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魔術師のお仕事(2)

悪魔だ。

あの美貌の下には醜悪な悪魔の顔があるに違いない。


結局、あの後私は魔術師として登録されるべく魔術管理局という宮廷魔術師を雇用する機関へ連れて行かれた。

この魔術管理局というのは国内の魔術師のすべてを取り仕切っており、魔術師の保護から育成、権利保障まで一手に引き受ける公的施設だ。

この魔術管理局に登録すれば、魔術師に関して行われるこの国の保障すべてを受けることができる。もちろん、家がお取り壊しになって身元がいまひとつしっかりしていない私の身分を証明してくれるので、王宮で魔術師として働くには必須なことだ。



「ではこちらにお名前といくつかの項目を書き込んでください。」

ペンを持つ力も入らないわが身に鞭打ち、なんとか羊皮紙を埋めていく。

貴族だった頃の名前を書いてもしょうがないので、ただミリアとだけ記載する。

派閥は悩んだのだが、隊長の許可がおりたのでディードリヒ派にしておいた。なんとなく、ここにクレアドル派と書いたら騒がれる気がしたからだ。

きっと古代魔術なんて絶滅宣言されてるだろうから。自意識過剰かもしれないが。


「こちらにある魔水晶に手をかざしてください。」

書類を書き終えると、人の頭部くらいの大きさのガラス玉がおかれた。

この魔水晶は一見何の変哲もないガラス玉に見えるが、魔術師が手をかざせば魔力量に応じて光が増し、性質に応じて色が変わる。一般人は魔術師のように魔力が循環していないので、手をかざしても魔水晶が反応する事はない。

魔水晶での測定は初めてだが、この魔力も体力も絞りつくされた状態でちゃんと反応するのか甚だ疑問だ。

案の定、手をかざしてもわずかばかりの光しか灯らなかったわけだが。

だが、受付のお嬢さんは少し驚いたような顔をしていた。

まあ、こんな魔力量で魔術師登録とかちゃんちゃらおかしくて鼻で笑ってしまうのだろうが。

魔水晶に灯る光の色によって魔力の性質が分かるのだが、今の私の残りカスのような魔力では何色かも判別できない。

「ほう、面白いな。」

受付のお嬢さんが奥に引っ込んだところでそれまで浮かべていた爽やかな笑顔は不敵な笑みに取って代わった。さすが、切り替えが早くていらっしゃる。

「何も面白くないですよー・・・もう戻って休んでいいですか?」

ここ一週間で私の隊長に対する態度が随分ぞんざいになったが、高貴な方であるはずのこの悪魔はあまり気にしていないようだ。最も、この一週間に強いられたことを思えばお釣りがくるぐらいだと思うが。

「ああ、かまわん。夕方には近衛隊のやつらに顔通しがあるから起きて訓練場に来い。」

あんたは鬼だ!悪魔だ!!大魔王だ・・・!!

「夕方って・・・もう一刻半もないじゃないですか。顔通しなんて明日の朝でも・・・」

絶望に打ちひしがれながらも命の危機を感じて抵抗するが、大魔王ブランシュ閣下には下々の訴えなんて聞く道理もないようだ。

「明日の朝からは王室警備通常営業だ。覚えてもらいたいことは山ほどあるんだから、のんびりさせるわけにもいかん。本来なら投獄か死刑になるところを、俺が人材の有効活用してやってるんだからキリキリ働け。」

どうやら私には魔術管理局の保障は無効のようだ。

「顔通しが終わったら明日の朝までは休ませてやる。感謝しろ。」



この時ほど、スリルがたまらないとか思ってた過去の私を殴り倒してやりたいと思ったことはない・・・

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