アリスがうちに泊まります
「あんた、中々やるじゃない。キングボアを一撃で仕留めるなんて。」
後ろで美人が拍手している。
融合解除で元の体に戻った俺は、宙から落ちてくる魔道書をキャッチする。
「やっぱり魔法だったのね。魔力はどれぐらい?」
おいおい、まだか告白は?
「そう、魔法だけどよく分からん魔法。俺の魔力?知らない。」
凄い体がダルい。あの魔法を使うと体力の消耗が激しいのだろうか。
「あのさ、お願いが有るんだけど。」
「剣を抜くのを手伝ってくれって言うんだろ?」
「いやいや、今日はもう疲れたからひとまず剣はここに置いといて明日来るから、今日一晩だけ泊めてくれない?」
ん?泊めてくれだと?告白されるのは分かっていたがいきなり、同居の話か、早いな!
「あんた、家は?」
「私、宿暮らしなの。ただ、この剣に全額使ったから今日は宿屋にも泊まれないの。今日だけ、お願い。」
なんだ、そういう事かよと、地面を蹴る俺。
「まぁ、良いけど…。俺んちボロいぞ。それに、俺だって金が無い。今日食べるものも無いんだぞ。」
今思い出したが、今日ここに来た目的をすっかり忘れていた。
「そこに落ちてるキングボアの牙は高く売れるわ。それで今日はパッーとやりましょう。」
それ俺のセリフな!
キングボアの牙を二つ持ち街へと歩く。てか一個くらい持ってくれないのか?
「あなた、名前は?私はアリス。あっさっきは守ってくれてありがとう。」
お礼がついでかよ!
「俺は、ライト。」
疲れた体にこの牙はとても重いんだけど、風に舞うアリスの髪のいい匂いが鼻をくすぐり、疲れを忘れる。
街へと戻った俺達はギルドへと向かった。
「探したぜ!アリス。さぁ俺とパーティーを組め。」
俺達カップルの前に立ちはだかる男は、全身真っ赤な装備をしていた。目立ちたがり屋なのか。
「ああ、トーマス。お断りするわ!邪魔だからそこどいて。」
トーマスって言った?俺も名前くらいは聞いたことがある。深紅のトーマス。この街じゃちょっと有名な剣士だ。
「俺の誘いを断る女は居ないぞ!ん?誰だお前は?」
赤い瞳が俺を睨む。
「え?俺は、その…。」
「この人と今日パーティー組んで、今帰ってきたのよ。明日も一緒に洞窟行く予定よ!貴方なんかより、強いし頼りになるの。」
おいおい、何を言い出すんだこの女は。俺は、あんまりこういう自意識過剰な奴とは関わりたくない。
全身真っ赤で瞳も紅色なのに、なんで髪の毛は金なんだ?
