第3夜 家族じゃなくて居候だから...。
「....えっ?」
気がつくと首筋に鋭い痛みが走った。
首を抑えてしゃがみこむと、獣耳の少女が銀髪の少女の口に指を含ませていた。
「なっ、何を.....」
「だから言っているじゃないですか、これが私の友達を助けるためにアナタのできる事ですよ」
「ぐっ!?」
は、早い...?!
今度は頬に赤い筋ができた。
少女はまた指を倒れた子に含ませている。
「な、何を.....?」
「見ての通り血を飲ませてるんです」
.....考えたく無かった。そもそも実在するのか?
「う、ううっ」
ーー吸血鬼なんて....。
....って、起き上がった!?
少女は真っ白だった。
肌はもちろん、髪の毛も銀色だ。
唯一、瞳だけが煌々と紅く輝いている。
年はーー僕と同年代の女子と同じくらいに見えた。
顔は美少女と言っても差し支えないだろう。
残念ながら盛り上がるべきところが平らだ。
だが今は、そんな事はどうでもいい。
「なんで、こうなった......」
居座られた。大事な事だからもう一度、居座られた。
片や獣耳の少女、もう一方は真っ白な美少女。
.....バンパイアだからどうのこうので、病院に行けないから居候させてくれとの事だ。
全く、僕に家族が居たらどう説得するつもりだったんだ。
僕に丸投げ?....あり得るから怖い。
とりあえず、獣耳の少女の力は異常だ。
これじゃ、普通と真逆じゃないか。
男を力で屈服させる女....うん、シュールだ。
「で、あの子は本当にバンパイアなの?」
「だからそうだって言ってるじゃないですか」
居候の件はもう諦めた。とりあえず呼び方がわからないと困るから名前を聞くと
黒髪に獣耳の方がフェット・ミア・ユーナ....うん、明らかに日本人の名前じゃないね。
で、ミア曰くバンパイアらしい子は天宮 世良というらしい。
見た目はさて置き、名前は普通.....なのか?
肝心の本人は僕が(汚れていい)タオルでグルグル巻きにしてソファーに転がしてある。
....扱いが雑?だって血塗れだよ?
ソファーとか布団とか汚れるじゃないか。
「で、君は何?耳とか力とか明らかに普通じゃないよね?」
「あはは〜、やっぱ分かっちゃいます?」
....これでおかしいって思わない方がおかしいから。
「で、何?」
「狼です。ガオ〜!!」
「こんな可愛らしい狼がいてたまるか」
何となく額をこつく。
「痛っ、うう〜」
頭を抱えてうずくまるミア。
.....狼じゃなくて小動物だろ、コレ。
「....!フェット..!?...ギャァ!?」
「セラさん!?まだ寝てなきゃダメです!」
ミアのさっきの声で跳ね起きるセラ。
でも、彼女の体は傷だらけな訳で....あーあ、もうあのタオル使い物にならないな。
「せっかく大河さんが血を分けてくれたのにこれじゃ意味ないじゃないですか!」
「いや、お前が勝手に持ってったんだろ!?」
....言い忘れていたが、僕は星原 大河。よろしく。