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ロリコン?いいえ、違います。  作者: 高澄里桜
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第一話


こちらは、コミティアのフリーペーパーで出させていただいたお話になります。

(ペーパーのときと多少違う部分もありますが、内容に変更はございません)


フリーペーパーで読んでいただいている方もいらっしゃると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。


ー名前読みー


山内くるみ(やまうち くるみ)


高宮隆一(たかみや りゅういち)


笹倉豹吾(ささくら ひょうご)


西村智志(にしむら さとし)


小島紗希(こじま さき)


秋津結子(あきつ ゆいこ)

「娘だからって甘やかさないわよ」

芸能界に入ろうと思ったのは、昔はアイドルでいまは芸能事務所社長のお母さんを見返すため。ああ言われて、甘やかしてなんて思ってないって強気でいたけど、それはやっぱり気持ちだけで。お母さんとの衝突が絶えなくて誰にも相談できない。そんな潰れそうなとき、私はある人に電話をかける。

「何で私の番号知ってるんですか?」

「家の電話のところに高宮携帯ってメモ貼ってあるんで、それ見てかけました」

高宮さんは、お母さんの秘書的業務を行っている男の人で、私は事務所で挨拶程度しかしていない。

「高宮さん、いつもお母さんの側にいるから話分かってくれると思って!お母さん、ひどいんですよ!」

私が一方的に話しているだけだったけど、高宮さんは相槌をちゃんとうってくれる。

それからも事あるごとに高宮さんに電話をかけるけど、切らないで相槌をうって、私の色々な話を聞いてくれる。

やさしい人。私、高宮さんのこともっと知りたい。こんな風に思うのは、どうして?


「恋じゃん?」

マネージャーの田崎が言う言葉に、くるみは顔を赤らめる。

「いやいやいや、何言ってるんですか。そういうのじゃないですって!」

「じゃあ何で顔赤いの?」

「田崎さんがさらっと恋とか言うからですよ!」

「初々しい反応だねぇ。でも、くるみはまだ高校生なんだから、さ」

「分かってます!」

くるみは複雑な気持ちになる。

去年からレッスンを受け、今年の夏に女優としてデビューしたくるみ。肌寒くなってきたこの日は、年明けに放送されるドラマスペシャルの撮影だ。

「これから挨拶しに行くんだから、笑って」

「はい!」

まずは主演の俳優に、それから出演者一人ひとりに挨拶をしていった。最後に向かったのは、ユニットを組む二人組。

「あ、よかった。ナインプラネットいた」

田崎とくるみは二人に駆け寄って行く。

「すみません、失礼します。本日はよろしくお願いします」

田崎に続いてくるみも挨拶をする。

「山内くるみです。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、頑張りますのでよろしくお願いいたします」

くるみが頭を下げると、二人のうち一人が慌て出した。

「そ、そんな頭下げなくていいですって!俺、笹倉豹吾です。前に雑誌で山内さんのインタビュー読んだけど、俺と同い年だった。よろしくね」

「読んでいただいてありがとうございます…」

「同い年なんだし、敬語使わなくていいって!じゃあこれからくるみって呼ぶから、くるみも俺のこと呼び捨てで」

「あ、えっと…豹吾くん…」

豹吾は満面の笑みでうんうんと頷いた。

くるみがもう一人に目線を向けると、微笑んでくれた。

「西村智志です。よろしくお願いします。ごめんね、豹吾がキャンキャンうるさくて」

「なんだって?」

豹吾は満面の笑みから一変、鋭い目つきで智志を見る。

「ほんとのこと」

それから二人のコントのような言い争いが始まり、田崎とくるみはお邪魔しましたといったようにその場を離れた。

「…はぁ〜、可愛かった」

遠目にくるみを見ながら豹吾は呟いて、顔が赤くなっていく。

「春が来たか。季節は冬に向かってるけど」

「そうだよ、春だよ。季節先取り。第二ボタンあげます」

そう言って豹吾は、第二ボタンが来る位置に手をあてる。

「自分からあげるヤツ嫌だわ…」

智志が後ずさりすると、豹吾は向かってくる。また何か反発してくるのだろうと思っていたら、智志の胸に自分の顔を埋めた。

「いま初めて話して…好きだって思うのは早いか?…早いよな…」

「お、おぉ…早いなぁ。まぁ、豹吾らしいね。でもすぐに深入りしたらダメだよ」

「そうだよな…」


一方、こちらは都内の撮影スタジオ。

「はい、OKです。お疲れさまでした!」

「ありがとうございました」

スタジオから出てきたのは。

「紗希、お疲れさま。車出してくるから待ってて」

アイドルとしてデビューした小島紗希だ。今日は雑誌の撮影だった。

「ねぇねぇ、年末の歌番組、あたしも出るよね?」

後部座席に乗った紗希は、運転するマネージャーの野村に聞いた。

「あぁ、そうだよ。どうしたの、何かあるの?」

野村がバックミラーで紗希を見ると、何故かもじもじしている。

「ナインプラネットの西村さんに会えるから…」

それから恋する少女のように、智志の好きなところを語り始めた紗希。

「どうして西村くんだけなの。笹倉くんもいるよ。二人に会うのは初めてかぁ」

野村にとって何気ない一言だったが、ひび割れして崩れていくみたいに紗希の態度が変わっていった。

「ちょっと野村さん!あたしいま西村さんの話してるのに笹倉豹吾出して来ないでよ!だいたいあの人何なの?苗字は草食なのに下の名前は肉食だし。あれは本名なの?事務所はロールキャベツ男子狙ってんの?とにかく、西村さん、ソロでも十分いけるのに、あの人と組むなんて、あの人が一人だと売れないからよね。全く、お邪魔虫だわ」

