっと昔のお話。
ナオミが、大学生になった頃のお話です。
「109 夫婦 (ゆたかとナオミ)」の補足?です。
7年間も会わなかったゆたかとナオミの二人なので、その間に色々あったのです。
まあ、そんな感じのお話です。
ゆたかが大学生になった時、ゆたかの希望でナオミとゆたかは会わなくなりました。
ゆたかがナオミのレベルになろうとした所為です。
何故か、ナオミも了解してしまったのです。
その話を聞いた誰もが、「無理だ」と言ってくれなかったからなのです。
みんな、まさか、ゆたかが”二番目の魔女”の魔法のレベルまで、成長しようと思っているとは思わなかったのです。
みんな、ゆたかはナオミが魔女だと知っていると思っていたのです。
でも、ゆたかは知らなかったのです。
誰も教えてくれなかったからなのです。
生まれた時から、周りにいる女性は、魔女や鬼女や魔法使いばかりだったからなのです。
ゆたかは、女性というのは、みんな、男性より能力があると思っていました。
見た目は男の方が筋肉があるのですが、実際の力は、はるかに強いのです。
記憶力も良く、外国語の会話は流暢で、勉強も格段に出来るのです。
魔法の力を見せられた事もあった筈なのですが、周り中の女性がみんなそうだったので、不思議には思えなかったのです。
女性に比べて男性は頼りないものだと思っていました。
でも、自分が努力すれば、女性の持つ様な”力”を持てると信じていたのです。
それが”魔法”だとは、思っていませんでした。
魔法なんて、絵空事だと思っていたからです。
まあ、ゆたかは”普通の考え”の持ち主だったのですが、環境が特殊だったのです。
周りの女性が魔法を使える”人達”ばかりだったからです。
ゆたかは高校までは男子校。
何とか受かった大学は工学部。
女性との接点が希薄だったのです。
女性がみんな、魔女や鬼女や魔法使いの様ではないと知ったのは、ゆたかが就職してからなのです。
ゆたかはそんな感じで、頑張っていたのです。
自分にはナオミと言う”許嫁”がいるんだと、そう思って勉強を頑張っていたのです。
まさかと思った、偏差値の高い有名大学に合格してしまったのです。
一応”第一志望”だったのですが、10校近く受験したのに、偏差値の一番高い大学にしか受からなかったのです。
同じ学部であれば、どこの大学でも施設や教えていることは変わりません。
一番の違いは、学生の”質”なのです。
本当は”文科系”で、入学してから考えればいいのかと思っていたのです。
楽しい未来を考えていたのです。
でも、”工学系”で偏差値の高い有名大学に合格してしまったのです。
”優雅なキャンパスライフ”など、ゆたかには描けなかったのです。
ですから、ゆたかは考えを変えて、ここで一気にナオミに近づこうとしたのです。
何をもって”近づく”ことが出来るのかは分からなかったのですが、一生懸命頑張れば何かが見えてくると思ったのです。
でも、おとうさんの命令で、”建築学部”以外は受験させてもらえませんでした。
化学や生物は好きでしたが、物理や数学は好きではありませんでした。
英語は、フライフィッシングをやっていたので、何とかなったのですが、建築学部では物理や数学がメインなのです。
そんな訳で、ナオミのレベルに近づくより先に、偏差値の高い同級生と同レベルになる必要があったのです。
ナオミとデートでもしていたなら土曜日は忙しかったのでしょうが、そんな事をしないと宣言してしまっていたのです。
月曜日から土曜日まで、大学に通って勉強していたのです。
大学は自分で勉強するところなので、勉強する者にはいくらでも施設を提供してくれるのです。
そして、ゆたかはナオミを忘れる為もあって、ジムにも通っていたのです。
遊んでいるならお菓子を食べたりするのでしょうが、勉強していたので口にしていたのは ”プロティンドリンク” や ”プロティンバー” ばかりだったのです。
お陰で筋肉が付き、身体が”横”に大きくなりました。
始めは大学に電車で通っていたのですが、祖父が昔”自転車競技”をやっていて、競技用の自転車があったので、通学はそれを使っていたのです。
