一日は二十四時間ある!
試験前の十日間は、授業一切なし。
勉強に集中してってことだろう。
ま、まあよかった。こんなやること沢山あるのに、九時間授業した後で、なんて、
それこそ寝る暇も無くなる。
ところが。
「な、なにこれ!」
「なんだよこれ!」
異口同音にみんなの口から阿鼻叫喚。試験対策期間突入第一日。ホームルームだけ済ませるってことで、それぞれの教室に集められた私達。
各教科の先生方から、分厚いプリントの束を渡された。
プリントの中身はと言うと、各教科ごとに提出しなきゃいけないレポートについて!
口から魂がひるひるひるひると抜けていくとはこのことだぁΣ(・ω・ノ)ノ!
て、てゆうかこれ、絶対試験勉強なんかできないしって言いたいくらいの量。冗談じゃない、頭に詰め込まなきゃいけないことが山ほどあるのに!
でも待って。
もしかしてこれ、テストの点数が低くても、提出物で救うとか、そうゆうこと?
これはもしかして一筋の希望?!
すると先生はサラッっと言った。
「えー、提出物が遅れた場合。いくらテストの点数がよくても欠点扱いになりますから注意して」
先生の言葉にみんなの顔がぱきぃぃぃぃんと凍り付いた……。
「一日は二十四時間あるわ」
寮の部屋でアナスタシアがムンッと腕組み。そして頭に鉢巻! これは東洋で、やる気を出すときに使うおまじないなのだそうだ。
「それってどういう意味」もう生きてる気力もないといいだけなマリニア。そんな彼女にアナスタシアは言った。
寝なきゃいいのよ!と(死ぬから)。
そんなのやだぁビェェェェェェェと泣くマリニア。落ち着いて、いくらなんでも冗談だからと私が言うと、
「冗談でこんなこと言わないわ」とアナスタシア。ちょっと落ちつこう。
とりあえず、レポートの内容。
歴史、今まで習った内容を自分なりにまとめる。
文学、上に同じ。但しこちらは文法についての問題集もやること。ちな、みんな内容が違う。
物理は前に言ったか……。あ、ところで同じパターンの子はいなかったそうだ。
先生の執念を感じますな……。
外国語は、なんでもいいから好きな小説を選び、それを外国語に訳して提出。
化学は問題集を解いて提出すること……これも物理や文学と同じ。みんな違う。
ほかは似たような感じ。
私はそれ見て思った。これって……。
「ねえマリニア」
ビエビエなくマリニアに私は言った。これ真面目にやったら、テスト行けるんじゃないのと。
だって内容見たら、一年間習ってきたことを使ってやってねって感じだし。
「言われてみたらそうだけど……」
アナスタシアも貰ったプリントをめくり、うーむと唸る。でも暗記でとれるところは取りたいじゃない? と。
「そーだよお、その分だけでも多分欠点にはならないよぉ」とマリニア。
それはどうだろう( ̄∇ ̄;)
多分、暗記だけでとれる部分は二十点くらいじゃないかしら。せいぜい。
ちなみに四十点取らないと欠点になっちゃうのだ。
「たぶん、じっくり考えて解く問題の点数が大きいんだよ」
私はもう一度、貰ったプリントに目を通した。「だからこんなレポートさせるんだよ」
それにどのみち、レポートやりながらもう一回ノートも見返す。その時に覚えてしまえばいい。
「ベアトは優等生だからサラッと言うけど」
またマリニアがワアアアンと泣きだした。私はそうじゃないから困ってんのぉおおおおおおーと。
「諦めるのはまだ早いわマリニア」
がしっ、とアナスタシアがマリニアの肩を掴んだ。そして言った。
「今日から戦争よ! うちてしやまん! よ」
びしい、とアナスタシア、はるか天空を指さすのであった!
それから……。
私たちはがっつり組んでレポートに追われた。
互いに苦手なところを教え合って。
とにかく時間がかかる。だって写しあいっこが出来ない。それにホームルームで先生は、似たような記述、見つけ次第不可にしますとのたもうた。まあ、似たような記述にしたくても出来ないんだけどね。
みんなヒーヒー。食事もそこそこに勉強する。間に合わないよぉと泣く声が図書室にこだまする。こうゆうことはもっと早く言ってくれよなと男子学生の声。ごもっとも。
早く終わらせて試験勉強にと言う子もいるが、大抵はそんな余裕はない。
で、私はというと、さっきも言ったけどレポートしながら暗記とゆう、出来てるかどうかわからないけど、やっていた。まあどのみち、完成させるのに何度も何度も教科書見なきゃいけないから、いやでも覚えてしまうんだけどね。
「頭がパンクする……」
マリニアが前のめりになって机に突っ伏しそうになるのを、アナスタシアが定規で阻止。
ぐさ、とマリニアの喉に定規が直撃。何すんのと言う彼女に、今度寝たらピンッピンの鉛筆お見舞いするよとアナスタシア。
みんな鬼だぁぁ……喚く気力もないのか、マリニア、のろのろと鉛筆を動かし始める。
気持ちは分かる。私も……このまま寝てしまったらどんなに楽か知れない。
ちなみに、完成したら順次提出はしていいんだけど、
内容が薄いと不可食らって戻ってくる!
何があかんのだぁと叫ぶクラスメートたち。特に歴史の先生はヘンコツだから苦戦する子が続出した。
で、その歴史の先生。不可三つ連続で、レポート内容を外国語に変えるからなと。
冗談顏だけにして!
そうして戦争みたいな十日間が過ぎた――。
「終わった……」
ぴー、ちちち、と鳥のさえずりが聞こえる。
私は寝不足の目をこすった。私の隣でアナスタシアが机に突っ伏してる。マリニアが椅子ごとひっくり返って床で寝てる。
机の上に、整然と、とまではいかないけど、三人分のレポートの束が。
ちな、私も不可を何度か食らったぁ……。
これでダメって言われたらどうしよう。
あ、でも、仮にこれでいいよって言われても、
本番のテストはまだ終わってないんだよね……(トオイメ)。