まだ会ったこともないのに、酷い言われようだ。

「それにあの人の…」

「分かったよ、紗希。そのへんにしとこうか」

豹吾が可哀想になってきた野村は、まだ続けようとする紗希を止めた。

「野村さん、分かってな…」

「可愛い顔が台無しだから笑ってよ」

「え…?!」

プンプンして不機嫌だった紗希は、けろっと笑顔になった。


ドラマの撮影も終わり、くるみを乗せて帰ろうと車を走らせていた田崎。現場から真っ直ぐくるみの家を目指していたが、くるみが事務所に寄ってと言うので、急遽、事務所に向かっていた。

「高宮さんに会うの?」

「違います、お母さんに渡すものがあって」

田崎の言葉に一瞬心臓が跳ねたくるみだが、嘘をついた。本当は高宮さんに渡すもの。

嘘が完璧だと思っているくるみだが、田崎は見抜いている。しかし、黙っていることにした。

「でもさぁ、くるみ。高宮さんに電話するの、今後は控えてね」

田崎の言葉にくるみはしゅんとする。苦しいのに誰にも相談できないのは、自分だけではない。くるみ自身、それは分かっていたが、高宮さんがいた。分かってくれそうな人がいると、歯止めがかからない。何でも話してしまう。私の話をどういう気持ちで高宮さんは聞いているのだろうか。

「くるみの気持ちは分かるよ。でも高宮さん、結婚してるし…」

「え…」

「なにびっくりしてるの?高宮さんの歳考えなよ。三十六歳だよ?結婚しててもおかしくないでしょ」

それからくるみは何も喋らなくなった。もっと知りたいと思っていただけにショックは大きい。やはり自分は高宮さんが好きなのだろうか。もやもやする。

「着いたよ」

田崎の声かけにもくるみはすぐに反応しなかった。ここへは何しに来たのか。

「俺が社長に渡して来ようか?」

「あ、いえ…自分で渡します」

声に覇気がないが、とりあえずくるみは車を降りて事務所に入る。

ここへは高宮さんに会いたいから来た。あとは、頻繁に電話をかけたことを謝らないといけない。くるみはそういう気持ちで高宮さんを探す。でもここでは廊下で挨拶ぐらいしかしていないし、いつもどこにいるのだろうか。考えるも、足は社長室に向かっている。

すると、社長室から高宮さんが出てきた。

「あ、高宮さん…!」

なんというグッドタイミング。くるみは笑顔で駆け寄り、背の高い高宮さんを見上げた。

「どうも、お疲れさまです。社長なら…」

「お母さんじゃなくて、その…」

面と向かって顔を合わせることがそんなにないため、くるみは恥ずかしくなって目線を落とした。

「私に用があるんでしょうか?」

高宮さんは察してくれた。くるみは目線を落としたまま頷く。

「あの…頻繁に電話をして本当にすみませんでした。毎回出て下さってありがとうございます。自分でもやめようと思ってたところで、田崎さんにもさっき注意されました。私、その…うざったくてすみません」

くるみにはこれが精一杯だ。どうしよう、顔が上げられない。

「もう少し自分で考えて、とは思いますけど、うざったいとか思ったことはありません。私も色々な仕事を抱えているので出られないときも今後はあるかと思いますが」

自分にとって良くない返事が来ると思っていたのに。くるみは顔を上げ、高宮さんを見る。

「あ、ありがとうございます…。あ、そうだ!これ…」

くるみはバッグから袋に入ったカップケーキを出した。

「私が作ったので、おいしくないと思うんですが…。ちょうど二個あるので、奥さんと一緒に…」

くるみが渡したいものはこれだった。だけど、奥さんと食べてなんて微塵も思っていない。

「え、奥さん?」

高宮さんは何を言ってるんだという目でくるみを見る。

「あれ?結婚、されてますよね…?」

くるみは恐る恐る聞く。

「あぁ〜…確かに結婚して、奥さんいた時期もありました。でも、すれ違いとか性格の不一致で、二年ぐらい前でしょうか…離婚しました」

「そんなに前?!」

何で田崎さんは知らないんだと、くるみは思う。

「こんなこと、そんな話す内容でもないですしね」

そう言われて、くるみは納得できた。

「え、じゃあいまは…」

勢いで聞いたくるみだが、もし新しく良い人がいるのなら、またショックが、と聞いたことを後悔した。

「一人ですよ。それが?」

「あ、いえいえ…」

自分がとてつもなく安心している。再び恥ずかしくなってきたくるみは頭を下げ、その場を離れた。


一人ですよって、本当に?

私、安心しているし、嬉しいとも思っている。

今まで同じ学年で好きな人はいたことあったけど、いまはそのときと同じ気持ち?

そんな、十八歳差なのに…。


恋愛とかそんなの、ありえないよ…。


「くるみ!前見て!」

声が聞こえるまでずっと下を向いて歩いていたくるみ。顔を上げると、誰かにぶつかってしまった。

「すみませ…結子さん?!」

「ちゃんと前見て歩かないと危ないよ。ぶつかったのが私でよかった」

クールビューティーな秋津結子は、ここの事務所に所属していて、くるみにとっては姉のような存在だ。

「結子さーん、どうしよう…」

「なに、何かあったの?」

その後のくるみの言葉に結子は腹の底から声が出た。

「はっ?!」



私、高宮さんが好きみたいです。




読んでいただき、ありがとうございます。

コミティアで出しているとはいえ、こちらでは初投稿なので、緊張しております。


もしよろしければ、ご感想いただければ幸いです。


Twitter:@osaketosyamisen


高澄里桜でした、ありがとうございました!

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