世界の終わり、異世界の始まり
世界の終わり、異世界の始まり
-唐突だが、世界は死んだ。いや、死んでいたというべきか。我々人は、日々科学技術を進歩させていた。
それによって一昔前には、夢物語と言われていたことが当たり前の技術へと変わっていった。
だが、ある時、人はたどり着いてしまった。神が作った《理》という森羅万象を統べる世界のルール、それを操る技術に。
それにより人々の暮らしはよくなり、不可能された事も可能にする事が出来るようになった。それはそうだろう、自分たちの好きなようにルールを変えられるのだから。
だが、そんな神にも等しい技術がなんの代償もなく使えるはずがない。そもそも《理》とは絶妙なバランスで成り立っているものだ。何か不安定な要素が加われば、何か一つでも欠けていれば、いとも容易く崩壊する。いわば、ドミノのようなもの。そんな不安定な《理》を好き勝手にいじくり回していたのだ、ただですむはずがない。好き勝手に《理》を弄っていた結果、すぐに人類はその代償を支払わされることになった。
まず、最初に人類が失ったのは幾多の先人たちが築き上げてきた遺産、科学。その全ての技術を失ったのだ。当然人々は混乱し現実を受け止めきれなかった。今まで当然のようにあったものが一瞬で消え去ったのだ。むしろ、これですぐさま現実を受け入れることが出来る方がよっぽど異常だ。
科学の力の失った人類にさらなる悲劇が訪れる。人類を襲った2つ目の代償。それは、
-魔獣という存在の出現。
魔獣とは普通の獣と違い、攻撃性が高く、身体が黒くなり、なによりも圧倒的な身体能力を持つ獣のことだ。
普通の獣との危険度は段違いに高く、上位の魔獣には、腕を一振りするだけであたり一面を更地に出来るものもいる。
そんな化け物を相手に科学を失った人類が太刀打ち出来るはずもなく、人類は徐々に追いつめられていった。
だが、それでも人類は滅びなかった。怪我の功名といえばいいのか、追い詰められる中で人類は新しい力を手に入れた。
それは《理》を崩してしまったから持ち得た力。魔力という本来持ち得ない力を持ったが故に、手に入れることのできた力。
ー魔術という奇跡を起こす力を。
魔術という力を手に入れた人類で復活し、新しく生まれた2つの存在がいた。
ー騎士と魔術師と呼ばれる存在だ。
魔術師とは文字通り魔術を使いこなし、己が力とする者のことを示す。魔術を手に入れた人類に現れて当然の存在だ。
だが、なぜ騎士という昔に廃れた存在が復活したのか。
それは魔術で身体能力を高めることが出来るからだ。
人類と魔獣の違いは魔力を持つこととその圧倒的な身体能力だ。故に、身体能力を強化し、魔獣と同じ土俵立てばいいという安直な考えだ。無論、そんな単純な話なわけがなく最初は多大なる犠牲が出た。だが、騎士は魔術師と組むことによって
劇的にその存在価値を高めた。発想の転換という簡単な話、気づいてしまえば何てことない考え。
ー騎士が魔術師を守り、魔術師に強力な魔術で倒してもらえばいい。
自分が倒すのではなく、倒すために守ればいいということ。
その考え方によって人類は大きく力を上げ、魔獣を討伐することも出来るようになり、人類の生活領域を世界の約40%まで広げることができた。
こうして、《理滅の新世》と呼ばれる災害から、人類が魔獣に対抗出来るようになって数千年後の世界、《アラストリア》
と呼ばれるようになった世界の小さな王国のたった一つの街から始まる、《剣姫》と呼ばれ、数多の危機を救い、国を発展させ、後世にて、英雄と呼ばれる者の軌跡を描いた物語であるー。