一
その竜は、一人ぼっちでした。
ついさっき友達と別れたから、一人ぼっちなのではありません。
生まれてこのかた、ずうっと一人ぼっち。正真正銘、生粋の一人ぼっちなのです。
とてもとても強い竜でした。何せとてつもなく大きかったのです。
硬いうろこがぴかぴか光っていましたし、こうもりのような大きなツバサも持っていました。とげの生えた尻尾は太くて長くて、まるで丸太のよう。
耳まで裂けた大きな口からは真っ赤な火を吹くこともできたのでした。
だから、竜には怖いものなんか、全くもってこれっぽっちもありません。それなのに、竜は淋しくて淋しくて仕方がありませんでした。
ちょっと考えてみてください。
あなたが一人ぼっちで泣いていたら「あらあら、淋しかったのね」と言われるでしょう。
あなたは「ああ、私は淋しいのだ」と覚えます。
ぎゅっと抱きしめてもらえるかもしれません。優しくお話をしてもらえるかもしれませんね。
そしてあなたは淋しいときには、誰かにそばに居てもらえばいいと覚えるのです。
でも、この竜は生まれてこのかた、正真正銘、生粋の一人ぼっちなのですから、淋しいということがわかりません。淋しいときにどうすればいいいのかもわからないのです。
あなたもご存知でしょう? 淋しいという気持ちはいやあなものです。
手がぴりぴりと痺れてきます。じっとしていられなくなってうろうろ歩き回る人も居ます。
布団をざんぶりと頭までかぶって、じいっと動かない人も居ます。
淋しすぎて、ぷんぷんと怒り出し、物を投げたりする人さえ居ます。
でも、誰であってもそのうちに、鼻の奥がつうんとして、涙がぽちんと落ちてきます。
竜は時々やって来る、この「いやあな気持ち」が大大大大大嫌いでした。