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18.エピローグ 〜少女使節団との邂逅〜

「ほら、この間の分だ」

「ああ……」


 あれから数年後。

 本智は酒場で、又右衛門から鬼狩りの報酬を受け取っていた。


 善住坊の死後、マカオの甲賀衆は、下忍頭の彼がまとめる事になった。

 善住坊亡き後、もはや彼らがこの地に留まる理由も無かったが、本智は頑として帰国を拒んだ。

 それは、人知れずマカオに葬られた善住坊の菩提を弔う為でもあったが、もう一つ別の理由があった。


「そう言やぁ、相変わらず酒呑探しにも精を出してるのか?」

「……最近は、日本から逃げてくる仲間も増えてきてな。今や、二十人を超える大所帯さ。こいつらを食わせるには、鬼狩りをこなさなきゃならない。奴の方は後回しになっちまってるのが、本音のところだ……」


 この言葉の通り、本智はその後も酒呑童子を追い、マカオやその周辺国からも情報を収集していた。

 本智は今も善住坊の仇を取ることを忘れていなかったが、その行方はようとして知れなかった。


「……あのな、実はその酒呑童子関連で、仕事が来てるんだ」

「何っ!? 奴はどこにいるんだ!?」

「まあ聞けよ……酒呑童子はな、今は遠く西の果ての、羅馬ローマって所にいるんだとさ」

「羅馬……天主教の総本山ではないかっ!? 奴め……そんな場所に逃げていたのかっ!」

「それでな、その羅馬からの依頼で、日本のキリシタン剣士四人が酒呑退治に行くんだと。しかもこの剣士さま……全員が十三、四歳の女と来たもんだ」

「お、女だとっ!? しかも、そんなに若いのか!?」

「まあ話じゃ、腕の方は相当立つようだが……で、ここからが本題だ。この剣士さま御一行の話は鬼どもにもバレていて、日本でも一度襲われたらしい。天才よろしく、ちゃんと撃退したらしいがな」

「女の腕で鬼どもを……信じられん……」

「それでだ。この一行は長崎から出港し、もうすぐこのマカオに到着する予定なんだが……どうもな、こっちにいる鬼どもにも、酒呑童子から抹殺命令が出てるらしい。それを知ったイエズス会から、彼女たちを護衛するよう依頼が来てるって訳だ」

「ええいっ、そんな小娘どもの護衛などやってられるか! 我ら一党、総出で羅馬に乗り込んで、善住坊の仇を取ってくれる!」

「それが、そう簡単な話でもないんだ。酒呑童子の奴、向こうの……なんと言ってたか……そうそう、悪魔デーモンと交配したんだと。その所為で、もう日本刀だけでは倒せなくなっちまったらしい」

「まさか……ありえんっ! 無敵の存在にでもなったというのかっ!?」

「そこでこの御一行に、白羽の矢が当たったのよ。このガキどもはまだ小さい分、心の底から天主教にハマってる。デーモンってのはキリシタンじゃなきゃ倒せないし、鬼は日本刀でなきゃ殺せない……な? 何でこいつらが選ばれたか分かるだろ?」

「くうっ……我らでは、役に立たんということか……」


 本智が悔しさの余り、酒卓を叩いた。


「おいおい……主人を討たれたお前の気持ちも分からんでもないがなぁ。まあ、このガキどもを守ることも、どっかで酒呑退治に繋がるんだ。ぐっと堪えて、受けてくれや」

「……不本意だが、仕方あるまい。その一行はいつマカオに到着するんだ?」

「明日だ。うまの刻(正午)頃に、港に行ってくれ。日本人小娘四人だ、いやでも目立つだろうぜ」




 ◆


 翌日、本智は部下の下忍を連れ、総勢六名で港に来ていた。

 全員が侍姿であり、編笠を深くかぶっている。


「頭、あいつらですかな?」


 部下の一人が本智の耳元で囁いた。

 見ると、汗まみれの船員や商人たちに紛れて、赤や濃紺のビロード服を身に纏った四人組の少女の姿があった。

 港に出店する商店の間を歩きながら、物珍しそうに物色しているようだった。


「あれに間違いないと思うが……物見遊山にでも来ているような雰囲気だな」

「では、声をかけて参ります」

「……待て」


 本智が部下の腕を掴まえ、その動きを止めた。


「うわー、見てくださいよアレ。めっちゃ美味しそうじゃないですかっ!?」


 串焼き屋の前で、緑色の法衣を身に付けたメガネの娘がそう叫ぶと、それに応えてなのか、赤い法衣の少女が恍惚の表情を浮かべた。

 その姿を見て、濃紺の服を着た長身の少女が二人を叱る。


「もう少し様子が見たい……あの小娘ども、あれで本当に剣の使い手なのか? 刀こそ持ってはいるが、どう見ても市に遊びに来た娘衆という風にしか見えんぞ?」

「か、頭! まずいです、気づかれたかも知れません……!」

「何っ!?」


 編笠の編み目越しに見ると、白銀の法衣を着た少女がこちらをジッと見つめていた。

 さらに彼女が小声で仲間に声をかけると、少女たちは一斉に刀に手をやり、臨戦体制を取った。


「ど、どうしましょう、頭!?」

狼狽うろたえるなっ! ……丁度いい。お手並み拝見といくか……!」


 本智のその言葉を合図に、甲賀衆も抜刀の構えを取る。


 しばらくの間、両者に静寂の時が流れた。


(流石に隙がないな。やや深く腰をかがめているが……こいつら、跳躍の忍術を知っているのか? あの足捌きからして、おそらく南蛮流……長崎の忍びから、術を習ったか……)





 ビュウウウゥゥゥーーーーーー


 甲賀衆と少女たちの間を、強い風が吹き抜ける。

 不意に、砂の中に埋まっていたゴザが舞い上がると、両者の視界を遮った。


(……来る! 善住坊おかしらの仇を討てる腕前なのか、とくと見せてもらうぞっ!)


 こうして、天正遣欧少女使節団と甲賀衆との一戦が始まった……



 (完)

今回で本作は終了となります。

ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました。


今回のエピローグ部分は、前作「ロザリオソード」の第12話『澳門』に繋がりますので、そちらも是非お読み頂けたら嬉しいです(甲賀衆と少女使節団との戦いの続きがお読み頂けます)。


この善住坊の話は、前作の外伝的な位置付けで執筆しました。

なので、ロザリオのロの字も出てこないのですが、次は正統な続き物を書きたいと思っています。


また現在、全然毛色が違う現実恋愛の短編を執筆しており、近日中に投稿予定ですので、そちらもよろしければお読み下さい。


本作をもし気に入って頂けましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。

面白ければ星5つ、つまらなかったら星1つ、正直なご感想でもちろん大丈夫です。


感想なども頂けたら最高に励みになります!

皆さま、今後ともよろしくお願いします。

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