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ギヴ  作者: 朝那
一学期
9/92

ゲームスタート

少年には、その光景がとても変に見えた。


隣のユキは気づいていなかったが、コウはやっぱりおかしい、変だと思うばかりである。


「うん、確かに、それはいいかもね…クィンさん、もっと詳しく…」


昼下がりのカフェテリア、日の当たる席で、ミラとエリーが話し込んでいたのだ。


ミラはエリーのクラスを担当していない。なんでミラがエリーと話しているのか、コウには不思議でならなかった。


「なあユキ、あれ絶対変だって…」

え?何が?(ふぇ?ふぁにが?)

ユキがきつねうどんを食べながら聞く。


「ほらあれ、宮地とエリー」

ユキが麺を飲み込んでから話す。


「ちゃんと先生と先輩、つけなよ。誰が聞いてるかわかんないし。

で、宮地先生とエリー先輩?別に一緒にいてもおかしくはないでしょ、先生と生徒なんだし」


「いやいや、あいつら面識昨日の昼だぞ?あんなに仲良くなるか?挨拶もしてないし」


「うーん…確かに、馬が合いそうかって言われたら言えないけど…」


そう言ってユキはミラとエリーの方を見た。エリーとミラは席を立ち、話しながらどこかに行こうとしている。


「…ミラは能力でエリー先輩を何とかできる。エリー先輩はそれを知らないはずだし、ミラは能力を使うはず。大丈夫だよ、ミラなら」


ユキはそう言うとまた、きつねうどんを食べ始めた。



「…で、どうしろって言ったかな?」

体育館の裏で、彼は少女に言った。


「ふふふ、言ったでしょう?()()って」


「…作れるかは分からないよ。それでも?」


「ええ、それでも。あなたの能力、欲しいんですもの」


「…全く、『Queen』の情報網は侮れないね」


緑の目がきらりと光る。エリーは笑って言った。

「…ゲームの、始まりですわ」



放課後。


ユキとコウは2人で家に帰ろうとしていた。下駄箱の近くの階段を降りる。


「あのベーコンエッグがかぁ?そんなに美味しかったか?」


「うん、僕は美味しいと思ったよ。だから、毎日食べさせてくれって言ってるんじゃん」


「…お前ん家、どうなってるんだ…」


「えっと、だから何度も言うけど、母さんは毎日夜遅くまで作業してるんだ。

僕達は10時くらいに報告するけど、深夜の2時とかに報告に来るなんてざらなんだよ。それを待つせいで寝るのが遅い。

だから、僕はサンドイッチを貰って、すぐに寝てもらうようにしてるんだ。僕がいると起きてるから、母さん」


「…まあ、俺自身はいいけどな。夏美さんに聞いてみるか…」


「いやー、あれをこれから毎日食べられるなんて嬉しいなぁ」


そう言って、ユキは自分の靴箱を空け、手探りで外靴に触ろうとした。だが、その靴の感触の前に、紙の感触が手に当たった。


「ん?なんだろう、これ」

ユキがその紙を手に取る。手紙のようだった。


「お、ラブレターか?いいなあ、お前はずっとここにいるから、ラブレターの一つや二つ…」


コウがそう冷やかすと、ユキは「うっさいうっさい」と嫌そうに言った。


ユキが封筒の裏を見ると、「フォーゼくん、ナイフくんへ」と書かれていた。


2人はそれを見て、誰が送ったのかすぐに気付き、誰もいない教室に移動した。そして、中身を見る。


そこには、

「フォーゼくん、ナイフくんへ

突然だけど、緊急の要件が来た。

どうか、メイクさんの耳に入る前に、解決して欲しい。

本当ならメドゥーもいる中で話したかったけど、時間はないし、そもそも僕は行動を制限されてる。集会にも行けない。

何もやることがないこの1週間で、解決して欲しい。


『Queen』が動いた。

彼女は僕達の目的を知っている。

僕達が、自然エネルギーを独占する使徒の子を叩きのめしてることも、僕やフォーゼくんの能力も知っている。

ナイフくんの能力はさすがに知らないようだけど…

その上で、彼女は僕に「操った振り」をしている。

僕が彼女と会う時、能力を使っていることを分かっているみたいだ。それを警戒してのこと。

そして、彼女は僕を拘束して、こう言わせるようだ。


「ゲームをしましょう。私は明日、この学園のどこかに隠れます。

どこに隠れたかは、この学園の生徒に教えます。

もし、私を見つけられたら、この学園の自然エネルギーはもう二度と独占しませんわ。

でも見つけられなかったら、この学園の自然エネルギーはずっと、全て私のものですの。

スタートは明日の朝。楽しみですわ」ってね。


どうか、見つけ出して欲しい。ロンリーウルフ属はこの学校にもいるから、その子達の為にも。


宮地恭輔より」


と書かれていた。


「ゲーム…!?」

コウが呟く。ユキは手紙を握り、わなわなと震えていた。


「…エリー先輩…この学園の自然エネルギーを独占した挙句、ミラを捕まえるなんて…!」


「ユキ、どうするか?」


