第9夜 幼馴染とゲーム
さあ、この物語のヒロインの登場だ!!
注)ヒロインはセラです。
「......静かにしててくださいね?」
「....わかった」
セラはこくりと頷いた。
あ、.....アイツと約束したの今日だった.....。
宅急便とかだったらなー。
「大河ー!」
ドアを開けると案の定首筋にかかる程度の髪を風で揺らしている幼馴染の姿があった。
コイツの名前は小鳥遊 翼。
同い年で家族ぐるみの付き合いだったから親友というか兄弟というか.....。
顔は可愛らしく、勉強も運動(球技は苦手)もでき、ラノベみたいなお約束もない。むしろ上手だ。(そりゃ、僕の家事の師匠が母親だもの)
まさしく才色兼備。
テンプレ通りなら成長した僕と翼は恋人になるのだろう。
きっと僕の両親が死んでなかったら両方の両親から祝福されるだろう。
ーー翼が男で無かったらな!!
女子に混じっていて違和感がなくても男だ。
声が若干高めで、小柄で、髪がショートでも男だ。
いくら女子にしか見えなくても男だ。
「....なんか失礼な事考えてない?」
「いや、何も?」
新しいゲームが出たから買って、その話を翼にしたところ、やりたいと言ったから、じゃあ土曜日来いよと、いう話になってこうなっている。
まあ、あいつらがいるのは2階の奥だしな。
ほんの数時間だ。バレはしないだろ?
「そういえばさ」
「うん?」
「昨日はなんか賑やかだったよね」
......ポーカーフェース、いや、飽くまでも自然体、自然体。
「ああ、ちょっと友達呼んだんだ」
「女の子の声がした気がしたんだけど.....」
「あっ!?」
画面の中で僕が動かしていた戦闘機が撃墜された。
「あれ、珍しいね。こういうゲームで大河がコンピューターに負けるなんて」
「話ながらだからかな?」
もうすぐ冬だと言うのに若干背中が汗ばんでいる。
「....前に一回、高難度のステージをしりとりしながら殆ど無傷でクリアしてなかった?」
僕は無言で残機を減らして復帰した。
「もしかして、しりとり以上に僕との話に神経を使っているのかな?」
機銃を被弾しながら反撃で放ったミサイルで敵機を撃墜する翼。
「ねぇ、これって対戦モードあるんだよね?」
30分くらいやった頃だろうか?
翼がそう聞いてきた。
「やるのか?負けないよ!」
「やだなあ、いくら大河でも上の空だったら勝てないよ」
からかうような調子でそう言った後、翼はそれなりに真剣な顔になって言った。
「心配事でもあるの?僕にできる事だったら協力するよ?」
「....何もないよ、いつも通りさ」
翼はため息を吐いた。
「何年一緒にいると思ってるの?大河は今困ってるのは手に取るように分かるよ?話せば、楽になるかもよ?」
「........」
僕はその言葉に無言のミサイルで返した。
「ええっ!?ちょっとなんで勝手に始めてるの!?」
「上の空の相手に勝つのは簡単だね」
笑いながら言うと
「よし、次は勝つ。早く次の対戦の設定をしてよ」
翼が若干ムキになった声で返してきた。
「............」
翼が思いっきり凹んでいる。
あの後6戦くらいやったが、一回も僕に勝てなかったからだ。
「はは、またね!」
「......うん」
笑いながら見送ると沈んだ声で返事が返ってきた。