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ちょきんぶぅ  作者: やばくない奴
傲慢編
30/31

大願成就

 和沙(かずさ)が願い事を叶えた時、梨桜(りお)も彼女の自宅に到着していた。彼女は短剣を構えつつ、じりじりとガレージに詰め寄っていった。その時、ガレージの窓や入り口の隙間からは眩しい光が漏れだした。

(超能力で覗いたアイツの記憶を頼りにここまで来たが…………手遅れだったか。白尾和沙(はくびかずさ)は、ついに柊木美希(ひいらぎみき)を蘇らせてしまった………………!)

 彼女はガレージの戸を勢いよく開け、和沙の後ろ姿を目にした。



「和沙…………?」



 梨桜は息を呑んだ。彼女の目に映った和沙の背中は、力なく震えていたのだ。その奥には、肉の塊のような何かが倒れていた。それはよく見ると一人の少女だが、全身は焼けただれ四肢は腐り落ち、左目は潰れていた。そればかりか、彼女は声にならないうめき声を漏らしながら唾液を垂れ流しているのだ。

「アゥア……マ…………ア………………」

 少女の右目は、まるで「殺して欲しい」と訴えるかのような眼差しをしていた。



 そんな彼女の前に項垂れつつ、和沙は泣いていた。



 大型ちょきんぶぅは状況を説明した。

「約束通り、火災で絶命した柊木美希を生き返らせたぶぅ。これで、彼女は焼け死ぬ前の、焼けて死にそうになっている状態に戻ったぶぅ」


 無論、その言い分は和沙にとって納得のいくものではなかった。


「何が『生き返らせた』だ…………こんなの、いくらなんでも酷すぎるだろ………………」

「全ては君自身が望んだことだぶぅ。他人の命を独断で蘇らせようだなんて、あまりにも傲慢な考えだぶぅ」

「お前は……本当に無責任な奴だな…………ちょきんぶぅ」



 彼女は手に持っていたバールを渾身の力で振り下ろし、大型ちょきんぶぅを粉砕した。



 そいつの体が粉々に砕け散ると同時に、その中からはたくさんの紙幣と硬貨が溢れ出した。

「ごめんな…………美希……………………」

 和沙はか細い声で呟き、その場にうずくまった。彼女の瞳は、大粒の涙をこぼしていた。



 その一部始終を見ていた梨桜は、念力を使って短剣を飛来させた。短剣は、まるで透明人間に振り回されているような動きで美希の体を切り刻んでいった。

「!?」

 和沙は目を疑った。しかし、もはや彼女の瞳からは戦意が失われていた。そんな彼女にハンカチを手渡し、梨桜は美希を殺した真意を語った。

「…………私を恨みたければ、恨めば良い。だが、私が柊木美希の心を読んだところ、アイツは死ぬことを望んでいた」

「…………」

「あの醜い体で、それも虫の息で生きていくことは、アイツにとっては何の救いにもならないだろう。だが、お前の手で親友を殺させるのはあまりにも酷な話だと思った。この決断が正しいか否かは、私にもわからない」

 この時、彼女は自らの行いが責められることを覚悟していた。自分が憎まれることも覚悟していた。



――――しかし、和沙の反応は予想に反したものであった。



「ありがとう……親友を殺してくれて…………ありがとう………………」



 彼女が口にしたのは、感謝の言葉だった。



「和沙…………」



 梨桜は和沙を抱き寄せ、彼女の頭をいつまでも撫で続けた。

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