地下5階
「お前、メチャクチャ強いじゃん!早く言えよ!」
「私が強いなんて当たり前でしょ!当たり前すぎて言うのが恥ずかしいくらい。」
こんなに強いなら俺とパーティー組む意味ないのでは?
「何でそんなに強いんだよ!」
「物心付いたときから英才教育受けたからかな。まぁ、今は両親居ないんだけどね。でも、凄い尊敬する兄さんがいるの。私なんかよりも、ずーっと強い兄さんが。私はずっと兄さんの背中を追ってるの」
両親が居ないのか。俺と一緒だな。そういえば、何回かアリスの口から兄さんという言葉を聞いたかな。
アリスが兄さんの話をしてる時は、目が星よりも輝いていて、眩し過ぎるんだけど見ていられる。可愛いから。
「さっきの、ソードリザードとかいうやつが弱いって言う事はないんだよな?」
「貴方、ホントに何も知らないのね。ハンター狩りって言う異名を持ってるくらいよ。初心者がやられる大半はあのソードリザードなのよ。弱いわけないじゃない。」
良い勉強になりました。迂闊にあのトカゲには近づくなと言う事だな。
ようやく、地下5階に辿り着いた。なんせ1階1階が、広いために移動するのに時間がかかる。
地下5階はこれまでの階よりも更に広かった。天井は果てしなく上まで広がりまるで空がそこにあるようだ。
真っ暗で上を見上げると夜空を見てるみたいだ。
俺達が地下5階に着いたと同時に上からバサバサと翼の音か聞こえる。敵の姿はまだ見えない。
「何かしら?かなり大きいわね。」
「アリス、ここには来たことないのか?」
「ここは、初めてなの。地下5階からモンスターの強さが格段に上がるらしいから。」
えっ?そうなの?俺みたいな貧弱ステータス持ちが来ていい場所なのか?
バサバサと音を立てていた正体は徐々にその姿を現す。
「何だあれ?!デカイ蟹が飛んでるぞ!」
体長5メートルはゆうに超える蟹に翼が生えており、馬鹿でかいハサミが薄暗い洞窟の中で一際輝いている。
「よぉ、アリス。しかし早いな。お前らアレを見るのは初めてだろ?」
ちょうど、トーマスが姿を見せた。相変わらず赤いな。
「アンタは見たことあるような言い方ね。」
「当たり前だろ。この辺じゃ奴を倒したのは俺くらいだからな。」
戦闘経験済みのモンスターで勝負吹っかけてきたのか。卑怯なやつだ。卑怯剣士という称号をお前に付けてやろう。
「見ろ!アレがここのボスモンスター、クラッベドラゴンだ。あの姿を見て怖じ気づいたなら引き返しても良いぞ!」
じゃあ、お言葉に甘えて引き返そうとする俺をアリスが止める。
「ヤツの動きは把握している。悪いが先に倒させてもらうぞ。」
そう言うと、全身真っ赤のダサいやつは物凄いダッシュでクラッベドラゴンとの距離を詰める。