今どきの”カーボンフレーム”のロードバイクではなく、”クロームモリブデン”や”マンガンモリブデン”と言われる鉄パイプのロードレーサーでした。
大学は場所もあったので自転車を置くのに困りませんでしたし、ジムもお客さんの少ない時間帯だったので、受付で自転車を預かってくれたのです。
ゆたかはそう思っていませんでしたが、勉強と運動のみの”ストイック”な生活を送っていたのです。
”慣れ”と言うものは恐ろしいもので、半年もするとそんな生活が”苦”とは思わなくなったのです。
ただ、雨の日もあったので、そんな時用に”クロスバイク”を買ってしまいました。
まあ、一生懸命勉強している孫のゆたかに、祖父と祖母からのプレゼントではありますが ・・・
ゆたかは週のうち6日間は大学で勉強していたのです。
無駄に真面目にカリキュラムを選択したので、実験の授業も多く取ってしまい、週に二つもレポート提出をしなければいけなかったのです。
当然、アルバイトなどは出来ませんでした。
まあ、ゆたかは自分で決めた事なので仕方がありませんが、ナオミは面白くありません。
でも、ゆたかの提案を認めてしまっていたのです。
そして、ゆたかがナオミのレベルに近づくまで会わないと、魔法を自分達に掛けてしまったのです。
ナオミは後で「しまった!」と思ったらしいのですが、自分でも解除出来ない”強力な魔法”を掛けてしまったのです。
もう少し、もう少し、冷静になって考えればよかったのです。
会わない、なんて言わなければよかったのです。
「週に1回は会いましょう」と言えばよかったのです。
そうなのです。
後悔は、”字”の如く、”後から悔やむ”のです。
ゆたかは頑張っているのです。
まず、大学でそれなりになろうと思ったのです。
”特待生”になろうなどと、大それた考えはありません。
それに対して、ナオミは何をしてよいのか分かりません。
ナオミは”二番目に生まれた魔女”で優秀だったからです。
殆ど”特待生”なのです。
でも、魔女の親はお金持ちなので、特待生は辞退していたのです。
おとうさんではなく、おかあさんがお金持ちなのです。
勿論、おかあさんは魔女です。
魔女ですから、目立つことを嫌うという事も原因です。
魔女は、魔女の管理団体から”お小遣い”を貰っています。
特に、娘に限らず子供が就学している場合は、多めに補助金が出るのです。
塾の費用や、習い事の費用の補助も出るのです。
でも、人間の親の様に毎日の様に色々な習い事をやらせる事はありません。
水泳や野球などの様な”運動系”は別ですが、”勉強系”の習い事は「予習・復習」が必要だからです。
子供に、時間的余裕を与えてあげなければ、その子供は伸びないのです。
勿論、親が子供の勉強をみてあげられる能力は必要です。
まあ、魔女は勉強が出来るので、人間の親と一緒には出来ませんが ・・・
どういう訳か分かりませんが、魔女のお好みの習い事は”そろばん”です。
親だけではなく、子供も喜んでそろばんを習うのです。
仕方が無いので、ナオミはハルミや美智子から、ゆたかの情報を聞いて、安心するしかありませんでした。
ゆたかとナオミは2歳違いです。
ゆたかの誕生月は12月で、ナオミは1月、殆ど月のズレはありません。
ナオミが大学生になると、ゆたかは大学の3年生です。
ゆたかは”専門”の授業が多くなり、必死です。
本当は、もう少しカリキュラムを見直せばよいのですが、あれもこれもと沢山の授業を選択してしまったのです。
ゼミにも入って、教授からは”勉強好き”と思われていましたが、カリキュラムに対する考え方が甘い?だけだったのです。
でも、講義の内容を考えると、どれもこれも知っておかなければいけないものだと考えてしまったのです。
ゼミの先輩や、教授からもアドバイスを受けたのですが、ゆたかの理想が”オールマイティ”だったので、ゆたかの考えを崩せる人はいなかったのです。
ゆたかは大学にいる間、授業以外はゼミ室にいたのです。
通学に使っていた祖父のロードバイクを置かせてもらっていたのと、必死になって勉強しなければいけなかったからなのです。
同じゼミの人間からは、「ゼミの主」とあだ名されていました。
授業時間以外は、行けば必ずいたからです。
