1 まず・・
もてない男と奥手の魔女の物語
時代設定は「いま」
場所は「東京」
男は「普通」
女は「魔女」
まず・・
代わり映えのしない、いつもの会社帰り。
金曜日なので、駅前のスーパーで土日の二日分の食料を買い込む。
マイバックに冷凍食品主体の食料品を入れ、駅近くの月極駐輪場から自宅に向かう。
6月で暮れるのは遅い筈なのに、結構日が暮れて暗い。
自転車に乗っていつもの道を暫く行くと、何故か明るい場所があった。
いつもの道で見慣れている筈なのに、そこだけ道幅が広く街灯の灯りにしては明る過ぎる。
この時間は人通りが殆どないのにと思ってよく見ると、パンツが出そうなミニワンピースの若い女が這いつくばって何かを探している。
関わり合いになると面倒臭いとは思ったが、道を塞ぐように捜し物をする女を避けきれないと感じて、サッサと捜し物を見つけてやって退散しようと自転車を止めた。
俺が一緒に探し始めても、特に反応しない女に不思議な感じはしたが、取り敢えず膝をついて周りを見てみる。
「まさかコンタクトレンズだったりしないよな」と思って探していると、右手奥に光るものがある。
何か宝石のペンダントの様だ。
チェーンを持って持ち上げてみる。
特に傷等は無い様で、青い宝石部分に文字の様な模様が刻まれている。
手のひらにペンダント全体をのせて女の方を振り向くと、ミニワンピのざっくり開いたVカットの胸元が目に入った。
結構胸が大きい。
エ!もしかして「ノーブラ」?
ドギマギしていると女と目が合った。
掠れた声で、「これですか」と手のひらに乗ったペンダントを見せる。
「え?」と、女が初めて俺の存在に気付いたのか声をあげた。
胸をガン見してしまったので、慌てて視線を下げた。
下げた視線の先に、膝を曲げたミニワンピースの奥が見えて、今度は横に目をそらす。
胸をガン見した後にワンピの奥を見たと気付いたのか、女の声は「はあ?」と語尾が上がった。
ヤバイ。今朝も設計部の先輩女子社員から同じ言い方をされ悪態をつかれた。
自分の姉ならこの言い方の後に「グーパンチ」が飛んでくる。
思わず、ペンダントをのせていた開いた手を握り締めた。
閉じた手の指の隙間から光が漏れたように感じたその時、女の身体が小さくビクっと動いた。
先程の怒った様な顔ではなく、優しい目で「ありがとう」と微笑んでいる女の顔は、驚くほど美人で可愛い。
女が俺の手からペンダントを受け取る。
すると、女の手からではなくペンダントが自分から女の胸元にぶらさがった。
不思議に思うよりも、冷凍食品をシコタマ買い込んだのを思い出した。
関わり合いにもなりたくないので、「じゃあ」と言って自転車に跨がると焦ってペダルをこいだ。
もてない男と奥手の魔女の物語
駄目な男は自分を対象にすると簡単に設定が出来た。
普通の女の子に気に入ってもらえる話にするとただの日記になってしまうので、相手を魔女にした。
魔女が出てくる作品を読むと、多分?本当は存在しないであろう魔女の設定は作者の好みでOKなので、主人公は自分と設定し相手の魔女は絶世の美人にしてみた。どうせ妄想だし・・・




