キングボア登場
今も尚、美人の鋼のような装備に体当たりしているしつこいスライムにコチラから攻撃を仕掛る。
「えい!」
俺は、スライムパンチをスライムに繰り出した。
オメガなだけあって、反発力が増したのか、昨日よりも速いスピードでスライムは飛んでいく。
「俺、強いじゃん。それっ!えいっ、それ!」
次から次に、スライムを飛ばしていく。そこら中にスライムの欠片が散らばっている。
「なんだ、やっぱり倒せるんじゃない。あのオメガを、逃したのはデカイわね。これは、あの武器屋に文句言わないと気が済まないわ!」
美人がブツブツ言ってる隙きに、経験値グミとスライムの欠片を拾い集める。
「ん?何だ?こんなとこでウリボーみたいなのが、のびてるぞ。俺が飛ばしたスライムに当たったのか?」
ウリボーみたいな小さいやつが、ひっくり返って目を、回している。
「あなた、何をしてるの?!チビボアじゃないそれ!あなた正気なの?」
「いや、なんか知らんがここでひっくり返ってたぞ。なんか問題か?」
慌てている様子の美人。
「チビボアに危機に反応して直ぐに、親のキングボアが来るわよ。普通に強いから頑張って倒してね。」
要するに、親のもう少し大きいイノシシみたいなのが来るって事ね。
「俺が闘うのか?」
「当たり前でしょ!私も普通の剣が有れば闘えるけれどこんな不良品じゃ無理よ!」
この人何で俺に怒ってんだよ。
ドドドドドドッ!!!
「何だ地震か?」
なんか知らんが凄い地面が揺れている。
「違うわよ!アレを見て。」
美人が、指差す方にはどこから現れたのかどでかいイノシシ見たいなモンスターがこちらに向かってダッシュして来る。
体長は5メートルほどか、いやもっとあるかもしれない。
デカイ鼻の横には真っ白い2つの牙がドリルよのうに突き刺さっている。
「ででででかいなっ!アレがこいつの親なのか?」
まだ少し距離が離れている為に、逃げる余裕はある。
しかし、目の前で動こうとしない美人。
「おい、何やってんだ?そこに居たら正面衝突だぞ。まさか、受け止める気か?」
「地面に突き刺さった剣が抜けないのよ!何この剣!」
必死で剣を地面から抜こうとしていたのか。
「そんなの置いとけよ!使えないんだろその剣!」
「高かったのよこの剣!あのぼったくり店主の前にこの剣放り投げて、お金返して貰わないと気がすまないの。」
てか、買った時に気づかなかったのか?
もう、既にキングボアと呼ばれるモンスターは射程圏内にいる。
目の前には、突き刺さった剣に身を隠そうとするアホな女。
そこに容赦なく猛スピードで突っ込んでくるキングボア。
どうする?俺。このまま彼女に犠牲になってもらって俺は、逃げるか?
考えている時間は無かった。
よし、逃げよう。そう決めた直後だった。
「兄さん、ごめんなさい!」
確かに、美人は目を、閉じてそう言った。
おにいがいるのか?そう考えたら目の前の彼女が妹のソフィアに見えてきた。
「チッ、逃げらんなくなっちまった。」
俺は、咄嗟に彼女の目の前に出ていた。
何してんだ俺は?死ぬぞ。
そう思った時にはもう遅かった。
キングボアの足音はゼロ距離で聞こえる。
俺は、目を閉じ腕をクロスさせて構えた。
『機器感知 メタル化』
どこからか、声がしたが恐怖で声が聞き取れない。
ドカンッとデカイ獣が俺にぶつかる。それは、凄い衝撃で100キロで走るトラックに撥ねられるような感覚だ。
でも、あんまし痛くないな。痛みを感じないと言う事は、俺即死だったのか?
目を、開けると二つの牙が折れて地面に転がっている。
「ギァオオオオオ!」
叫んで後ずさりするキングボア。
俺の腕はなんとも無いというか俺の腕、色が銀になってるし。
腕だけではなく、全身銀色になっていた。
これが、メタル化ってやつかな?
「あんた、何したのその体?魔法?」
俺の後ろで驚いた表情の美人。そうか、俺に惚れたか。
告白は後にしてくれ、もう一度、あいつが突撃指摘そうだ。
キングボアは、地面を蹴りこちらを威嚇している。
折れた牙もお構いなしにダッシュしてくるキングボア。
このメタル化はアイツの突撃を防いだって事になる。ならいけるかもしれない。
俺は、右足を引き右手に拳を構える。
「足、重いなっ!」
突っ込んでくるキングボアの広すぎるおでこに右ストレートを伸ばす。
ズドンッと鈍い音を立ててキングボアの動きが止まる。
ジワンと俺の腕が痺れているが痛くはない。
静止したまま動かないキングボア。
「クソッ!駄目か。」
そう思った時に、ゆっくり横にバタンッと倒れたキングボア。
キングボアのスピードを逆に活かしてやったぞ。たまたまだけどな。
「えっ?倒したの?こんなでかいのを俺が?」
流石に、遭遇率100万分の1だな。
姿が消えていき、消滅するキングボア。
そこには、スライムの時より少し大きい経験値グミが落ちていた。