「コイツが俺より強いだと?ハハハッ!笑わしてくれるわ!俺より強い奴はお前の兄貴ぐらいしか知らんぞ。」
「貴方なんかじゃ、兄さんと天秤にかけるのももったいないわ!」
「相変わらず気が強いな。まぁいい。では明日二人で、洞窟の地下5階に来い!その階層で最強のモンスターを先に狩った方が勝ちだ。お前らが勝ったら認めてやるよ。ただし、俺が勝ったら俺のパーティーに入れよ。逃げんなよ。」
勝手に決めて、後ろのパーティーと思われる人達と一緒にギルドを、出ていくトーマス。
「ちょっと!勝手に決めないでよ、もう〜。」
おい、マジかよ!洞窟に入ったこともないのに、いきなり地下5階まで、行かないと行けないのかよ。
アリスは、当然行くわよね、と俺に視線で投げかけてくる。
「行かない!俺は、今資金集めがしたい。今日助けてあげたんだし明日は行かないでも良いだろ?」
「怖いの?まさかあの男が怖いのね?私を洞窟の中で一人にさせるのね?貴方のせいで私が洞窟の中でモンスターの餌食になろうとも私に悔いはないわ。貴方のせいで……」
「分かったから!行くから!それ以上その嘘泣きは止めろ!周りの見る目が痛い。」
「ホントに?ありがと。じゃあ、今日は食材買って帰ろう!」
潤んでいた瞳は直ぐに乾き笑顔に変わっていた。
何でこいつ、こんなに笑顔が可愛いんだよ。全部許してしまうじゃねぇか。
キングボアの牙は普通より小さいと言われたが二つで2万円出売れた。
初めて万札を見た。
そのまま街を周り、食材を、買い集めた。
俺の両手一杯の食材。残金はほとんどなくなった。
「さぁ、家へ帰るわよ!」
「俺の家な!ちょっとは持てよ!」
俺の問いかけに知らん顔で前を行くアリス。
「ふーっ!やっと着いた!」
「えっ!?ここが……家?馬小屋じゃないの?」
俺の家を馬小屋呼ばわりされているがどうでもいい。両手の荷物が重すぎて手が、取れそうだ。
「早く、戸を開けてくれ!」
「はいはい。うわっ!ライト、ちょっと!かぐや姫が中に居るわ!何で、こんなボロ屋にかぐや姫が居るの?」
声がデカイ。お前の声でこの家が倒れてしまいそうなのでもう少し静かにしてくれ。
「俺の妹だ。」
「妹?こんなに可愛い娘がライトの妹?」
アリスはソフィアに近づき、360度いろんな角度からソフィアを見ている。
「お兄ちゃん、この人は?お兄ちゃんの彼女?」
そんな悲しそうな顔をするな妹よ。そいつは彼女ではない。そいつが俺に片思いをしているだけだ。
「ああ、そいつはアリス。今日知り合った。一晩うちに泊まるらしい。」
「ソフィアって言うんだ。可愛い名前。」
「よろしくお願いします、アリスさん。」
二人は、既に意気投合しているみたいだ。
「おい、早くご飯作ってくれよ!食材は俺が買うから料理はそっちがやるって。約束だろ。」
「分かってるわよ!じゃあ、ソフィアちゃん手伝ってくれる?」
「はい、喜んで!それにしても凄い量の食材ですね。何の料理を作るんですか?」
「今日は、焼き肉よ!」
…………………。
俺とソフィアは耳を疑った。
「お前、焼き肉だったら、料理いらないだろ?焼くだけじゃねーか!」
「あっ!バレた?私料理出来ないのよ!ハハハッ」
笑ってんじゃねーよ。まぁ良いか、久しぶりに米以外のモノが食べれるんだから。
ちょうど家に炭があったので、炭火で焼く肉はそれはそれは死にそうなくらい美味しかった。
笑顔で肉を食べているソフィアを見るとそれだけで天国に来たような感覚になる。
横で馬鹿食いしてるアリスを見ると現実に戻されるのだが。
「ふーっ。お腹一杯。お風呂に入るの忘れてたわ!お風呂は何処?」
人の家で、人が稼いだお金で買ったモノを堂々と、食べるアリス、尊敬するわまじ。
「お風呂は外だ外。お風呂といか、ドラム缶だけどな。」
「外?ドラム缶?嘘でしょ?貴方、こんな美人を外のしかもドラム缶に入れるの?」
もう帰ってくれないかな?
「ごめんね、アリスさん。」
「良いのよ!ソフィアちゃん。貴方は何も悪くない。じゃあ一緒にお風呂入ろ。」
俺が悪い見たいな言い方をするな。
「おお!良いね!一緒に入るか。」
「貴方には言ってないわ!このド変態!」
冗談だよ。おい、妹よ、そんな哀れな目で俺を見るな冗談だから。
いくら妹といえど、そんな哀れな視線は俺の心臓を容赦なく貫くぞ。
「俺は、疲れ過ぎたからもう寝るよ。」