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ギヴ  作者: 朝那
一学期
1/92

古の王

遥か昔。


ある1人の青年がいた。青年には身寄りは居なかったが、彼は誰にも頼らずに生きていた。


周りの誰一人として持っていない能力「give」があったからである。


その能力は、あらゆるものを人間に与える能力だった。食べ物、飲み物、住み物…そして目に見えないものさえも。


そのため、彼はずっと、周りから恐れられ、避けられてきた。しかし、当時神に等しかった彼には、それらはかゆくもなかった。


ある日、彼はその能力を使って、自身を王とする王国を創ろうと決めた。

そこで、彼は26人の村人に、一人一つの能力を与えた。26人の村人は彼の使徒となり、与えられた能力を駆使して、王国を繁栄させた。


彼は王となり、使徒以外の人間にも度々能力を与えた。そして王国は約50年、繁栄していった。


そう、その50年だけ、は。


ある日、王国は消滅した。何が起きたかは分からずに、王国と王は歴史から消えてしまった。


そして今。


その使徒の子孫だけは生き残り、今も尚、能力を手にしている。そして、自然にある間隔で生まれる「自然エネルギー」を、それぞれの使徒の一族、能力の頭文字が同じ者たちのグループが、それを巡り争っていた。


世界は変わってしまったのだ。王の不在から、たったの2000年で。


20xx年。磨希森みがきもり市、栗瓦くりがわら高校付属中学校。


「今日は転校生を紹介しますっ!」


マダム気質な喜久代先生が、3年B組で声を荒らげた。全員が騒ぎ始める。


「静かにっ!ほら、桐宮君、入ってっ!」

そう扉の方に話しかけると、廊下から少年が入ってきた。


桐宮洸太きりみやこうた君ですっ!ほら、ご挨拶なさってっ!」

甲高い言葉の後、低く、ボソボソと、


「…桐宮洸太です。よろしくお願いします」


と少年は言った。

中学3年生男子の平均身長ほどの大きさの少年は、まるで中学1年生のように新しい制服を着ており、少し筋肉質だった。


しかし、学ランの下に首から下げた青いペンダントがキラリと光る少年は、転校生が女子ではないという残念さを、


(転校初日に着崩して、こいつただもんじゃねえ!!)

