オーパーツ職人
out-of-place artifacts
略して“OOPARTS”
要するに、発見された場所と時代にそぐわない「場違いな工芸品」のことである。
俺は、そのオーパーツを作っている。
なぜか?
それは、オーパーツとして発表されれば、世界中に俺の作品を知らしめることができるからだ。
有名な、水晶髑髏。あんなのでも世界中に知れ渡ったのだ。
一方で、俺のこれ以上ないっていう超絶技巧を凝らした作品たちは、見向きもされない。目に付く限りの工芸コンクールにも応募しているが、どいつもこいつも見る目がねえ。きっと、コネや賄賂に左右されているに違いない。腐ってやがる。
だから俺は考えた。俺の作品を、世界各地の相応しい遺跡に忍び込ませる。そうすれば、考古学者の連中が掘りだして、オーパーツとして公表されるだろう。
エジプトに、ウルに、モヘンジョ・ダロに、三星堆に……。
作品を忍び込ませるための協力者は、案外簡単に見つかった。世界中、どこにでも、面白がって悪戯に命を賭けるような馬鹿はいるらしい。もちろん、これは誉め言葉だ。連中は、真剣に悪戯をする。
「考えてもみろよ。偉そうな学者先生が、あれこれ勿体ぶって解説するんだぜ。実は現代の無名の工芸職人の作品だとも知らずに。想像するだけでも笑えてくるじゃねえか。」
たったそれだけだというのに、緻密な計画を立て、俺をサポートしてくれる。時には、作品に対して鋭い批評をしたり、アイデアまで出してくれることさえある。
ひょっとしたら、とっくに、俺は、俺の作品の価値を認めてくれる相手を見つけてしまったのかもしれないが。
しかし、もはや止めることはできない。
きっと世界中に知れ渡る。こんな凄いものを作った人間がいるのだと。
俺の作品は、長年にわたって謎と浪漫を纏って、語られることになるのだ。
有名な博物館にも収蔵されるだろう。
大英博物館に、ベルリン美術館に、スミソニアン博物館に……。
俺の名前は知られることはないだろうが。
俺は俺の作品が残ればいい。