第二話
ただ今の私。遺跡のようなものを探索中。最悪今日一晩寝れればいいのだが欲が出た。遺跡(仮)はごつくなくどちらかというとつるりとした質感だ。まるで陶器のよう。薄水色の鉱石みたいなもので構成されている。
そしてこの遺跡継ぎ目がない。まるで一つの大きな石をくりぬいたようにみえる。
そして、実際そうだったらどうしようとか思っている。オーバーテクノロジーってやつだったら面倒臭い。遺跡の中ときたら至れり尽くせりでぼんやりと足元を照らしてくれる明りがところどころ生えている。光の結晶のようでなんだかお伽噺のようにもおもえて面映ゆい。遺跡の全体はゆるく傾斜した螺旋を描いていて、中心部の辺りからは水音が聞こえる。
遺跡の探索はこれが決め手だった。寝れればいいやから水の確保。そこにあると思うと、とたんに飲みたくなる。というわけで水を求めて遺跡内を歩く。不思議なことに奥に行くにつれ明るくなっていくのだ。中心を覗き込んであっと思った。光の塊が浮いているのだ。
明りがあってよかった。ずっと昔、キャンプにいったときの真っ暗さを思い出す。一歩も足が出ないとはあのことだ。明りのある暗さにしかどうしていいのかわからない。実際こうなってみて思ったが、森を抜けるのも無謀だとおもう。飛べばいいとは安直に思えない。これは簡単。私が一人だからだ。ここの常識などまるでわかっていない。今はまだだがいずれ羽のしまい方も練習したい。しないといけない。できるはずだ。と悶々考えながら足を動かす。生き物に遭遇した時の心構えもあったほうがいいかもしれない。けれど奇妙なまでに生き物いないんだよなあ。これは一歩間違えれば怖い話だ。が、私は進むほうを選んだ。現段階でぶっちぎりに怖い体験をしている途中だからだ。だってたぶんここって地球じゃないよね。あらお伽噺な光の結晶なんてしらないし、こんな世界遺産みたことないし。私は背中からアレだし。
考えるな!考えたら負けだ!くそう、こうなることが分かっていたらペットボトルくらいもってくるんだった。
せっかく水場にいけてもそこで終わりじゃん。保存するものがないなんて、なんて意味のない。
しかし飲めはする。そのはず。負けるな私。一生懸命自分を鼓舞する。
中心部は近い。私は足を速めた。
「わあ」
目線より少し高めに浮かぶ光の中には女の人のトルソーのようなものが。もちろん水もこんこんとわきだしているのですが。期待はしてなかったけどやっぱり地球じゃないんですね。
もう水のことなど頭から飛んでる私に彼女は言った。
「つばさのひと、あなたに全てを与えます」
と。
***
「・・・・つばさのひと、あなたに全てを与えます」
上城紗綾は反応を返さなかった。村人は同じ行動をとった。
というところだろうか。どうしよう。人間じゃないものに話しかけられた。けどちょっと嬉しかった。
ひとりぼっちはやばいということだろうか。地球じゃなくて異世界に一人ぼっち。かなりきつい状況になんかしってそうなひと|(?)がいるというだけで涙が少し滲んでくる。
「あの、私上城紗綾っていいます。ここどこですか。つばさのひとっていったいなんですか?」
「・・・・・・・・・」
村人は反応を返さなかった。上城紗綾は沈黙した。
ちょっと泣きそうだ。頼みの綱改めトルソーに黙られてしまってはどうしようもない。
「つばさのひと、あなたに全てを与えます」
この言い分もちょっとな。あまりに一方的すぎる。判断材料がまるでない。
怖いことだと思う。全てって何。私どうなっちゃうの。