夫婦円満の秘訣
離婚率30%
私がこの数字を見た時、ふと「うちの両親はどうなのか?」と疑問が浮かび母に聞いてみることにした。
母は電話口に
「忍耐」
と簡潔に述べるのみであった。確かに結婚生活は「忍耐」とよく言われるが、その言葉は私に何とも言えない違和感を残した。
そんなおり、実家に帰ることになった。
私は、この機会に違和感の解消ができないかと父と母を観察することにした。
滞在期間は4日間。
『観察1日目』
今日は、母と買い物に出かける。
父は仕事の飲み会で帰りが遅く母は少しあきれていた。
「忍耐」と言うか、実に「無関心」な感じ。
『観察2日目』
今日は、父も早く帰ってきて食事をする。
私の近況報告や、同級生の結婚などの話をした。
酒が進む父に対する母の目線は実に冷ややかな感じ。
『観察3日目』
今日は、父も休みなので家族で買い物に出かける。
私と母が調味料などの買い物をしている中、父は母の目を盗み、そそくさ先にペットボトルの焼酎を購入した。
帰ってから、それを見つけた母は実に不愉快な感じ。
『観察4日目』
今日は、母と一緒にいつもよりも多く夕飯を作る。
少し気になるとしたら――昨日の母の感じだけ。
食事時。
父は実に楽しそうに昨日買ってきた焼酎に口をつけ・・・・・・・・・・・・・・・・・
吹いた。
食卓が水浸しになり、酢の臭いが充満する。
母はシニカルな笑みを浮かべつつ、まったく同じ料理と皿を交換していく。
笑みを浮かべつつ食べる母。
笑みが失せ無言で食べる父。
唖然となり黙々と食べる私。
そこからの食事は実に混沌としているものとなった。
『観察終了』
私は帰る際にまた母に聞くことにした。
「結婚って何が必要なのかな?」
訝しみながら聞く私に母は言う。
「忍耐だよ、忍耐」
そういう母は満面の笑みだった。
帰り道、私は考える。
夫婦円満の秘訣は「忍耐」ではなく「適度な刺激」なのかもしれないと。
『後日』
父はそれから、ペットボトルの焼酎ではなく缶のビールを買うようになったらしい。