という驚きに変えてしまった。


「まあーっ!桐宮君、なんですかこのペンダントはっ!転校初日に着崩してっ!」

(先生ナイス!)と殆どが心の中で突っ込んだ。


「…お守りなんです、転校前の」

「あらあらあらあら…なら許すわっ!」

(いいんかい!!)とやはりツッコミが炸裂した。


「ええと…ああ、あなたの席は決めてあるのよっ!学級委員長の、彼の隣だわっ!」

そう言って喜久代先生は1人の少年を指さした。


その少年は「えっ」と驚くように言ったあと、ため息をついた。窓側、1番奥の席ならば、こうなるだろうと思っていたのだろう。


「彼の名前は森井幸道もりいゆきみちよっ!学級委員長なのっ!森井君、面倒見てあげてねっ!」

「…はい」

笑顔で幸道が答える。


「頑張れよー、ユキ!」

と友人の塚崎から言われ、幸道は「うん、頑張るよ」と嫌そうに答えた。


昼休み。

「ええと…改めまして、森井幸道です。皆からユキって呼ばれてます。君は…なんて呼べばいいかな」


ユキは隣の席の洸太に話しかけた。周りの人も集まる。


「…特に何も」

「『トクニナニモ』!?『トクニナニモ』って呼べばいいのか!?」

塚崎が興奮して話す。


「つーかーざーきー!それは絶対に呼び名じゃないよ!それで、なんて呼べばいいの?」

洸太の前の席の少女が話しかける。


「前は、洸太って呼ばれてた」

「でも、コウタってあだ名は他にもいるぞー!コウター!」

塚崎に呼ばれ、コウタが出てくる。本を読むのが大好きな少年だ。


「ええと…どうしたの?あ、桐宮くん。僕、園田奏そのだかなでです。よろしくです」

「…奏って名前じゃないか」

「僕、テレビ見ないから分からないですけど、最近人気の園田光太郎っていう俳優に似ているらしいです。だから、あだ名はコウタ」

「そうか…」


「じゃー、俺たちが新しいあだ名を考えればいいんじゃねーの?」

塚崎が言った。


前の席の少女が、

「あ、なら、コウはどう?コウはこのクラス居ないわよ!」


と提案する。全員がいい、と賛同した。

「なら決まりね、コウ。私は瀧澤美樹たきざわみき、よろしく」


美樹はそう言うと、部活のバレーのために教室を出た。


「ユキは追わなくていいのか?幼馴染だろー?」

塚崎が煽るが、ユキはものともしない。


「僕はミキの幼馴染だけど、そんな関係じゃない!もう…」


クラスメイト全員が笑った。しかし、コウは着いていくことは不可能だった。


その日の夜。


気持ち悪いほど生温い風が、コウの頬をくすぐった。4月だからだろうか、まだ夜は寒い。


青いお守りを首にかけ、青いスタジャンのジッパーを閉めて、黒いジーンズの歩みを進める。


夜の方が、自然エネルギーの珠を持つ輩が多いからだ。


「よー、兄さん!エネルギー珠、持ってない!?くれよー、俺エネルギー欲しいんだよー!」


路地裏で赤いスカジャンの男がやってきた。


「…なんで、俺が能力者(使徒の子)って分かった」

コウの青い瞳がキラリと光った。


「はっはーん?お前知らないなぁー?使徒の子共はそうやって瞳の膜が右回りに光るのさ!

あと、能力を使ったら瞳にひし形の模様が出来る!今お前にはないが、そんなことも知らないんじゃ、生きていけないなぁー!」


男の赤い瞳にひし形の模様が出来上がり、開かれた手の平から炎が現れた。


「覚えてから死んでいけ!俺はPの一族、『Pyrokinesisパイロキネシス』様だ!」


コウを炎が囲む。これは、能力を使わなきゃ死ぬ…コウがお守りを空に投げた、その時。


「僕達Mの一族の縄張りでイジメとカツアゲとは、随分いい度胸だね!」


コウの目の前のビルの上から声が聞こえた。


が、そこには月をバックに毛繕いをする黒い猫しかいなかった。黒猫はこちらに気づくと、ビルの上から飛び降りた。


「ね、猫かよー…Mの一族の縄張りなんて、やっぱりハッタリ…」

赤い男が安堵のため息を吐いた。が、


「遅いね!いや、僕が速いのか!」

黒猫は唐突に声の主に変身し、赤い男の腰あたりを強く蹴った。


赤い男が倒れる。声の主は赤い男が持っていた自然エネルギーの珠を奪い取った。声の主は、赤いコートを着ていて、赤い目に模様があって、黒い伊達メガネをかけ、グレーのパーカーを着ている、

「ユキ!?」

だった。


声の主はそれに振り向くと、声を震わせて、

「こ、コウ!?」

と叫んだ。

初投稿です。今シリーズ初投稿ではなくまじで初投稿です。前にも投稿しようと思ったことはありますが何言われるか怖くて投稿しませんでした。しかしもう何も考えません。よろしくお願いします。(筆者にはいつでも失踪権限があります。予めご了承ください)

話は変わりますが、ルドルフとイッパイ○ッテナってご存じですか?『トクニナニモ』とコウくんが呼ばれていたら話はだいぶコミカルですね。では失礼。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マダム気質な喜久代先生 [一言] とりあえず第一話読ませて頂きました。 文章の雰囲気は割りと好みなんですが、空行がもう少しあると読みやすい気がしました。 ゆっくりですが続きも読ませて頂…
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