復興のために
あれから数日後、瓦礫の山と化した街にて、和沙は清掃のボランティアをしていた。その場には梨桜も居合わせている。二人は、建物の残骸を片付けつつ話をした。
「なあ、梨桜」
「なんだ?」
「お前は、僕の命で罪を償ってもらうと言っていたな。僕は、死んで罪を償うべきなんだろうか。それとも、生きて罪を償うべきなんだろうか」
そう尋ねた和沙は、どこかかげりのある表情をしていた。梨桜は少し考え、彼女の質問に答えた。
「…………今は生きて償って、いずれ寿命で死んで償えば良いと思う。もし死ぬことが間違いだったら、取り返しのつかないことになるからな」
その声色は暖かく、優しさに満ちていた。
「そっか…………そうだよな」
和沙は少し安心したよう微笑みを浮かべ、雲一つない青空に目を遣った。
(美希…………空の向こうでも、元気にしてるか? 僕にはもう美希を守ることは出来ないけれど、一人でも大丈夫か? 僕のことなら心配は要らないよ。僕、新しい親友が出来たんだ)
廃墟の街は、燃え盛るような太陽に照らされていた。
*
一方、生存者の集う仮設住宅では――――飯塚祐介という少年が母親とともにポークカレーを配っていた。そう、彼はちょきんぶぅから「毎日冷蔵庫に可食期間内のカレーライスが三皿追加される」という願い事を買った肥満児だ。
(やっぱり、カレーは皆で食べるものだね)
カレーライスを美味しそうに食べる人々を前に、彼は屈託のない笑顔を浮かべていた。彼の配るポークカレーは、被災者たちの間でも大好評だ。
「体が芯から温まるような感覚だ!」
「後からピリっとくる辛さだね。クセになりそうだよ」
「煮込まれた野菜の舌触りに、ふっくらと炊きあがったお米…………そしてスパイスの利いた滑らかで上質なルウ。何を取っても絶品ですね」
彼らは皆、満足感に満ちた顔でカレーライスを味わっていった。
*
同じ頃、比較的被害の少ない街の一角では、一組の男女がゴミを拾い集めていた。一人は八角泰三――――ちょきんぶぅから「身の回りのことをなんでも無償でしてくれる存在を所有出来る」という願い事を買った少年だ。もう一人はメアリー――――彼女は「誰かに必要とされる」という願い事を買ったことでそういう存在に生まれ変わった少女である。
泰造は少し気怠そうだった。
「全く、メアリーも面倒くさいものに興味を持つもんだな。被災地でゴミ拾いのボランティアだなんて」
彼はそう言いつつも、メアリーとともにボランティア活動に没頭していた。メアリーは無邪気に笑った。
「それは タイゾーが かなしいを おしえてくれたからです ひさいしゃの かたがたは かなしいです わたしは かれらの ちからに なりたいです」
彼女は少しよろけながらも、小さな体で一生懸命に重い袋を抱えている。そんな彼女の頭を優しく撫で、泰造も笑顔を見せた。
「…………ま、それもそうだよな。それに、ちょっと掃除を手伝うだけの俺たちなんかより、あの化け物の被害を受けた人たちの方がよっぽど面倒くさくてつらい思いをしてるだろうしな」
「わたしは みなさまに ひつようと されているでしょうか」
「もちろんだよ。ここにいる人たちは皆、メアリーのことを必要としてる」
「うれしいです」
「そっか、嬉しいか。お前をここに連れてきて良かったよ」
二人は日が暮れるまでゴミを拾い続けた。
*
和沙が金を集めるのをやめて以来、日本は少し平和になった。しかし、ちょきんぶぅたちは今日もどこかで願い事を売り歩いている。




