表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様は大変  作者: ニコ
7/11

御貴族様は大変

 貴族の誇りにかけて、留年なんかできない!

 だからそのためにはどんな手段も使う!


 いやその前に真面目に勉強したらって話なんだけど……。





 職員室の前に山積みになってる、綺麗にラッピングされた箱たち。包装紙を見ると有名なデパートのモノ。

 それぞれの教科の先生宛の名前が書いてある(汗)。


 先生ら、毎年この季節の恒例ですなぁと呑気に言いあってる。


 どう見てもいいカモだよなこれ(汗)。だって付け届けなんかでどうにかなるとは思えないもの。


 で、ところで私はどこに行くのかって?

 職員室の前にある電話。

 母様のことが心配で、一応様子を確かめようと思って。

 手紙にしようかと思ったんだけど、手紙だと絶対にほんとのことは書いてくれそうになかったから。

 

 声の調子だけでも様子は分かるし。


 ところで、金持ち学校なんだから電話くらいって思うでしょ?

 寮の部屋にないのかって。

 それがないんだなあ( ̄∇ ̄;)。

 理由を聞いたら、長電話して勉学がおろそかになるから、なんだって。


 だからいつも電話の前は長蛇の列。特に今は待たされるみたい。


「ママぁぁぁ、このままだと私、留年するかも……」


 どの子も似たり寄ったりなんだけど、電話で話されてる内容はこんな感じ。

 電話口で親御さんから慰められて、うん、うん、がんばると言う子。もうやだと言う子。帰りたいよと泣く子様々。

 ちなみに、留年する子はいないんだって。

 えー、でもこんな状況でって思うでしょ。私も思ったよ。

 つまり、「死ぬ気でやればなんとかなる!」ってことなんだろうか。

 冒頭でも言ったけど、貴族のメンツにかけても絶対進級するってことで。

 留年なんてことになったらそれこそ社交界でも噂になるだろうし。


 まあうちは……こうゆう状態だし。貴族って名前だけだし。母様も父様もそんなに一生懸命でもないと思うし。


 そんなこと考えてたら、やっと私の番が回ってきた。やれやれ。

 電話を掛けると、しばらくしてうちのお手伝いさんのバラクさんがでた。母様は病院から帰って来たばかりなんだそう。え? じゃあいいよって言ったら、母様がすぐに出た。

「どうしたのベアト。何か用?」

 何か用じゃないわよ。病院ってどういうこと?

「ああ、大したことないのよ。定期健診なの」

 そっか、よかった。

 電話は父様に代わった。

「元気でやってるか。ベアトリーチェ」

「うん」

 友達も出来たし、勉強も面白いし、楽しいよ。

「そうか。それはよかった。なあベアトリーチェ、良かったら春休みに友達と一緒に帰ってこないか?」

「えー、でも母様に負担が……」

「お母さんがそうしてくれって言ってるんだ」

 そうなんだ……。って。

 私はここで少し不安になった。

「ねえ、お父様、母様の具合、ほんとに大したことないんだよね?」

 信じていいんだよねといいかけたとき、電話の向こうが母に代わった。

「ところでベアト。テストは大丈夫なの?」

 大丈夫かと聞かれたらちょっと心もとないけど、普段からちゃんと勉強してるからと伝えたら、

「そう。よかった。さすがは私の娘ね」

「アリガト、でもまあ、万が一留年しても、うちはそんな気にする体面なんかないから……」

 と、冗談めかした言った私。私は母の、そうよねと言う気楽な返事を期待していた。

 ところが!


