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群狼

 

 

 

 

 …遂に”その時”が来た。

 

 崖下に生い茂る背の高い雑草の中で、辛抱に辛抱を重ねていた、”狼”はオーク達が”龍の頭”と呼んでいる、強力な陣形に変更した時、『自分の出番がやっと来た』そう確信した。

 

 いつもとは違う”百人隊長”の言動。いつもオークは『猪突猛進』『見敵必殺けんてきひっさつ』の精神で戦ってきた。

 それが最後の最後で、”百人隊長”が『さくせん』とか言い出した時、”狼”もまた、他のオークと同様にひどく驚いた。

 

 更に”狼”率いる三十名の若き精悍なオーク達に対する命令が、谷の出口…オーク居住地への最後の関門での『待ち伏せ』と知った時、大いに怒りを覚えた。

 

 オークの命名では珍しく、何の形容詞も付かない『狼』という名前。オークの男性は十五歳で幼名を捨て、戦士としての名前を付けられて、それを終生背負う。

 

 オークの長老は彼の顔つきを見た瞬間に、力強く頷きながら

 

 「汝の名は”狼”だ。風のように駆け、いかづちの速さで獲物を仕留めよ。…汝は”狼”そのものだ。なので、そのままに”狼”と名乗ると良い」

 

 長老の言葉を聞いた時、嬉しさで体が震えた。そして戦士として人間どもの戦いに参加し、活躍を続けていた。

 だが、戦いという大きな括りでは、オークらは途中からは敗戦を重ね、遂には『最後の戦い』にまで追い込まれていた。

 

 ”狼”は、最後の戦いは雄々しく戦いたかった。草むらの陰で平蜘蛛のように、地面にへばりついて仲間達が戦うの見ているだけなのが堪らなかった。

 

 『最終最後、”熊と踊る”と、”狼”…お前らの戦いが、決着を付ける大きな鍵となる。いいか? 『忍耐』だ、その時が来るまで飛び出すのではないぞ』


 戦い前、”百人隊長”に強く念を押され、”狼”と、彼が率いる三十名の手勢は不承不承ふしょうぶしょう頷いた。

 それから、戦いの音が沸き起こっても、飛び出して人間どもに襲い掛かりたくなる気持ちを必死で抑えつけていたのだ。

 

 ”百人隊長”の指示で、敵の前方主力からみて右翼から襲撃出来る位置に身を潜め、森の中にいる甲虫のような鎧を身に付けた兵士と、彼らを護衛する歩兵隊を観察し続けていた。

 

 『…”百人隊長”と人間のリーダーが一騎打ちを開始した…』

 

 ”深い水底の魚”の声が心に響く。彼が呪術の力を使って戦況を時々教えてくれた。実際、それがなかったら冷静さを失って飛び出してしまっていただろう。

 当然ながら、”狼”の居る場所からは一騎打ちの様子など分からない。耳を澄ませながら必死で”百人隊長”の勝利を祈った。

 

 永遠とも思える時間が経過したのち、仲間のオーク達の勝鬨が谷間をこだました。

 

 『聞こえたな?”狼”よ。準備せよ狩りの時間…』

 

 ”深い水底の魚”の声を、途中でかき消すかのような戦いの音がここまで響いてきた。

 

 (”百人隊長”が…流石は我らを導く者…)”狼”は感嘆した。そして、そっと膝立ちになりすぐに動けるように準備を始める。周りの部下達も音を立てないように細心の注意を払って、突撃準備を始める。

 

 ”熊と踊る”が率いる主力が、討伐隊との距離を少しづつ詰める。奴らは陣形をより一層緊密にし、堅い守りを維持した。

 

 ”狼”率いる手勢の仕事は、右翼から攻撃を仕掛けて相手を撹乱かくらんする事だ。だが、戦いの前に”百人隊長”から、追加の『さくせん』を伝えられた。

 

 ”…よいか?あの甲虫の如き鎧を付けた兵どもが、我らを苦しめた”龍の頭”の陣を敷いたら、”熊と踊る”は戦力を半分に分けて、おぬしと同じく、奴らにとっての”右側面”を狙う。”龍の頭”は、我らからみて左、奴らにとって右を攻められるのが弱点という事が分かったのだ”

 

 ”百人隊長”は一息つくと話を続ける。

 

 ”おぬしらは、常に付き従って甲虫どもを守っている、あの歩兵達を攻撃しろ。頼むぞ。あの歩兵達が自分たちの仕事が出来なくなったら、”龍の頭”は龍では無く”川魚の頭”同然だ。そして、なぜそう言えるか…一番間近で見る、お前にはその理由が分かるだろう…”

 

 …”百人隊長”は謎のような言葉を発した。甲虫どもの横には、それを守護する歩兵どもが警戒している。”熊と踊る”は注意深く距離を詰めていく。

 

 その時、甲虫共が一気に陣形を変えた。あの重たい防具を付けているのが信じられないくらい鮮やかな動きだった。装具の音を一度だけ大きく響かせ…

 

 (来た…きやがった! ”龍の頭”だ…!)

 

 盾を隙間なく並べた、甲虫か甲殻類のような鎧を着た奴ら…遠目からみると、それはまさに、伝説の神獣、ドラゴンの頭部を思わせた。

 

 ”熊と踊る”は、それを見るとすぐさま隊を二手に分ける。片方は正面から、もう一方は、左に移動して奴らの右側面を狙う。

 

 (…まだだ、もう少し待て…)

 

 ”狼”は、部下に命令を飛ばして、突撃のタイミングを計る。…その時、信じられないことが起きた。

 自分の眼前で、警戒の姿勢を取っていた歩兵隊が、その場から移動したのだ。どうやら戦力の足りない応援に駆り出されたようだ。

 

 そして、その歩兵隊が姿を消し、”龍の頭”の右側面が”狼”の眼前に晒された時、彼は思わず呻いた。

 

 (そうか…そういう事だったのか…。なんと単純な事。無敵と思われた”龍の頭”は、これほどまでに脆弱な弱みを抱えていたのか…)

 

 そんな思いに駆られたのも一瞬だった。周りの部下も”龍の頭”の弱点に気が付き、”狼”の突撃命令を今や遅しの勢いで待ちわびている。

 

 (よし…お前ら…行け! 龍の右頬を食い破ってやれ!!!)

 

 そう命令すると、”狼”を含む三十名のオークが、引き絞られた弓から放たれた矢のように茂みから飛び出すと、重装歩兵隊の右側面を襲撃した。

 

 

 

 

 その姿はまさに群狼そのものだった。

先日、再プレイしたくて「skyrim」をPCにインストール

してしまいました…


もともと、一本道RPGがあまり好きでないので、”「オープン

ワールドRPG」の一つの完成系”と評価されているこのゲームは

自分にとって最高に面白く、文字通り寝食忘れてプレイしました


確かプレイ時間は四年で二千時間とか…それくらいやっていました。


現在は最低限のMODを組み込んで、久々のスカイリムを楽しんで

いますが、「散歩して遺跡巡りするだけで楽しい」という、或る

意味危険なゲームなので、なるべくプレイせずに更新していきたい

と思っています。


ちなみにお気づきとは思いますが、この作品に出てくるオークは

スカイリムに出てくるオークをイメージしています…


話は変わりまして…

最近、読んで頂ける方が多く、感謝しています。本当に励みに

なります。ありがとうございます!


ゲームはせずに、作品を完結させたいと思っています。



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