66話 デビルメイデンCランクに降格する
バレッド達はサンダードラゴン討伐の為、ライトニングマウンテンに向かった。
豪華馬車で揺られている。
その中でバレッド達は余裕ぶって浮かれていた。
普通ならCランク降格の可能性もあるし、更に言えば超高難易度クエスト故死ぬかもしれない恐怖が付きまとう筈なんだが彼らにはそんな危機感は備わっていなかった。
「これでやっとSランク昇格だな!!」
「今までは悪夢を見ていたのよ!!」
「全くだ。一時はどうなるかと思ったぜ!!」
バレッド達は豪華馬車の中でもうクエストクリアの後を思い浮かべている。
全く懲りない連中である。
「そろそろご到着致します。ここからは大変危険ですのでお気を付けください!!」
「ああっ!! 誰に言ってんだ爺さん!! 俺達はデビルメイデンだぞ!!」
「すみません。お節介が過ぎましたね!!」
「ちっ!!」
バレッド達は御者から魔笛を受け取る。
そして馬車は一度去ってゆく。
「ここがライトニングマウンテンか。さっさと山頂目指そうぜ!!」
「そうだね。僕たちは早くSランクに昇格しなければいけない!!」
「じゃあお前ら行くぞ!!」
そうバレッドが鼓舞してライトニングマウンテンに登る。
ライトニングマウンテン――
この山は大変危険な山である。
年中落雷しており、天候も悪い。
サンダードラゴンは大変気性が荒いので常にこの山を外敵から守っている。
自分が住みやすくなるために。
バレッド達はライトニングマウンテンを少しずつ登っていく。
しかし落雷や嵐にバレッド達は恐怖する。
「ひいっ!!」
ヴランが雷に怯える。
いつ直撃しても可笑しくない雷はバレッド達の精神を徐々に削っていく。
「これは無理なのではないですか!!」
「ああっ!! 今更引き返せと? そんなことできる訳ねえだろうが!!」
「でもこの嵐と雷で山頂まで行くのはきつすぎますよ!!」
「じゃあお前が何とかしろ!! ヒーラーだろうが!!」
「無茶言わないでください!! そっちこそ何とかしてください。リーダーで男でしょうが!!」
「何だとてめえ!!」
二人は登りながら喧嘩をする。
精神が恐怖により蝕まれて不安定となっている。
「ちょっと喧嘩してる場合じゃないでしょ!! さっさと登るわよ!!」
エレノアが切れ気味に言う。
嵐でバレッドは吹き飛ぶ。
そして近くにあった岩に激突する。
「いてええっ!!」
バレッドは背中を打ち付ける。
そして同時に思う。
使えねえ仲間だなと。
何とかしろよと。
「ちいっ!! これもあの疫病神のせいだ!!」
バレッドはラークを口に出す。
ラークが去ってから碌な目に合ってないと思っていた。
その理由はラークが残した疫病だと思い込んでいた。
本当はラークがいたからこその【デビルメイデン】だったのに。
その後何故か晴れて頂上へと辿り着く事が出来た。
「おっ!! 頂上だな!! 余裕だったぜ!!」
「そうね。これが私達の実力よ!!」
「そうだね。僕達デビルメイデンにかかればこの程度余裕さ!!」
「服が汚れてしまいました!! 早く終わらせて買い換えたいです!!」
「ふうー。やっと着いたか!!」
彼らは苦労した筈の山頂までを余裕だと豪語した。
何故か途中から晴れていた。
理由は受付嬢から頼まれたSランク冒険者の少年が天候を晴れに変えたからだ。
だがバレッド達は後ろから付いてきている事さえ気づいていない。
その程度の感知能力なのだ。
「おっ、いたいた!! 眠ってやがるぜ!!」
「今なら余裕ね!!」
「よーし一気にやっつけるぞ!!」
バレッド達は持っていた鋼の剣で攻撃する。
眠っているサンダードラゴンに。
しかしその攻撃は全て直前で弾かれた。
「ぐわああああっ!! いってええええ!!」
「きゃあああああああ!! 痛いわ!!」
「うわあああああああ!! 痛いよ!!」
サンダードラゴンは周囲に雷の結界を張り巡らせていた。
その雷の結界にバレッド達の攻撃は弾かれた。
そして感電した。
「くそがああああああああ!! もう一度だ!!」
バレッドが苛立ちながらもう一度攻撃しようと試みる。
その瞬間サンダードラゴンが目覚める。
「誰だお前らは!! 俺の眠りの邪魔をするな!!」
「ひいっ!!」
「死ね人間!!」
「うわあああああああああああああ!!」
サンダードラゴンはバレッドに雷の攻撃を放つ。
頭を抱え怯えて震えているバレッド。
その間に割って入った少年がいた。
「全くあれ程言ったのに!! 君たちは学習能力がないのか!?」
「てめえええ!! あの時の男!! 何しに来やがった!! 邪魔するつもりか!!」
「邪魔じゃなく無様な君たちを助けたんだ!! 全く感謝してほしいよ!!」
「ああっ!! 助けただと? 俺達はもう少しで勝てるところだったんだよ!!」
Sランク冒険者の少年は大きくため息をついた。
そして内心死んでしまえばいいのにと思った。
だが受付嬢との約束がある。
仕方なく守ることにした。
「君達じゃ無理だ。ここを登るのも君達だけでは無理だったのだから!!」
