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ヴィジョン

 その時だった。脳内に、ある風景が奔流のように流れ込んできた。緑色の逞しい腕が目の前にある。さっき見た鉄製の籠手だ。古びているが油を差し見事に研ぎあげられた両手剣を握りしめている。

 

 (これ……記憶か?自分が知らない……オークの記憶か?)

 

 周りには武装したオーク達が牙を剥き出し、武器をふるっている。戦っている相手は……人間だ。

 人間達もまた、中世ヨーロッパ風の鎧を身につけ剣や手斧を振りかざしている。一般の兵は、キルトアーマーや皮鎧などの粗末な鎧だが、騎乗している上級そうな……騎士? そう騎士だ。……彼らは、博物館やネットで見かけたような金属製の鎧を身に纏っている。

 

 オーク達は、殆どが下半身だけを隠した半裸。たまにボロボロの皮鎧を身に付けている程度。人間達が持っている武器に比較して数段見劣りする武器を持ち、それでも必死に戦っていた。

 

 身体能力ではオークの方が上だ……だが、眼前に広がるイメージを見ていると、或る事に気が付く。

 

 オーク達は、陣形すら維持する事をせず好き勝手に人間達に斬りかかる。人間達は強固な円形陣を組み、徹底した相互防御で協同で戦っている。オーク一人に対して人間二名以上。その思想は徹底していた。

 

 オークが一人の兵に斬りかかる。攻撃を受けた人間の兵は盾を使い徹底的に防御に専念する。隙を見て別の兵がオークを仕留める。それを見て逆上したオークが単身突っ込み、別の兵に切り倒される。

 

 お互いの陣形が崩れ、入り乱れる乱戦状態になればオークの持ち味である身体能力が生かせるだろう。だが、人間達は冷静だった。オークの迫力に顔を強張らせつつも、しっかり踏みとどまり、陣形を崩さずその場で戦っていた。

 

 ……その時、イメージの中で視線が動いた。円形防御ラインの内側に視点が変わる。内側には騎士達が剣を振りながら兵達を指揮している。

 その中に、流麗なデザインの鎧を付けた一人の騎士が居た。横には女性の騎士もいる。騎士は兜を被っていない。顔が見える。

 

 英俊はギョッとした。

 

 イメージの中のそいつの顔を凝視する。間違いない……。間違いない……。

 

 深馬ふかうま 啓亜けいあだ。

 

 (なんであいつが居る?あいつも……これが夢ではないなら……あいつもこの世界に跳ばされて来たのか?)

 

 そして、その横で深馬を援護する女性騎士……なんとなく予感はしたが……。

 

 (やっぱり……粟國あわくに 夢夏ゆめかだ……)

 

 英俊……いや、クラスに君臨する皇帝と女帝。この二人がオーク討伐隊に参加し……更に隊長として戦っているのか……。

 

 (なんか、時空が少し揺らいだのか……あいつらの方が早くこの世界に来たみたいだな)英俊は思った。

 

 二人が異世界で信頼を勝ち得て、オーク討伐隊の指揮官になっている。こちらは今、オークとして目覚めたばかりだ。時間的な誤差が少しあるようだ。

 

 視点は、深馬に固定されたまま動かない。英俊はもう気が付いていた。先程の脳内に響いた声から。

 

 (俺はオーク"百人隊長"の身体に転移?憑依?したんだ。このオークは、『鷹の舞う地』の戦いで戦死した。そして……たぶん、この戦いが『鷹の舞う地』の戦いの記憶なんだ)

 

 突然、イメージが上下に激しく動く。円形防御を敷いた兵の姿が、眼前に迫る。百人隊長が突撃したのだ。それを見た護衛のオーク達も一緒に走り出す。

 

 (無謀だ)結末が分かっていても、思わず英俊は心の中で叫んだ。

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