第13夜 出立
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翌朝、大河が学校に出かけた後の事。
突然何か重い物を投げ込まれた音がした。
ミアが驚いて庭の様子を見に行くと口の閉じられたダンボール箱が庭に落ちていた。
ダンボール箱の底にはテープで手紙が貼り付けられていた。
手紙は穏やかな時間の終わりの訪れを告げていた。
ーー彼女達の運命の賽は投げられた。
・・・・・
.....とりあえず今日も何事も起きずに平和に終わりますように....。
学校に着いて心の中で手を合わせる。
今日が無事に終われば彼女達もいなくなる。
それは心配の種がなくなるのと同時に、また1人になるという事なんだよね...。
浮かない顔をしているからと翼にまた心配されてしまった。
高校生にはいろいろ悩みがあるんだよって、押し通したけど。
11月の放課後は、もう空がオレンジ色に染まっている。
必然的に気温も下がるから風がとても冷たい。
「ううっ、寒い....」
思わず声が出た。
今日はシチューにしようかな、寒過ぎるよ....。
あー、でも牛乳切らしてたな....。
.....買い物行かなきゃなぁ。
うん、今日も異常無し。
鍵を取り出して玄関の鍵を開ける。
昨日と同じようにカーテンを閉めていたら、階段を降りてくる軽快な足音がした。
「おかえりなさい」
「....おかえり」
ただ今日は2人分だ。
「ああ、もう完治したの?」
「ええ、もう問題ないわ」
あれ?
「その服って、ズタズタになったはずじゃ...」
セラが着ている黒いドレスのような服はハンターとの戦闘でかなり手酷く切り裂かれていたはずだ。
「こんなの私の能力でお茶の子さいさいよ!」
ドヤ顔でVサインを出すセラ。
「大河さん.....」
ミアが話しかけてきた。
「ん、今日はシチューを作ろうとおもうんだけど?」
「いや、夕食のメニューじゃなくて、その.....」
その?
ーーーごめんなさい。
「えっ?」
その申し訳なさそうな声が鼓膜を震わせた次の瞬間に僕の視界は真っ暗になった。
・・・・・
「これでしばらくは目を覚まさないわ」
「これで良かったんでしょうか.....?」
セラさんが意識を無くした大河さんを抱え上げソファーに載せる。
一応その辺に畳んで置いてあったタオルを広げて掛けておく。
「今回は非常時の特例よ、本来なら関わるべきじゃなかったわ」
これでいいのよ、セラさんは自分に言い聞かせるように言った。
「大河さんは....」
「幼馴染がどうにかしてくれるわ」
「..聞いてたんですか?」
セラさんは少し寂しそうに言った。
「ええ、でも私にはどうする事も出来ない。光の下に生きる彼と、影に紛れて生きる私...水と油みたいな物かしら?」
私達は玄関から家を出る。
セラさんが魔力を使って作った鍵で施錠した。
セラさんは最後に振り返って家に向かって小さく頭を下げた。




