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バンパイアと僕の奇妙な日常  作者: libra
01 タナトス
19/19

第19夜 別れの時

さて、当面の危機(タナトス)は去った。

それはいい。

でも、一つ問題が出来た。

「なんですか?」

「2人をどうやって連れ帰るかだ」

片方は足がいう事を聞かず、もう片方は絶賛気絶中だ。

「え、でも....」

「君らの家って近いの?」

「自転車でこの時間からじゃキツいかもです」

「はい、決定。で、どうやって連れ帰ろうか?」

ミアは首を傾げて聞いてきた。

「1人ずつじゃダメなんですか?」

「面倒臭いし、一応自分達の性別把握してるよね?」


この公園は夜になると人気がない。

裏を返せば......、とりあえず彼女達のどちらかが平常運転なら面倒でも1人ずつ運ぶなり、ついて来させるなりしただろう。

でも2人共ダウンしている今となっては.....。


「水道とかありませんかね。ここ」

「あるだろうけど....ああ、でも水を汲む物が無いし、起きたとして歩けるの?」

セラを起こして、ついて来させるか、待たせるかすればこの問題は解決するだろう。

「汲む物が無いなら、水道まで移動すればいいんですよ」

「ああ、ってどうやって連れて行くの?

無言で僕を指差すミア。

「うん、それはいいよ。でも、君をここに残して行くのかい?」


「う.....ぐ」

小さく呻く声がした。

「必要無かったみたいですね」

「だね」



「.....意識が戻ってもまともに動けないなんて」

持ち上げて落とすなんて....ダメージが大きいよ。

タナトスの輝く手の一撃はセラの体の魔力の流れをかき乱し、体の自由を制限しているらしい。

ある程度なら動けるようだが、自衛能力は0に等しい状態だろう。


「歩けますか?」

「歩く分には歩けるけど.....」

うん、めちゃ遅い。

おまけにフラフラしてて危なっかしい。



結局、ミアを自転車の荷台に乗せて、セラのペースに合わせて自転車を押して歩く。

行きにかかった時間の4倍の40分をかけて家に帰り着く。

電気を点け一息つく。

時計を見ると9時を少し過ぎていた。


「....じゃあ、遅くなったけど夕飯作るね」

「お願いします」

「....うん」


送別会のつもりがとんだ事になったな。

ともかくシチューを作り終えて食べ始める頃には10時になっていた。

シチューが空腹に染み渡る。


2人の疲れた顔が和んでいるのを見て、この生活が名残惜しくなる。


まあ、怪我や疲労の回復でもう少し居座られそうだけどね。


・・・・・・・・


「セラさん、セラさん」

物置部屋で崩した寝床を作り直しているとミアが話しかけてきた。

「どうしたの?」

ミアは戸惑いと好奇心がない交ぜになったような顔をしていた。

「タナトスのナイフは魔力で形成されてましたよね?」

「そうね」

一時的とはいえ、私に傷を付けていたしね。

そういえば、複製のはともかく、本物は普通のナイフだったのかしら?


「それをですね。掴んで投げた(・・・・・・)んですよ、大河さん」

「えっ!?」

きっと今、飲み物を口にしていたら噎せ込んでいただろう。

「じゃあ、彼は......」

「適性があるんだと思います」


・・・・・・・・


あれから3日が経った。

学校から帰って、少し豪華な夕飯を作って2人に振る舞う。

少し食休みしてから2人は外の闇の中に出て行った。

玄関のドアを閉めると2人がそこにいるというのはわかるけど、どんな顔かがわからなくなった。

あっちには見えているのだろうけど。


「じゃあ、コレ」

保険と称して渡されていたパソコンをセラに差し出す。

「どう?バンパイアは約束を守るのよ?」

笑った気配がした。

差し出した手が軽くなる。


周りの家を警戒して、控えめに別れの挨拶を交わす。


そして2人は本当に闇の中に溶けていった。



また明日から1人なんだ.....。

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