お陰で教授から机と棚を貸していただき、生協で低脂肪乳を買ってきては、プロテインドリンクを飲んでいたのです。
ゼミ室には冷蔵庫もありましたが、暫くするとゆたかの低脂肪乳でいっぱいになってしまいました。
夏場に缶ビールを飲みたかった教授は、仕方が無いので冷蔵庫をもう1台追加したくらいです。
ナオミはゆたかの家には行けるのですが、ゆたかに会えなかったのです。
無駄に強力な魔法を、自分とゆたかに掛けてしまったからです。
最初のうちは、”ナオミの魔法の所為”だけだったのですが、”ゆたかがセミ室で勉強する所為”に変わってきていたのです。
でも、ナオミにはそんな事は分かりません。
ゆたかがゼミ室に入り浸っている事は、ハルミに聞いても、美智子に聞いても、二人とも知らなかったからなのです。
とにかく、朝早くに自転車で出掛けて行くという事だけしか、分からなかったのです。
ナオミが、ゆたかのいない”ゆたかの部屋”に入ると、微かにゆたかの匂いがしたのです。
なおみは、懐かしさで胸がいっぱいになりましたが、自分の魔法が強過ぎた事には気付きませんでした。
ゆたかのベッドの上に横になって、深呼吸をして、リビングに戻っていきました。
リビングに戻ると、ハルミや美智子がおかあさんとコーヒーを飲んでいました。
棘だらけの性格だった美智子ですが、何故かこの家に遊びに来る事が好きで、このうちの娘の様に寛いでいました。
ハルミはいつも”Tシャツにジーンズ”でしたが、美智子はいつも”デニムのショートパンツに丈の短いピチピチのTシャツ”が多かったのです。
たまに、美智子は胸の谷間を強調するようなものを着ていました。
勿論、男に襲われそうになる事もありましたが、必ず”返り討ち”にして楽しんでいたのです。
今の美智子と”真逆”の性格だったのです。
美智子は次第に変わっていったのは、ゆたかを”兄”と思ってからでしたが、もしかするとつよしの妹の美智子の魂が乗り移ったのかもしれません。
18歳になると、魔女や鬼女は”人に気付かれないオーラ”を弱めることがあります。
男を誘う為です。
優秀な男を探し出す為なのです。
勿論、生涯の伴侶が決まってしまうと、オーラは元の強さに戻ります。
ナオミにはゆたかがいるのです。
”許嫁”と言っても良いのですが、正式ではありません。
魔女の管理団体に「届け出」をしなければいけないからです。
それに、ナオミが掛けた無駄に強い魔法のお陰で、2年以上会っていないのです。
お話もしていないのです。
そんな訳で、どんな訳か、ナオミの”人に気付かれないオーラ”が弱くなったのです。
丁度、ナオミが大学生になった時だったのです。
高校からそのまま大学に進級した人も多かったのですが、大学からその学園に入学してくる人もたくさんいたのです。
ナオミは高校からそのまま大学に進級した方ですが、学部はIT関係で理工系だったのです。
でも、大学のキャンパスは広かったので、文科系も同じ場所でした。
そんな中で、ナオミの”人に気付かれないオーラ”が弱くなったのです。
ナオミは美人でスタイルの良い大学の”新入生”なのです。
目立ってしまったのです。
当然、男からたくさん声を掛けられました。
クラブのお誘いもたくさん受けました。
でも、ナオミはクラブには所属しませんでした。
世界中の魔女から、「大学に入ったら、魔女の勉強をしに来る様に」と言われていたからです。
でも、お休みの全ての日に、海外に行く訳ではありません。
殆どは日本にいたのです。
ナオミが高校生までは、お酒などは飲まなかったのですが、大学生になって誘われてお酒を飲むようになってしまいました。
勿論、18歳ですから”いけない事”なのです。
最高学府と言われる”大学”での事なのです。
本来あってはいけない事なのですが、大学生になったり、18歳で就職すると、日本人は”お酒を飲んでも良い”と思っているのです。
でも、法律はそうなっていません。
お酒のパッケージにも、”20歳になってから”と印刷されています。
飲食店でも、未成年にはお酒を提供してはいけないのです。
でも、日本人には、読めない、理解出来ない数字があるのです。
どうした訳か、日本人はこの数字の区別がつかないのです。
