白と黒
しばらくして、崩れ行く街には二人の美少女が現れた。一人は白い髪で白いパーカー、もう一人は黒い髪で黒いオフショルダーのワンピースを着ていた。ついにこの二人が出会ったようだ。
黒髪の少女は念力で瓦礫を集め、それを防壁にしつつ逃げ惑う人々を守っていく。
「あなたたちの命は、私が保証する。この世界では、裁かれるべき命ばかりが生き延び、罪のない命ばかりが失われるけれど…………私は死ぬまでそんな世界に抗うつもりだから」
「あ……あなたは…………?」
「私は『法で裁けない悪』に父親を殺され、ちょきんぶぅとの契約で法を代行するための力を得た者だ。ちょきんぶぅが実在することの証拠は、こうして私が超能力を使えていることとあんな化け物が存在していることだけで充分だろう」
彼女は軽く自己紹介をしつつ、倒れてくる高層ビルや怪物の投げてくる大型トラックを念力で止めた。それから、黒髪の少女は高層ビルの断片や大型トラックをゆっくりと地面に降ろす。
(次から次へと街が破壊されていく…………私の超能力をもってしても、人々を守るのがやっとだ………………)
彼女は人命救助に専念した。
その一方で、白い髪の方の少女は化け物と正面から戦っていた。彼女に超能力はないが、その身体能力は常軌を逸していた。壁も地面も瓦礫もワイヤーも――――――形あるものの全てが彼女にとっての足場だ。その挙動はさながら忍者のようでもある。白い髪の少女は様々な体勢で宙を舞いつつ、化け物の攻撃をかわしていく。そして、彼女自身もまた目の前の怪物に打撃や蹴りを入れていくのだ。
彼女の立ち回りを物陰から見守りつつ、黒髪の少女は思わず生唾を飲んだ。
(肉眼で見れば、アイツは一度に一撃ずつの打撃や足技を与えているだけにしか見えない。けど、超能力でアイツやあの化け物の五感を読み取ってみると…………白いパーカーを着たアイツがたった1/10秒間の間に十発前後の攻撃を当てていることがわかる。そして、その一発一発は、銃弾を全く通さなかったあの怪物の肉体を確実に抉っている…………!)
――――超能力者の少女が感じ取ったものは間違いではない。白い髪の少女は、常人の動体視力では追跡出来ない速さで動いている。しかし、化け物の方もまた相変わらず強い。
「縺シ縺上r縲?縺薙m縺励※」
化け物は地面を思い切り踏みつけ、大きな地震を引き起こした。
「…………!」
白い髪の少女は身動きがままならず、大地の震動で崩れ落ちていく建物の中に呑まれていった。彼女の頬や手足を、ガラスの破片が切りつけていった。その隙を突き、怪物は容赦なく少女に襲いかかった。そいつの大きな拳は、彼女を瓦礫ごと地面に叩きつけた。その衝撃により、廃墟の街は大きくくぼんだ。
人々を避難させつつ、黒い髪の少女は超能力で現状を把握した。
(今の一撃で、あの少女のあばら骨は間違いなく粉砕した。それと同時に、かなり出血もしたようだな。あの状態では、アイツの命ももたないだろう。ここは、私が戦うしか――――――)
彼女はそう思い、化け物の方へと向かおうとした。
しかし、白い髪の少女は、何食わぬ顔で瓦礫の中から飛び出してきた。彼女は自らの血を全身に浴びていたが、決して戦意を失いはしなかった。
彼女はそのまま踵を振り下ろし、怪物の片目を勢いよく潰した。
「逞帙>繧医??蜉ゥ縺代※」
化け物はうめき声をあげ、更に暴走し始めた。白い髪の少女は近くに落ちていた電柱を両腕で持ち上げ、それを怪物めがけて思いきり振り下ろした。しかし、電柱は怪物の鋼の肉体によって砕け散ってしまった。しかし、白い髪の少女が勝利を諦めることはない。
(僕は…………美希のためにも死ぬわけにはいかない。そして、これ以上ちょきんぶぅや未成年者を殺されたら、僕の計画は失敗に終わってしまう…………!)
彼女は咳とともに吐血し、怪物の方へと突っ込んでいった。
その勇姿に、超能力者の少女は度肝を抜かれていた。彼女はすぐに超能力を使い、白い髪の少女の心を読むことで状況を確認した。
(なるほど。アイツ……体は細いが、インナーマッスルがかなり鍛え上げられているようだな。まさか筋肉の力だけで自分の血を止め、気合いだけで意識を保つとは…………常人なら、間違いなくとっくに死んでいるはずだ)
白い髪の少女は、自衛隊でも太刀打ちの出来なかった化け物と一人で渡り合っている。




