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泡沫

作者: 武田道子

泡沫(うたかた) 



むかし夏の暑い日に一杯のソーダ水をはさんで

私たちは無言で

いくつもいくつも次から次へと浮かび上がる泡を見ていた

私たちは鳥の番のように仲むつまじく

ひとつのソーダ水に二本のストローを入れて

泡をすった


けれども二人は知っていた

からだのなかのどこにも

その泡を捉えておくことはできないと

泡は浮き上がっては氷の塊にぶつかって消えた

私たちが吸い上げるよりもっと速く


私たちに吸い上げられた泡は

線香花火のように

ちかちかと体のあちこちで跳ねた

束の間の光を放って

だが力が失せていくのを感じながら


コップの中でコトリと氷が崩れた

最後の泡が消えた

コップの外側にたまった水滴が

涙のようにゆっくりと流れ

テーブルに水溜りが広がっていった


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― 新着の感想 ―
[良い点] こちらも、リズム、流れ、言葉のバランス、文節の長さ、すーっと、入ります。日常、生きてきた日々、これからの思い、ほんとに何気ないところに記された、泡のこと、と、気持ちのこと。 [気になる点]…
[一言] ソーダ水の描写がとても綺麗だと思いました。 鳥の番、線香花火と喩えもオシャレで好きです。 仲良く飲んでいたふたりの関係性がその後どうなっていったのかも気になりました。泡沫のように一時的なもの…
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