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ちょきんぶぅ  作者: やばくない奴
傲慢編
27/31

魔境

「あれ……ここは…………?」



 和沙(かずさ)の前には魔界のような荒野が広がっていた。そこにはサービスエリアも街の瓦礫も無い。彼女の見渡す限り、その周囲にあるのは何本かの糸杉の枯れ木と地面に散らばった人骨と、空を舞うコウモリやカラスだけだった。

(これは悪い夢なのか? それとも、僕は死んだのか?)

 現状を吞みきれないまま、彼女は宛もなく荒野をさまよう。強い風に真っ白な頭髪をなびかせ、彼女はただただ歩みを進める。



 そんな和沙の目の前に、一体の死神が現れた。



 そいつは黒いローブを着た骸骨で、手に大きな鎌を持っていた。そいつは凄まじい速さで和沙に詰め寄り、彼女の首を刈り取ろうとした。

(どうやら、アイツは僕をあの世に連れ去ろうとしているらしいな)

 彼女はしゃがんで鎌をかわし、そのまま死神の足元を潜り抜けてそいつの背後を取った。次に、和沙は両手で全身を支えつつ、そいつの背中を勢いよく蹴り上げようとした。死神は咄嗟に鎌を振り下ろし、彼女の蹴りを受け止めた。しかし、鎌の刃は和沙の脚力に耐え切れずに大破した。

「僕は……神にさえ守ることの出来なかった美希(みき)を一人で守ってきた。僕は負けない…………神にも、死神にも」

 和沙は死神のローブについているフードを手に取り、そのまま死神を地面に叩きつけた。彼女はすぐにその上にまたがり、そいつの顔面を何度も叩き割った。しかし、死神の頭部は破壊される度に再生を繰り返していく。その上、死神は一度姿を消し、彼女の背後にもう一度姿を現した。そいつの手元には、新しい鎌も生成されていた。どうやら、この死神を殺せる手立ては無さそうだ。



 死神は和沙の首を切り落とした。



 しかし、彼女の首はもう一度繋がった。



 和沙は余裕綽々としていた。

(体が軽い…………いや、むしろ今の僕に体なんかない。今の僕にあるのは、質量のある肉体じゃなくて不定形の霊魂なんだ。今なら、なんでも出来そうな気がする…………!)

 突如、彼女の目は赤く光った。それと同時に、彼女の背中からは純白の大きな翼が六枚生えた。

(やっぱりだ。霊魂は人間の精神の実体――――この魔境においては、精神力や想像力こそが全てだ)

 和沙の魂から溢れ出す莫大なエネルギーにより、その周囲にある木々や人骨は灰と化していった。彼女は六枚の翼で上空へと飛び立ち、荒野を見渡した。



「死神を殺すことが不可能ならば、僕はこの魔境を破壊するだけだ」



 そう言い放った彼女の手元には、宝石のようなものをいくつも埋め込まれた杖が生み出される。その表面には、未知の言語や記号のような彫刻が施されている。そして、彼女が杖を振ると同時に――――



――――荒野は眩い光に包まれた。



「例え神に運命の刃を突き付けられようと、人類にはそれをへし折る力がある。僕の未来を掴み取れるのは、僕の意志だけだ」



 和沙が「魔境」と呼んだその世界は、一瞬にして消滅した。



     *



 やがて彼女は目を覚ました。その背中には、もう翼は生えていなかった。彼女の周囲は灼熱の炎に包まれており、当然ながら酸素も薄かった。

(体に…………痛みや熱さを感じる。どうやら、僕は戻ってこれたようだな)

 白尾和沙(はくびかずさ)は死の淵から舞い戻った。

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