”18” と ”20” が同じに見えてしまうのです。
区別がつかないのです。
日本人の国民性なのか、日本固有のウイルスに因るものなのかは分かりません。
国民全員がそうなので、医者も不思議に思わないのです。
そして、大学で法律を学んでいる連中ですら、数字の区別がつかないのです。
ナオミも魔女なのですが、一応日本人なので、”18” と ”20” が同じに見えてしまうのです。
そんな訳で、お酒を飲んでしまったのです。
そして、ナオミの生みの親は、妊娠中にお酒を飲んでしまったのです。
ですから、生まれた娘は「大酒飲み」なのです。
世の中、例外はあります。
ナオミの育ての親でもあるゆたかの母親も、妊娠中にお酒を飲んだのですが、ゆたかは”下戸”です。
もしかすると、女の子だけが「大酒飲み」になるだけで、男の子はならないのかもしれません。
ナオミはクラブ等には所属していませんでしたが、飲み会には所属?していたみたいです。
お酒が絡んだお誘いは、断れないのです。
お酒のみの”特性”です。
当然、美人でスタイルが良いので、たくさん男から誘われたりしていました。
でも、悉く、断っていたのです。
ゆたかという”お相手”がいたからです。
でも、大酒飲みのナオミでも、”規定値”があったのです。
それを超えると、危険な状態になるのです。
自分が分からなくなるのです。
普通に言うと、”酔っぱらった”と言うのです。
でも、安心していたのです。
魔女には”危機管理システム”があるのです。
しかし、問題があるのです。
ナオミはゆたかは許嫁ですが、正式に結婚したりしていないのです。
魔女の管理団体には”許嫁”だと正式に「届け出」を出していないのです。
それに、魔女は最初にヤッタ人と一緒になるのです。
勿論、最初にヤル人は厳選するのです。
何故なら、魔女が男と一緒になると、その男と一生添い遂げなければいけないのです。
ですから、徹底的に自分に合っている男を探し出すのです。
妥協はしないのです。
でも、でも、ナオミは酔っぱらっているのです。
その時に、デートに誘われてしまいました。
学園で一番と言われている、イケメンのお兄さんです。
ナオミは、大学の新入生ですが、系列の高校から来ていたので、知っている人も多かったのですが、学園のトップクラスの美人です。
お兄さんは大学一番のイケメンで、狙っているお姉さんも多かったのですが、ナオミの名前は有名だったのです。
超が付く男嫌いで、空手の達人と言われていました。
ナオミの知り合いに空手の達人が多いので目立たなかったのですが、ナオミも相当な空手の使い手なのです。
勿論、ナオミ本人が知らない間に”魔法”がサポートしているのです。
そんなナオミをデートに誘ったのですから、大学一番のイケメン狙いのお姉さん達も諦めたのです。
いや、諦めたのではありません。
お姉さん達は知っていたのです。
お姉さん達のほとんどは、同じ学園の高校から”進学”してきていたからです。
ちょっとでも”チャラい事”をすれば、ナオミは相手を叩きのめすのです。
どんな男でも、チャラい事をしてしまうのです。
そのチャラい事は、男の”スケベ”に起因しているのです。
お姉さん達はそれを知っていたのです。
魔女ではないので、今までもたくさんの男の子と付き合った事があったからなのです。
ですから、直ぐに自分達に順番が回って来ると思っていたのです。
そんな感じで、ナオミはイケメンのお兄さんとドライブデートすることになりました。
ナオミは、18歳になった途端に運転免許証を取得しました。
運動神経も良く、記憶力も優れているので学科の試験は満点です。
でも、今流行り?の”オートマ免許”ではありません。
ナオミの実の姉のヒロミの車は、マニュアル仕様なのです。
魔女は大概 ”走り屋”です。
ナオミの姉のヒロミも、かなりのものなのです。
魔女はお金持ちなので、ポルシェやフェラリでも購入できるのですが、目立つことを嫌います。
ですから、当然”国産車”なのです。
イケメンのお兄さんはお金持ちで、たくさん車を持っています。
ちょっと、間違いがありました。
たくさん車を持っているのは、イケメンのお兄さんではなく、父親の方です。
