第12夜 寂しさ
で、授業が始まった訳だけど.....。
(いろんな方向で)家に残してきた居候が心配で授業に身が入らない。
「...ら、.....はら」
帰ったら、貴重品が無くなってましたなんて事ないよね....。
「.....しはら、星原!!」
「は、はいっ!?」
しまった先生に指名されていたか。
....無事に答えられて良かったー。
考えてみれば寝てる間に貴重品持ち出してトンズラできたんだよな。
やっぱ、来客とかで存在を知られるとかの心配をすべきかな。
さて、学校終わって買い物もしたし帰ろう。
.....なんともなってないよね?
出かけた時のままだよね?
外観異常なし。
鍵で玄関の扉を開ける。
部屋を見渡してみる......うん、変わった感じはしない。
カーテンを閉めると、僕が帰って来たからか、それともカーテンを閉める音を聞いたからかミアが2階から降りてきた。
「セラの様子は?」
「はい、明後日くらいには完治すると思います」
ジーッ
「な、なんですか!?私なんか見つめても何も起きませんよっ!?」
ミアが狼狽えた声で叫ぶ。
「いや.....気にしないで」
「気になりますよ!!」
そりゃ、そうか。
「いやさ、君たちが居なくなったらまた一人で飯食う事になるんだなって」
「....それって」
「君らが普通の人間とまでは行かなくても、せめて男だったらなぁ.....」
ミアは唇を尖らせて言った。
「女だったらなんですか?」
「若い一人の男の家に同じ年頃の女の子....ヒトには世間の目ってのがあるんだよ」
「.....まあ、それ以前に私たちには家がありますから」
だよねえ、こっちのワガママで引き止める訳にもねえ。
最初は渋々だったのにな....いざ出て行かれるとなるとまた一人になるのかと、寂しくなる。
***
「.....一人....かぁ」
体に響くからゆっくり動いていると自然と物音を立てずに動くことになる。
立ち聞きなんかじゃないわ。不可抗力よ、これは。たまたま聞こえただけだもの。
事故で死にかけて、師匠に助けられて、瀕死から脱する為にバンパイアにされて.....師匠と別れてからの....何年だったかしら?
フェットを助けたのが最近と感じられる程度には一人だったのだろう。
「まあ、共感したところで何ができるわけでもないし......感謝はするけど....その手の事には何もできないわね」
***
墨を溶かしたような暗闇に包まれた空。
その下にはたくさんの家々が立ち並んでいる。
「みーつけた」
その一つの屋根の上でフードを被った人影が楽しげに呟いた。




