第2夜 血塗れの天使
....とりあえず、時間を少し巻き戻そう。
帰り道を急ぐ僕に話しかけてきた女の子がいた。
「ごめんなさい!ちょっといいですか?」
....獣耳?
話しかけてきた中学生くらいの子は銀色の獣耳を付けていた。
正直黒髪とミスマッチだ。色合い的に。
「...何?急いでるんだけど?」
よく見ると、彼女の服装はーーなんだか異様に感じられた。
女子のファッションというものはわからない(正直言って興味もない)けど、なんとなくお出かけ用って感じがする。
そのお出かけ用の服に草やら土やらが付いていたりすれば誰でも怪訝に思うだろう。
.....って、よく見たら血らしき赤い色も混ざっている。
洗濯しても落ちなさそうだ。
白系統だからなおさら......血?
「....ッ!」
「え?ちょっと待って!!」
「うおっ!?」
明らかにヤバそうな予感がしたから逃げようとしたら荷台をガッチリ掴まれた。
こんな華奢な腕のどこにこんな力があるんだろうか?全然動けない。
「ホントに困ってるんです!しかもここ人通りないしっ!!」
道の脇にはそれなりに大きな公園がある。
そこに植えられた多数の木々が、ちょっとした森のような物を形成している。
いつも通り、木々は風に吹かれてザワザワ独特な響きを奏でていた。
いつも通りだ。
ーー木に何か刀傷のような物が刻まれてなければ.....。
あからさまな異変に僕の中で緊急事態のアラートが鳴り響く。
....まあ、逃げても捕まって強引に引きづられる羽目になるんだろうな...。
....なんか木が倒れてるんですが。
地面も抉れてるんですが。
重機で暴れ回ったみたいな惨状だ。
「....キミは僕に何をさせようって言うんだい?」
重機の入ったみたいな形跡はなかった。
この森に入り込める程度には小さく、重機並のパワーを持つ.....ナニカ。
「別にちょっと友達を助けてもらいたいだけですよ?」
それで今、僕は血の海に浮かぶ女の子を前にする羽目に陥っているという訳だ。
着ている服はところどころが切り裂かれ、そこから見える肌は血で真っ赤に濡れている。
木が倒れているせいか、月明りが差し込んできており少女の銀色の髪はキラキラとそれを反射している。
....って、そんな場合じゃあ
「あっ、救急車なんて呼ばないでください」
もう、面倒だからお医者様に全部押し付けて帰ろうとしたら案の定コレだよ。
はたから見たら手を添えられてるようにしか見えないだろうが、全く動かせない。
「なんで?この子が友達じゃないの?」
「まあ、そうなんですけど.....こっちにも事情と言うものが....。とにかく、救急車は呼ばないでください。アナタでも出来る事ですから」