イケメンのお兄さんは勝手に使う事が出来るという事です。
でも、たくさん車があるので、殆どお兄さん専用の車もあるのです。
地方の農家の様に、一人1台なのです。
それ以上に車の台数があるのかもしれません。
でも、お金持ちですから、車のメーカーが違います。
殆ど、ドイツのベンツです。
お兄さんの車は燃費が悪いかもしれませんが、何も問題はありません。
お金持ちの父親から、家族カードを貰っているからです。
勿論、”ブラックカード”と言われているものです。
イケメンのお兄さんとナオミが車の話で飲み会で盛り上がって、ドライブデートする事になったのです。
イケメンのお兄さんにとっては”デート”なのですが、ナオミにとっては”ドライブ”なのです。
その二人が一緒に車に乗るので「ドライブ + デート」で”ドライブデート”になったのです。
ナオミはワクワクしていたのです。
ベンツのコンパーチブルに乗せてくれて、運転もさせてくれると、イケメンのお兄さんが言ってくれたからです。
イケメンのお兄さんは、自分とデートしてくれるので、ナオミがワクワクしているのだと思いました。
自意識が強いお兄さんなのです。
でも、イケメンのお兄さんは気付きませんでした。
普通の女の子は、こう聞くとこう答えたのです。
「どんな車に乗りたいの?」
「ベンツのGクラスが良いわ。」
女の子には、スポーツカーは人気がありません。
まず、乗り込み辛いのです。
ミニスカートだと”悲惨”です。
ピチピチのパンツだと、ストレッチ素材でないと足の大股開きが出来ません。
まして、フルオープンになる車なのです。
折角、決めた”髪型”が台無しになるからです。
「オープンカーで髪をなびかせて ・・・ 」
などと言うのは、大昔のバブルのお姉さん達の話です。
ナオミは、大排気量のマニュアル車を運転してみたいだけだったのです。
話を詳しく聞くと、どうやら、マニュアル車ではないようです。
でも、”大排気量”の様なのです。
魔女には”物欲”はありません。
でも、やってみたい事はあるのです。
レンタカーを借りても良かったのですが、ナオミが唯一所属している?”飲み会”で、イケメンのお兄さんと盛り上がってしまったのです。
大学には、可愛い女の子はたくさんいたのですが、お兄さんには、そんな女の子の目論見が、丸見えだったのです。
殆どの女の子は、お金持ちのイケメンをゲットしたいという気持ちが、丸見えだったのです。
でも、ナオミはそんな気持ちがありません。
イケメンのお兄さんではなく、大排気量の車に興味があったのです。
そして、お金持ちのイケメンのお兄さんがスポンサーの”飲み会”だったのです。
高級なお酒がたくさん出たのです。
「高級なお酒 = 美味しいお酒」
なのです。
大酒飲みのナオミは、たくさんお酒を飲んでしまったのです。
でも、魔女の特性で、”酒豪”なのです。
”酒豪”ですから、お酒に飲まれないのです。
でも、ひとつだけ問題がありました。
ナオミはまだ、”18歳”だったのです。
まあ、周りは日本人だけなので、「18と20」が区別できない人達ばかりなので、問題はなかったのです。
イケメンのお兄さんの方も、ナオミを気に入ってしまったのです。
イケメンでお金持ちなので、たくさんの女の子を知っています。
その中でも、ナオミは突出して、”いい女”なのです。
普通の女の子は、格好つけたお話が好きですが、ナオミはチョットではなくかなり違うのです。
お酒の話も、勉強の話も。
そして、何より、イケメンのお兄さん趣味の”車の話”が出来る女の子なのです。
普通の女の子の様に、イケメンをゲットする為に、話を合わせたりしないのです。
ナオミは、「嫌」ならはっきり「嫌」と言ってくれるのです。
イケメンのお兄さんは、「この女」と思ってしまったのです。
ハッキリ言えば、お兄さんの判断は正しいのです。
ナオミと結婚すれば、多分、このお兄さんは幸せになれるからです。
ナオミは普通の魔女ではなく、”二番目に生まれた魔女”だからです。
何百年に一度生まれるという、”最強の魔女”だからなのです。
でも、ナオミには”ゆたか”がいたのです。
