第18夜 決着?
若干雑な気もしなくはない。
手に掴んだナイフから得体のしれない何かが流れ込んでくる。
でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
むしろ心地よく、力が湧いてくる感じだった。
僕は何故か確信があった。この距離でも絶対にこのナイフを当てられるという。
ナイフをダーツの要領で投げる。
ナイフは空気を切り裂きながら飛んで行った。
・・・・・・
タナトスが大鎌を振りかぶる。
セラさんがやられたら、次は.....私?
もしかしたら大河さんも.....。
なんで動いてくれないんですか?
いくら再生力が強くっても限度があるでしょう?体中をズタズタになんてされたら.....。
動いてよ.....お願いだから。
ナイフから注ぎ込まれる魔力のせいか膝が笑って立ち上がれない。
ナイフを無理やり引き抜こうとした時。
大鎌がセラさんに襲いかかーー
ザクッ!!
「ウグッ!?」
ーーらなかった。
何が起きたの?
大鎌がタナトスの手を離れ、地面に落ちる。
タナトスの姿をよく見ると、背中から血を流していた。
タナトスは膝をつくと手を背中に回して何かを引き抜いた。
それは私に刺さっているのと同じナイフだった。
大河さんのいるであろう方を向く。
大河さんは隠れていた森の中から出ていた。
切り裂かれた木の幹には刺さっていたはずのナイフは無かった。
タナトスに目を戻すと、引き抜いたナイフでセラさんに斬りかかろうとしていた。
それを察したのか、大河さんが走ってくるがあれじゃ、間に合わない。
今度こそナイフに手をかけ引き抜く。
手が凄まじい静電気のようなパチパチとした刺激で痺れる。
「やらせない!」
痺れた手と、いう事を聞かない足を無視してタナトスの足を切りつける。
「くっ、この邪魔するなっ!!」
切りつけた足でナイフを持った手を蹴り飛ばされる。
「あう!?」
手首に鋭い痛みが走る。もしかして、外された?
....動かせない。外されてますね....。
「え!?」
走って来た大河さんが勢いを殺さずに体当たりをして、タナトスを吹き飛ばす。
魔力で体を強化していても、ヒトの女の子であることは変わらない。
「キャァ!?」
ましてや、私が足を切りつけている。
タナトスは踏ん張りが効かずに、倒れた。
「え、女の子?」
気づいてなかったんですか、大河さん....。
・・・・・・
「で、どうするの?このハンター」
僕は武器を失ったところで、ミアが眠らせたハンターを見ながら聞く。
「放って置くのはいろんな意味でアレですしね」
ミアはチラっとセラの方を見ながら言う。
セラは未だに目を覚まさない。
ミアの見たてでは、ただ単に気絶しているだけらしい。
「警察に突き出すか?」
「論外です。こっちにも不都合ですし、回復したらすぐ出てきちゃいますよ」
速攻で却下された。
まあ、セラがバンパイアだのなんだの言われそうだしね。
「私にいい提案があります」
「へぇ、それってどんな?」
「簡単です。貴方方がおとなしく彼女を私に引き渡して頂ければ、この件は一件落着です」
......ん?
「なっ!?何者ですか!?」
いつの間にか僕らの近くにシスター服を着た女性が立っていた。
......全然気づかなかった。
「もしかして奇跡狩りの人ですか?」
「そうね。実際に積極的に戦う立場じゃないけど」
.....奇跡狩り?また新しい専門用語が...。
「じゃあ、どういう立場ですか?」
「負傷したメンバーの回収員よ、もっとも、抵抗されるかもだからある程度の戦闘力は持ってるわよ」
だから邪魔しないでねと、シスターは微笑む。
目が笑ってないからかなり怖い。
「あ、そうそう。強力な力を持つ人外は悪事の有無に関わらず、懸賞金がかけられるようになったのよ」
タナトスというらしい少女を荷物担ぎにしたシスターは去り際に言った。
ミアの表情が少し軽くなった。