「万が一にも留年なんかしたらうちの敷居は跨がせませんからね! ベアトリーチェ!」

「あの、母様」

「いいわね?!」


 すごい迫力。母様、元気だ……。







「テストまであと十日」

 アナスタシアは寮の部屋で腕組みした。横でマリニアがしおれてる。

「どうしようベアト……私死にたい……」

「そんな、簡単にそんなこと言うもんじゃないよ」

「だあってぇ」

 わああんと泣くマリニア。泣きたい気持ちは分かるけど。

「落ち着いてよマリニア。教科によってはレポートでいいってのもあるじゃない」

 そうなのだ。例えば物理は教科書の一番後ろに乗ってる袋とじの問題を解いてレポートしてくれたらいいって。

 マリニアに言ったら、へ? そうなの?って喜んだ。

「やったあ、これで一つ解決したわね! と言うことでベアトお願い!」

 うんうん、と頷き、え? と思う私。

 ところが……。

「ちょっと待ってマリニア。袋とじんとこ開けてみて」

 アナスタシアが険しい顔で自分の分の教科書のを見てる。何々?

 私も開けてみた。別に……ふつーの問題が並んでるだけだけど……。

 すると私のを見ていたマリニアが、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっっ、と叫んだ。

 どうしたのと聞いたら、

「問題が違う……」だって!

 物理の先生って、まん丸い眼鏡かけててすごく優しそうなんだけど、


 やるな……貴様……。


「話が旨すぎると思ったわ」

 アナスタシアが少し冷や汗かいてる。もしかして物理苦手? と聞いたら力強く頷いた。

 

 え? じゃあ二人とも……。

 二人の期待を込めた目が私に。

 そんな目で見られても困るよぉ! だって他の勉強もしなきゃならないのに。


「お願いベアト! やってくれたら今後一年間の学食、全部奢るから!」とアナスタシア。

「私もぉ!」とマリニア。


 そんなの無理だよぉ!


 とパニックになりかけた私達。でもよくよく考えたら、まったく別の問題を全生徒ごとに出せるわけもなく。

 同じパターンの子探して、協力すればいいと気づいた。それ言うと、

「ベアト頭いいー」と二人から言われた。そ、そう?


 じゃあ他の子に聞いてみよ!って二人意気揚々と部屋から飛び出していった。ん? でもちょっと待って。

 なんか、それ、ソレジャナイよね。


 まあ、いいか。うん。なんか、納得いかないけど。







 とまあ、物理はそれで問題解決として(え?)。

「あとは何が厄介なのかな」とクラスの子と一緒に話し合う私達。

「ねえねえ、先生たちが話してるの聞いたんだけど」とクラスメートの一人が声を潜める。

 え? 何?!

「生物学の試験のことなんだけどさ」

 みんなが目を皿にして、耳ダンボにして聞いてる。

「タマネギの細胞を採取して、薬品で染めて実験して、それレポートに書いて提出するんだって」

「まさかその場で?」

「そうらしいよ」

 

 タマネギ……ってか何でタマネギ?


「切り方が下手くそだと目から涙が出るよねそれ」

 と誰かが言うと、

「まさかそれ見て面白がってるとか言わないよね?」と他の子が。


 いまから練習しとく? とみんなわいわい言ってる。特に男の子。

 家庭科俺らやってないじゃんって。


 因みにペーパーテストもしっかりある。生物の先生、鬼だテメエ。


「でも植物の細胞採取、授業でやったジャン。あれでいいんじゃない?」

 わざわざタマネギ一個丸ごと渡してってことはないよと誰かが言う。

 だよね。私もそう思う。


 とまあこんな感じでわいわい話し合う私達。結論として、文系より理系の方が厄介なのだと落ち着いた。

 

「文系も外国語の壁があるじゃん」マリニアがブチブチ言うのへ、他の子が、あの先生、常識あるから、多分小テストから出るんじゃない? と。

 小テストかぁ。だったら話はそんなに難しくないよね。と私か言うと、難しいわよとマリニアが吠えた。


 数学はアナスタシアが得意。なのでコツを教えてもらうことに。


 歴史と文学は暗記がほとんどだから何とかなりそう。うん、何とかなるんじゃない?




 なんて思ってた私達。思わぬ伏兵がいることにも気づかずに……。

 


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