でも、美味しいお酒をしこたま飲んで、楽しいお話で盛り上がってしまったのです。
この頃のナオミは、何故か「車」が好きだったのです。
免許を取ったばかりだったから、なのかもしれません。
実の姉、ヒロミの車は2000ccなのです。
同じ車種は、いま、2400ccになっています。
昔と違ってターボを小さいエンジンに付けた高燃費な車が多くあります。
燃費の良い車が時代の趨勢なのです。
そんな感じで、「電気自動車」に全てが変わっていくと思われたのですが、そうはいきません。
バッテリーの性能が良くないのです。
充電に時間が掛かるのです。
”一撃”で瞬時に充電出来ないと、使い勝手が悪過ぎるのです。
一撃で充電出きる ・・・ 雷から充電出来るくらいの技術が必要なのだと思います。
雷から充電出来れば、群馬県や栃木県は「日本トップの発電王国」になれる筈です。
そして、電気自動車の「燃料?」である電気を作り出すのに、石油等が使われておるからです。
インフラである電気自動車用の充電設備は、遅々として設置が進みません。
ヨーロッパの国々が、「電気自動車にシフト」と言い切ったのに、疑問しかわきません。
実際は「失敗した」と思っている様にしかみえません。
ナオミが”大排気量”の車に興味を持った頃は、電気自動車が盛んに販売される前でした。
でも、ターボとかの力ではなく大きい排気量で豪快に走る車を運転してみたかったのです。
結果的にイケメンのお兄さんとのドライブデートになっただけなのです。
ただ、イケメンのお兄さんの車は「AMG SL63」なのですが、「Ⅴ型8気筒、4000cc、ターボチャージャー付き」なのです。
お金持ちのお兄さんですから、並行輸入とかではなく正規輸入なのです。
昔の車の”銘”についている”数値”は、そのまま排気量だった記憶がありますが、今は違う様です。
イケメンのお兄さんは女性にモテるのですが、実際は真面目です。
お金持ちのボンボンなので、性格は良いのです。
でも、女の子にモテるので、女の子の扱いは上手です。
たくさんの女の子が群がりましたが、小さい頃から父親を見ていたので、お金目的の人間は分かるのです。
ナオミは、イケメンのお兄さんではなく、レンタカー代わりにお兄さんの車に乗ってみたかったのです。
些か不純な考えですが、お金持ちのお兄さんと”どうとかなろう”とは思っていないのです。
お兄さんはお兄さんで、自分の本能でナオミは「安全な女」だと分かったのです。
そんなナオミですから、お兄さんと安心してドライブデートをしようと思ったのです。
さて、デートの当日です。
イケメンのお兄さんは、ナオミの家に迎えに行くと言ったのですが、ナオミがイケメンのお兄さん家に伺うことになりました。
お兄さんの家には、何台も車があるのです。
飲み会で盛り上がった時に、お兄さんが思わず言ってしまったのですが、ナオミはしっかり覚えていたのです。
そして、他の車も見せてくれると約束してしまったのです。
普段は、ジーンズにTシャツか何かにジャンパーみたいなものを羽織っているナオミです。
流石に、初めて伺う家、それも大金持ちの家なので、気取らないパンツスーツ的なものを着ていきました。
スポーツカーは、乗り降りに「大股開き」が必要な場合が多いからです。
ナオミは手土産も用意しました。
お金持ちですから、そんなものはいらないのかもしれませんが、「タダで高級車に乗せてもらう」のです。
普通に買えるものでは、大金持ちなので意味がありません。
北海道で、牧場を営んでいる魔女がいます。
牛乳が余った時にチーズを作ってみたのです。
牧場の近くにお店も開こうかと思っているのですが、自分達が美味しいと思っても、自己満足の場合があるので、魔女仲間に配ったのです。
ナオミの家にも、色々な種類のチーズがシコタマ送られてきました。
他に配ろうと思っても、知り合いのところには、みんな配られていたのです。
まあ、体のいい「在庫処分」でもあったのです。
それに、メーカー名の無い手作りのチーズなのです。
ナオミは美味しいと思ったので、北海道の魔女に、感想を言ったのです。
「おばさま。 チーズ、物凄く美味しかったわ。 お店に出しても絶対売れるわ。」
