贄とまだ知らぬ龍 後日談 龍の知る光
穴蔵の光たちも広い世界へ旅だった。
植物たちも静かに育ち、根をはって、塞がれた世界の支えとなる。
そして、その楽園から去った彼らはといえば...。
自由になった少女と龍は、共に世界を見て渡っていた。
「そろそろ、暗くなってきましたね。」
龍と共に過ごしてきた彼女にとって、森の中で夜明けを待つのは苦ではない。
しかしながら、何も見えない暗闇には今だ慣れてはいなかった。
龍の巣穴でさえ光る虫が飛んでいたし、野党やらに教われる危険性は無かったのだ。
「眠るか?では、我の側に寄るといい。」
龍言われるがまま、そっと寄り添う。
それだけで安心できるというものなのに。
ほんのりと、優しい光が現れる。
それは、龍から発せられたものだった。
「いつも、ありがとうございます。」
「安らかな顔が拝めるのなら、この程度。」
この頃は眠れるまで、微かな光を見せてくれるようになっていた。
少女は嬉しく思いつつも、なんとなく不思議に思ったことがある。
「それにしても、どうして出会った時には自ら光らなかったんです?」
「む?そ、それは、だな。何から話せば良いものか。」
龍は気まずそうに、口ごもる。
「夜目が効くことは知ってるな?」
「はい。そういう種族の龍なんですよね。」
だからこそ、少女と初めて出会うまでは真っ暗闇の中で暮らしていたし。
暗闇で過ごしていたのを忘れていたので、少女の目が見えない理由に気づかずに目の前で尻尾を揺らしてみたりしたのだが。
「だから本来、このような能力は必要ない。」
「火も、吹けますもんね。」
「で、あるからして。こんな能力を使うとすれば威嚇か、もしくは...。」
ごほん、と何かを誤魔化すように咳をして、龍は再び少女を見た。
「求婚、の時だけなのだよ。」
一瞬だけ、強く発光された龍の体。
少女は、しばらく黙って見つめると。
「では、周囲を威嚇してくれていると?」
と言うものだから龍は嘆いた。
そんな龍の心情を知ってか知らずか。
少女は側で楽しそうに笑いながら眠りにつくのであった。
微かに、龍の鱗を輝かせながら。
後日談にて、森の暗闇での過ごし方です。
夜目が効くとはいえ森の中での火吹きは危ないのもあって、発光するようなりました。
威嚇の時とは光り方も色も違います。