第三話
「あの、つばさのひとってなんですか」
勝負をしているような気になってきます。なんでだ。
ぱちり。
あ、この人(?)まばたきした。まったく意思の疎通がはかれないのかと思った。よかった。
「それは答える権限をもちあわせておりません。つばさのひと」
ですかー。
「つばさのひとはやめてください。紗綾。上城紗綾です」
「サーヤ」
「はい」
「サーヤ、あなたに全てを与えます」
・・・・戻った。
「あなたはなんていうの」
「これはエウリケといいます」
完全に他所事だ。予想はしてたけど。あのですね、すべてを与えると言われてもですね。小市民は普通びびっちゃうんですよ。いま羽ついてるけど。
「羽があるだけじゃないですか。大げさです」
いやこれはない。だけってなんなの。十分大騒ぎだよー。内心冷汗ダラダラになりながら作り笑いでごまかそうとする。
「大げさではありません。つばさのひとはこの世界にサーヤひとり。そのサーヤに全てを与えるのがこれの使命」
重っ。けど無表情ながらに必死な様子だ。目が。目が訴えてくる。ど、どうしよう。同情とかじゃなくて、全てを与えられるっていうのは打算で考えてもおいしい。けどその分のリスクを考えると簡単に手がでない。びびっちゃうんですよねえー。
けどエウリケの目が小動物的瞳なのだ。造形は大人の女性なのに妙な無邪気さや純真さがある。こちらに対するまったき信頼と自分が通ると当たり前に考えている傲慢。小さな子供みたいだ。そして、ちょっとまて、羽がある人がそうそういるとは思ってなかったけど、ひとり!?私だけ?
泣いてもいいですか。目を閉じて心の中で涙を流しつつ決心する。私が生き抜いていくためにはエウリケのいう全て(私にとっては主に知識)が必要だ。まさかエウリケ以外に都合のいいガイドができるわけもないだろうし。
「サーヤ、あなたに全てを与えます」
覚悟は決めた。返事は一つだ。
「はい。全てをうけとります」
エウリケはぱちぱち瞬きをしてこちらの意志を確かめたようだ。輝かんばかりの無表情になった。ああ、嬉しいの。よかったねえ。と他人事のように考えていられたのはそこまでだった。くるりと私を中心に魔法陣が広がり白い光が辺りと私を飲み込んだ。
***
「マスター、マスター、起きてください。ここは就寝に適していません」
誰がマスターだと思いつつ目をあけると金髪金眼のうつくしー幼児がいた。
「あなた誰?」
半目になりつつ問う。本当は全てを受け取ったのでわかっているのだけど!
「これはエウリケです」
それはまあ可愛らしい様子で小首をかしげて見せた。