「ああっ!! 山頂まで余裕だっただろうが!! 何言ってやがる!!」
「僕が天候を晴れに変えたんだ!! いい加減その自尊心は捨てたらどうだ!!」
「何だとてめえ!! 殺されたいのか!!」
「兎に角戻るぞ。サンダードラゴンは君達では無理だ!!」
「そんな事ある筈ねえ!!」
もう一度バレッドが攻撃を仕掛ける。
しかしサンダードラゴンには届きすらしない。
「悪いがここは逃げさせて貰うよ!!」
「勝手にしろ人間共。俺の眠りの生活の邪魔さえしなければいい!!」
「話が分かってくれて嬉しいよ!!」
最後にサンダードラゴンは大きな落雷の攻撃をバレッド達にする。
バレッド達は叫び声を上げて震えて蹲った。
それをSランク冒険者の少年が余裕そうに剣で落雷を防いだ。
「これが僕と君たちの実力の違いだ!! さあ帰るぞ!!」
恐怖で失神寸前の【デビルメイデン】を抱えて下山する。
結果サンダードラゴン討伐のクエストは失敗した。
そしてレーステア王国冒険者ギルド支部で受付嬢から非情な通告を受ける。
「今回の結果によりデビルメイデン様のCランク降格が決定いたしました!! 残念ですが一から頑張ってください!!」
「な!? ふざけるな? ま、待てもう一度チャンスを寄越せ。今度こそサンダードラゴン狩ってやる!!」
「その右手は何ですか? 暴力行為は前にも言った通り冒険者ギルド資格剥奪になりますよ。宜しいのですか?」
「くそがあああああああああああああああ!!」
受付嬢は内心こう思った。
まだサンダードラゴンを狩れると思っているのかよと。
だが仕事なので表情にも口にも出さない。
「またのお越しをお待ちしています!!」
「ま、待てええええええええええええええ!!」
バレッドは大声で泣き叫ぶが無意味に終わる。
涙交じりの大声だけが空に響き渡った。
そして【デビルメイデン】は現在レーステア冒険者ギルド支部に設置された椅子に呆然として座り込んでいる。
全員が意気消沈している。
プライドが高い彼らは内心認められなかったが、それでもCランク降格の事実という現実が嫌でも襲う。
そんな時先刻バレッド達を庇った少年がやって来た。
「何の用だ!! ああっ!!」
「君達は一度Sランクに昇格したそうだがどうやってだ?」
「ああっ!? 馬鹿にしてるのか!? てめえ!!」
「いや純粋に疑問に思っただけだよ!!」
「どうやってって、ラークがセーブして何回もやり直して!! つっ!!」
「ラーク? 成程。そうか追放した者のお陰か」
「ちげえ。あんな奴のお陰じゃねえ!!」
「現実を認めたらどうだ。そのラークというメンバーがいなくなってからこの体たらくだろ」
「な!?」
「つまり君たちはラークのお陰でSランクまで上り詰めたという事だ。もう一度Sランクに昇格したければ彼に頭を下げるんだな!!」
「つっ!! そんな事出来る訳ねえだろうが!!」
「じゃあ君たちは一生Cランクだ!!」
そう言ってSランク冒険者の少年は【デビルメイデン】の前から去っていった。
そして暫し静寂な時間が流れた。
そして一人禁忌の言葉を口に出す。
「あのう、ラークを連れ戻すのがいいのでは?」
「な!? イルーンてめえ。今更そんな事出来る筈ねえだろうが!!」
「ですがこのままでは私達はCランクのまま。最底辺の冒険者のままですよ!! 他の冒険者に馬鹿にされます!! 耐えられません!!」
「じゃあてめえが行けや!!」
「な!? 分かりました。じゃあ私はこのパーティーを去ります!!」
「何!? てめえ裏切る気か!?」
「このパーティーに未来なんてありませんから!!」
イルーンの言葉を聞いた他の者も傲慢な態度で言う。
「私も去るわ!! こんなパーティーに私は相応しくない!!」
「僕もだね!! さよならだバレッド!!」
「私も去らせてもらうよ!!」
「な!? てめえらふざけるな!!」
「ラークにでも何でも頭を下げればいいでしょうが!!」
そう言ってバレッドの周りから全員姿を消した。
そして一人哀れに取り残されるバレッド。
「ちっ、仕方ねえ!! ラークに戻って来て貰うか。あいつもきっと生きているなら喜ぶだろ!!」
バレッドはラークを探す旅に出る。
実は他の者もラークを探す旅に出ていた。
皆気づかないうちにラークに依存しラークを独占する為競い合っていた。
だが事実上解散となった【デビルメイデン】のメンバーの絶望は屈辱はここでは終わらない。
更なる悲劇が待ち受けていた。
だが彼らはまだ知らない。
※最後までお読みいただいてありがとうございます!
作者からのお願いがあります。
少しでも、
『面白い』
『続きが気になる』
と思っていただけたなら、
下の【☆☆☆☆☆】評価のタップとブックマークをよろしくお願いします。 今後とも面白い物語を執筆するためのエネルギーとして
ブックマークをしてファンになってくれると嬉しいです。
ポイントとブックマーク、そして感想レビューが作者のエネルギー源となりやる気が漲る活力剤となります。
是非是非この作者と作品を宜しくおねがいしますm(_ _)m