「…もちろん、やるよ。このゲーム」

ユキの目がきらりと光る。


「僕が許さないさ…エリー先輩のこと…!」



午後6時。森井塾202室。


「もう!どうなってるの今日は!」

メドゥーが机を叩いた。他の班員は誰もいない。


「全員今日になって休んで…今日はパトロールの日じゃないの!あたしひとりで出かけようかしら…」


近くの椅子に座り、買ってきた焼きそばパンを食べる。


すると、2回、ノックをする音が聞こえた。慌ててメドゥーが焼きそばパンを荷物の中にしまい込み、「はい、どうぞ」と言った。


「失礼致します」

現れたのはユキの母、和子だった。


グレーの薄いセーターが、彼女の老いを増しているようだった。


「め、メイク様!?どうされました?」


「…フォーゼ、いませんね」


「ええ、今日はあたし以外は皆休みみたいで…」


「…そうですか。ありがとうございます、メドゥーサ。今日は帰ってもよろしいですよ、1人じゃパトロールも難しいものがありますし」


「そ、そうですか?ではお言葉に甘えて…フォーゼくん、帰ってないんですか?」


その言葉を聞き、和子はその右手を頬に当て、困ったような顔をして言った。


「ええ、どうも、まだ…何か学校でやっているんだと思いますが…」


「なるほど…まあ、明日ちょっと注意しておきますよ」


「あら、ありがとうございます。なんだかフォーゼをあなたとミラーに任せてしまって、親失格ですね」


「あはは、親失格ですか。あたしにはメイク様はいい親だと思いますけど…

でも、試しにフォーゼくんのこと、幸道って呼んでみたらどうですか?あんまり、呼ばないでしょう?本名で」


そう言うと、和子は少し考えたあと、「…幸道」と呟いた。


「そうそう、そんな感じですよ。

ここでも呼んでみたらどうです?ここの部屋なら、本名で呼んでも大丈夫ですよ」


その時、和子がほんのり笑ったような気がした。


「…ええ、そうしようかしら。ああ、もう帰っていいですよ。引き止めてすみません」


「え?いえいえ、大丈夫ですよ。では、失礼します!」


メドゥーは荷物を持つと、和子に向かって一礼し、部屋を出ていった。


「…幸道」


和子はその名前を練習するかのように呟いた。



その帰り道。


メドゥーは帰り道を鼻歌交じりに歩いていた。カツカツと鳴るハイヒールの音が、誰もいない夜道に響く。と、その時。


「すみません、そこの方」


という声が、メドゥーの隣から聞こえた。


「はい?」と答える。その者の顔はよくわからなかったが、薄紫のYシャツと濃い紫のネクタイから、男性だと判断した。


「私、人を探していまして…この近くの学校の前で集合の予定なので、そこがどこか教えていただけると…」


その言葉を聞いてメドゥーは、「ああ、あそこか」と言って、栗瓦高校の場所を教えた。


「…ああ、ありがとうございます。恩に着ます」


男はそう言って立ち去った。しかし、メドゥーは何か、鉄の匂いがするように感じた。



「…はい、お疲れ様」


「いえ、これほどのことなど」


紫色の男は、栗瓦高校の敷地内の暗闇で、そう声を出した。


「しっかし匂いはちゃんと消さなきゃダメだぞ、鋭いやつはすぐ気付くからな」


「申し訳ございません、以後気をつけてまいります。ところで、今日はどのような…」


「ああ、今日は1人、仲間を紹介しようと思ってさ。見てくれるだろう?」


そう言って俺は、暗闇に向かって指を指した。


レモン色のバンドが胸のアンダーにしてあり、大きく胸が出る白いワンピースが、欠け始めた月の光を反射する。


「彼女は『Maceメイス』、俺の新しいボディガードだ。

メイスって知ってるだろ?戦棍とも言うらしいが、『Mace』の身体全てがそれ自身になることが出来るんだ。

決して強いとは言わないが、技術は高い。どうか仲良くしてくれよ?」


俺が言うと、「かしこまりました」と言って、彼女に挨拶し始めた。


「初めまして、『Mace』。私は『Robロブ』、この方の()()です」

おはこんばんちは。朝那です。

今回初登場のキャラ、そして名前がわかったキャラのイメージカラーから話しましょうか。メイスはレモン色(薄い黄色)、ロブが紫です。

そして、遂に胸の話が来ましたね…現状の胸の大きさを不等号で表すと、

メイス=メドゥー>和子>エリー>ミキ

です。これからまた増えます。やったぜ。

では第3回、もう二度と出てこないであろうモブキャラを紹介するコーナー!

第3回はこちら、『Run』の男!メドゥーに呆気なく負けたあいつです。本名は楽山則祐らくやまのりすけ、会社員です。普段は地下アイドルに貢ぎつつ働いて食べていますが、『Run』は走るのは早くても時給力がなく、運動ができません。食べるのが好きで太っており、ダイエットととしてジョギングを始めましたが、長続きはしていないようです。では失礼。

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