ロレンシーネ家の逆ざまぁ阻止計画
初投稿です。よろしくお願いします。
私、ベガ・ロレンシーネは悪役公爵令嬢だ。
6歳の誕生日にテンションが上がりすぎ、家の噴水に落っこちて気がついたという何ともベタな思い出し方をしたのだ。
ちなみに、1週間高熱でうんうん唸り、回復してから心配した涙目のお母様に淑女の心得を滔々と聞かされたのは良い思い出。
家族はありがたい事に溺愛系。切れ味抜群美青年のお父様に愛人もいなければ、儚い系美人のお母様も儚いのは雰囲気だけで、至って健康。跡取りのお母様似の弟も過度なシスコンではなく、姉弟仲はすこぶる良好。かくいう私もお父様似の妖艶系美女になりそうな美少女。
これ以上ない、幸せな王道の転生だ。
もちろん、王太子の婚約者からの逆ざまぁまでもが込みで。
冤罪が晴れて、留学中の隣国の第2王子と結ばれるのが込みで。
でも、私は思うのだ。
王妃教育辛そう。隣国の状況もわからない。
何より今の家族、家の使用人達も大好きだ。
だから嫁ぐなら国内でお願いしたい。
そもそもざまぁはされたくないが、逆ざまぁもされたくない。それ、なんて見世物?って思うのだ。
そして迎えた8歳の運命のお茶会、改め王太子になる予定の2歳歳上の第1王子の集団お見合い。ここで私は見初められる予定だ。ベタだ、ベタすぎる....しかしそこがいい。
しかし、見初められたくは無い。かといって欠席も出来ない。
絶体絶命??
No!!ピンチはチャンスだ!!
王子に合わせたベビーラッシュ、私以外にも家格が合う家で、ご令嬢はそれなりにいる........第一候補は私だけれども。
準備は少しかかるけど、お茶会対策は出来ないことはない。
まずは両親への説得から取り掛かる。
ここは素直に婚約者になりたくないと口にする。なってしまった場合の家族時間減少を切々と訴える、お父様の目を多めに見るのがポイントだ。
情に訴えること小一時間、お父様が自供し始めた。
なんでも娘が可愛くて優秀であることを散々、毎日のように自慢したらしい。陛下に。
親バカなお父様も素敵。なんて思ってた時期もありました。
結果、王妃が甘やかし精神的に少し幼い第一王子の婚約者にどうかと打診があったと。そんな理由で選ばれても苦労が目に見えている上に、他にも家格で問題ない令嬢も多いしと考えたお父様はのらりくらりとかわしていたらしい。焦れた陛下の意向でお茶会が決定した様だ。
第一王子、顔はいいからね。身分と相乗効果で私が気に入ると思ったらしい。逆も然り、美少女と評判の私を第一王子が気に入ると。
2人が乗り気なら押し切れると.....大味!計画が大味!!
「執務はそれなりに優秀にこなされるのになー」とお父様は言っているけれど。
あれかしら、仕事で机は整理出来るのに、家は汚部屋的なあれかしら。
お母様は少し空気の読めない王妃様が苦手らしい。「お優しい人なのだけれど...」って王妃が空気読まずに誰が読むの?周りの優秀な人達ですね。
大丈夫か、この国と思わない事もないけれど、周りが優秀な人材が多いなら大丈夫だ。......うん、多分大丈夫だ。
そんなこんなで、ロレンシーネ家は「家の品位をあまり落とさず、王子に毛嫌い程ではないが、苦手意識を持ってもらう」という、なんともふんわりと不敬紙一重の方向性が決まった。
手始めに参加予定のご令嬢の中で、いかにも貴族らしい気位の高いご令嬢を探す。
同じデザイナーで微妙にデザインが被らないけれど同じ趣味の様な衣装をオーダーする。
王都で1番人気の香水を振りかける。ちなみに瓶は壊れていたみたいで、かなりの量がかかってしまった、壊れていたみたいで。
しかも私は鼻風邪で鼻が効かない、明日には、なんならお茶会終わったら治る予定の鼻風邪だけれども。
黄色い声の練習も怠ってはならない。腹から出さず、鼻から抜ける様な声で、しかも耳はつんざくことなく、下品になり過ぎない。絶妙なバランスの黄色い声を毎日、欠かさず行う。
情報は社交界の華のお母様からの提供です。
資金は甲斐性の塊のお父様からの提供です。
練習は優秀な跡取りの弟と一緒です。
発声はよい目覚ましになったとお父様は褒められ、声に怯まず笑顔を保てるようになった弟に褒められた。お母様はにこにこしている....ちょっと怖い。
家族ぐるみの努力の結果。あら不思議、容姿に合わないあざとさを優先させた衣装を着た香水臭いませた令嬢の完成した。ちなみにツインテールにした髪はドリル巻きで仕上げは上々。
達成感が半端ない。
お父様がこっちを見てサムズアップしている。
お母様がこっちを見てサムズアップしている。
弟が香水の匂いでむせている。
.........理解ある家族バンザイ。
さて、完璧な戦闘服を身につけたからと言って終わりではない。
間違ってもお菓子食べに来たと思えばいいや!とか、目立たず騒がず行こう!などと思っては行けない。家の料理人の食べ慣れたお菓子最高!
まずは殿下の登場は発声練習を生かし、黄色い悲鳴をあげる。周りのご令嬢に声量を合わせるのがポイントだ。品をある程度損なわず、あくまでも周りに合わせる。ここ重要。
続いて手をゆるめることなく、殿下の隣をキープ。家の歴史、家格について大いに自慢する。殿下の話を聞いている様で聞いてない、失礼にならないほどの会話の噛み合わなさを常に維持し、更に周りの令嬢に牽制するのを忘れてはならない。ただ殿下に触れるのはご法度だ。
極めつけは堪らず席を立った殿下に追いすがる。「殿下と2人で是非お話したいですわ~」と黄色とピンクを併せた少し高い声を出せば完璧である。ちなみに扇子でさり気なく香水の匂いを殿下にピンポイント噴射。
堪らず顔をしかめて、場を去ろうとする殿下に「オマチニナッテー」と追いすがる。
扇子に隠れた顔は真顔。もうものすごい真顔になってしまった私もちょっと練習が足りなかったかもしれない。
あっ、1人のご令嬢がこっちをみてる。令嬢秘技、目で語るが発動されてる「いい仕事しますわね!」と言っている。あとでお友達になりたい。
そして、第一王子の逃走でお茶会は終了した。少し幼い性格の看板に偽りなし。
後に
「なんか...ベガ嬢だけは嫌だって、息子が....なんかすまぬな....」
とお父様は陛下に言われたらしい。
「うちの可愛いベガを振るなんて、やはり相応しくない!」
と憤慨するお父様に、親の愛情は時に理不尽だなって思いながらも嬉しくなってしまった。
かくして、ロレンシーネ家の、ベガ・ロレンシーネの悪役令嬢のざまぁからの逆ざまぁ阻止計画は幕を閉じた。
第一王子は私が衣装を真似した令嬢と婚約したらしい。私の代わりと思うと、苦労を押し付けたようで申し訳なさもあるけれど隣国の第二王子との幸せな結婚生活が待っているから耐えて欲しいと思う。
私自身は学園生活の被らない少し年上の優しい婚約者を希望している。優しい家族の為にも幸せになって行きたいと思う今日この頃。
お読みいただきありがとうございました。