そして、最初の時よりも、大量にチーズが送られてきたのです。
北海道のおばさまは魔女なのです。
”冷蔵便”の必要はないのです。
魔法で、電話が切れる前に、シコタマ送られてきたのです。
そんな訳で、ナオミはチーズと保冷剤をたくさん入れたバッグを背負って、お兄さんのおうちに来たのです。
正直、迎えに来てもらえば良かったと、多少後悔はしていました。
大きい門があります。
チャイムを鳴らすと、お兄さんの声が聞こえました。
「ナオミです。 今日は宜しくお願いいたします。」
門が自動で開きました。
中に入ると、おうちの玄関まで距離があります。
大邸宅です。
おうちに入ると、玄関も広いです。
思わず、靴のままでも大丈夫なのかと思ってしまいましたが、スリッパが用意されていて、靴を脱ぎます。
広いリビングに通されます。
お手伝いさんもいると聞いていたのですが、お兄さんのお母さまが紅茶を持ってきてくれました。
お兄さんが女性を家に招待したことはなかったのです。
どんな女の子なのか、お母さまは興味津々だったのです。
広いテーブルなので、ナオミは早速、お土産を並べました。
「知り合いの牧場で作っているチーズです。 市販されていませんが美味しいので、召し上がってください。」
お母さま、目の色が変わりました。
どうやら、チーズが大好きな様なのです。
お手伝いさんを呼んで、お皿を何枚も用意しました。
ナオミが持ってきたチーズは、量も多いのですが、種類も多いのです。
「ごめんなさいね。 美味しそうだからいただくわ。」
お母さま、お手伝いさんと一緒に、全ての種類を切り分け始めました。
イケメンのお兄さんが言いました。
「おかあさんはチーズを見ると、味見しないと気が済まないんだ。 放っておいて、車を見に行こう。」
と言うことで、ガレージに行きました。
たくさん車が並んでいます。
1台を除いて、みんなベンツです。
「一番大きいのは、おとうさんが通勤で使っているんだ。」
そう言って、今日乗る予定の「AMG SL63」のエンジンを掛けました。
ノーマル?なので排気音は静かです。
お金持ちのお坊ちゃまが、爆音を響かせる車に乗っている訳がありません。
本物の車好きで排気音が大きい車に乗るのなら、サーキットに行ってから乗るのです。
街中で爆音を響かせているのは、本当の”車好き”ではありません。
「じゃあ、走りに行こうか?」
お兄さんがそう言って、ドライブの開始です。
でも、その前にお兄さんのお母さまにご挨拶をしました。
お母さま、チーズの食べ比べの、真っ最中でした。
ナオミ。
「ドライブに行ってきます。」
お母さま。
「はい、気を付けてね。 いただいたチーズ、みんな美味しいわ。」
いつの間にか、赤ワインのボトルが置いてありました。
お母さま、大満足の様です。
お兄さんの運転で、箱根に向かいます。
快適です。
薄曇りで、オープンカーにとっては絶好の日和です。
途中で、フルオープンにします。
サイドのガラスを上げていれば、風を巻き込みません。
ナオミがガラスを下げると、風がナオミの髪を後ろになびかせます。
素敵です。
あまりに素敵なので、お兄さんは時々ナオミを見てしまいます。
事前に「自分でも運転したい」とナオミが言っていたので、箱根の景色の良い駐車スペースで、運転手交代です。
流石のナオミも最初は緊張していましたが、直ぐに慣れて快適にドライブをします。
オートマで、至れり尽くせりの車なのです。
本当は、マニュアル車の大排気量車が良かったのですが、それはそれです。
走り終わって、再びお兄さんが運転します。
お兄さんの運転で、イタリアンレストランに到着です。
イタリアンレストランで、昼食です。
イケメンのお兄さん、スマートにお支払いをしてくれます。
ちょっと、近くを散策します。
初めてのデートなので、手を繋いだりはしません。
手を繋がなくても、恋人同士にしか見えません。
お似合いです。
そんな訳で、どんな訳か分かりませんが、お兄さんのおうちに帰ります。
お兄さんが、ナオミのおうちに送っていくと言ったのですが、断ったのです。
ナオミは、もう一度お兄さんのお母さまに会ってみたかったのです。




