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ちょきんぶぅ  作者: やばくない奴
嫉妬編
13/31

平等かつ無慈悲な殺戮

 翌朝、学校では街を破壊した化け物のことが話題になっていた。あの出来事は新聞やニュースでも取り上げられ、日本中を震撼させたようだ。あの化け物の正体が神子柴聖也(みこしばせいや)であると思う者など誰一人としていないだろう。



 ただ一人、彼を怪物に変えてしまった張本人を除けば。



(ははは…………ちょきんぶぅもずいぶん良い仕事するじゃん。あの化け物、神子柴聖也なんだろ? アイツが俺より幸せな連中をぶっ殺してくれるんだろ? どんなに才能や財力や美貌を持て余した連中も、どうせ死ねば骨しか残らない。大阪には子供を八人殺して死刑になった奴もいたけど、俺はどんなに人を殺しても裁かれないんだ!)

秀平(しゅうへい)はすっかりご機嫌だ。彼は携帯電話を使い、宅間守(たくままもる)という犯罪者について調べていた。

(自分みたいにアホで将来に何の展望もない人間に、家が安定した裕福な子供でもわずか五分、十分で殺される不条理さを世の中にわからせたかった――――か。宅間守…………俺はお前を尊敬するよ。自分の命を投げてまで、温室育ちのいけ好かない連中を殺してくれたんだから)

宅間守とは、かつて死刑にされる覚悟で罪のない小学生を八人殺害し、法廷で被害者の遺族の神経を逆なでするような演説をした男だ。彼は元々自殺を考えていたが、そのついでに世界に対する復讐心を晴らそうと考えて犯行に及んだという。秀平は、そんな男に自分を重ねていた。



 何を隠そう、秀平もまたこの世界を憎んでいるのだ。



(俺はずっと誰にも勝てなかったし、澤島(さわじま)先生以外の誰もが俺を邪険に扱ってきたんだ。努力をしても誰にも労われないし、どんなに女子に優しくしても顔の良いだけの奴が女子をかっさらっていくし、俺という存在が認められたことなんか一度だってない。世界は俺を迫害してきたんだ…………今度は俺の番だろ?)

物心のついた頃から、彼はずっと劣等感を抱えて生きてきた。嫉妬と憎しみの渦に溺れ、彼はずっともがき苦しんできたのだ。彼は聖也が怪物に成り果てたことに心から喜んでいたが、その魔の手が自分に及ぶことなど全く考えていなかった。



 朝のホームルームでは、たくさんの生徒や教員の死が報告された。あろうことか、秀平が最も慕っていた澤島も昨晩死亡したらしい。彼の訃報を聞き、秀平は愕然とした。クラス中の人々が、昨日命を落とした人々に黙祷を捧げた。

(そんな…………澤島先生が………………)

秀平は澤島の死を名残惜しく思い、彼の死を心から弔った。



     *



 夕方――――秀平は瓦礫だらけの帰り道を歩いていた。彼が学校にいる間にも、あの化け物は街を破壊して回っていたらしい。



 やがて、秀平は自宅のあったはずの場所に辿り着いた。そこには猛火をまとった民家の残骸の山があり、その近くには下半身の消し飛んだ中年女性の遺体が転がっていた。

「母さん…………?」

 秀平は言葉を失った。彼の目の前の上半身だけの死体は、まぎれもなく彼の実母のものであった。彼は母親を失い、帰る場所も失った。

「ふざけんな…………母さんを返せ! 澤島先生を返せよ! 俺はただ、この世界が憎かっただけなんだ!」

 彼の悲痛な叫びは、黒い煙に覆われた空に響き渡った。そんな彼の背後に、「鬼」が現れた。



 そう、彼の願い事によって鬼と化した――――「元」神子柴聖也が。



「菴薙′逞帙>縲?蜉ゥ縺代※」



 化け物は秀平の体を掴んだ。彼の肉体は、一瞬にして砕け散った。

「縺?繧後°縲?縺溘☆縺代※」

 かつて神子柴聖也だった「それ」は、今となっては災害そのものといっても過言ではない。聖也は完全に自我を失い、形あるものを破壊し続けるだけの存在と成り果ててしまった。誰もが「自分は二日後に死ぬ」ということを予想しなかった街で、不特定多数の命がたったの二日間で失われたのだ。

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