ブルーライトスカル
これは、とある人から聞いた物語。
その語り部と内容に関する、記録の一篇。
あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。
う~ん、涼しい部屋の中から見上げるぶんには、晴れの空は気持ちよくていいね。
外へ出るや、やれ汗だ、やれ紫外線だ、と純粋に自然を楽しむのに邪魔な要素がもりもり増えてくる。都合よく涼しい風が吹いてくれるといいのだけど、この都会の街中だと排気ガスうんぬんが混じった、けだるく不健康な生暖かい風であるのもしばしばだ。
昔と違い、人の手によって育まれたダメージの多い相手だ。自身の持つ力だけで跳ね返し続けるのは至難の業といえる。ただでさえ、人の力はどこかで下り坂へ転じてしまうもの。
若さを過信せず、己が力をわきまえて、他者や道具の力を借りる……勇気のいることかもしれないが、どこで割り切るかだねえ。
中には「いやいや、オレ、わたしはこれまで頑張ってこられたから大丈夫」と思う人もいるだろう。だが、自分の感覚はあてにしづらい。
熱を出しているときは、自らの手も暖かい。自分でおでこに触れたとしても、本当に熱があるかは実感しがたいものだからね。
他者の手の借り方について、ひとつ私も不思議な体験をしたことがあるんだ。そのときの話、聞いてみないかい?
ブルーライトスカルの写真、つぶらやくんはご存じだろうか。
私たちが学生だった時分に起こった、心霊写真ブーム。その中でも、私たちの近辺でのみ流行したマイナーな現象だ。
カメラのフラッシュを焚いて撮影したとき、被写体となった人の顔の部分が、ときたま歪んでしまうことがある。
撮影する瞬間のブレなどが考えられそうだが、注意していたにもかかわらず、同一人物に同じ現象が起こるとき。私たちはブルーライトスカルの可能性を疑うんだ。
ブルーライトスカルか否かの判定は、非常にシンプルだ。何か青みを帯びたものを食べた後で、写真撮影をしてみればいい。
昨今はいろいろな着色料を用いられているから、青色を意識したアイスやお菓子を用意することは難しくない。それらを食べた後で写真を撮ってみると、対象者ならばはっきりとした「心霊写真」が生まれる。
被写体となった、その人の頭が真っ青に染まった頭蓋骨に置き換わる。他の部分の写りがよくなくとも、その頭蓋骨部分のみはくっきりと明るくあらわれるんだ。それが「ライト」をつけられるゆえんだな。
――今は、そのサンプルとなる写真はないのかって?
気味悪いことに、その骸骨が見られるのは写真を撮ってからせいぜい1時間以内ってところだな。その後は、被写体の本来の頭に戻ってしまうんだよ。当時、最新式だったデジタルハンディカメラであっても同様さ。
現在のケータイ、スマホのたぐいで撮影しても、同現象は起こらない。当時と環境が変わったためか、我々そのものが変わったためかは、判断がむずかしいけれどね。
このブルーライトスカルが写ったとき、放っておくとちょっと怖い思いをすることになる。
頭部から出る汗、涙、鼻水などなど……外へ排出されるもの、ことごとくが青くなってしまう。これらの色は流れ出た瞬間しか見られず、外気に触れるとたちまち透けてしまうものの、インパクトは大きい。
そうして、それらが垂れ落ちたところには数分と経たずに小バエがたかってくる。これがもう室内外を問わず、「お前ら、どこにこんだけ隠れてたんだ?」とつっこみたくなるくらい集まってくる。たとえ冬の寒い日であったとしてもだ。
さっと拭き取ったり、濡らして洗ってみたりして、すぐどうにかなるレベルでもない。一度発生してしまったら、数日間かけて対処に追われることになろう。
そのため、ブルーライトスカル対象者は判明次第すみやかに行動へ移ったほうがいいのさ。
一番、我々の中で知られているのが氷水で冷やした、かんきつ類の摂取だ。
丸ごと、あるいは輪切りにして食べやすくしたレモンやみかんなどの果汁を、たっぷりとすする。丸ひとつ分を食べたあとで、また撮影を行ってみてブルーライトスカル状態になっていないかを確かめてみるんだ。
おおよそ三個分を食べ終えるまでの間に、ことの対処は終わる。みんな、いつも通りの写りが戻ってくる。
けれども、それでもブルーライトが残り続ける場合には、もうちょい力を込めねばいけない。
早い話が、自分をかじる。
右でも左でも構わない。その前腕でもって、ぽんぽんと自らの顔を叩いたあと、そこへしっかりかぶりつく。
歯型が残る程度じゃ足りない。でも、肉がちぎれるほどじゃなくていい。
その表面に血がにじむまで。その血をごくりと飲み込めるまで。
そうしたら、頭の奥へ痛みが走る。痛みは顔全体へ広がって、でも数十秒もしたならば、たちまち引いて元通り。青く光る骸骨を拝むことはなくなっているだろう。
――もし、小バエが出るのにも耐えて、対処をしなければどうなるって?
これは私が実際に見た話じゃないのだけどね。寝ている間に小バエたちが顔の穴という穴から中へ入って、詰まってしまい、死に至るということだ。
試しに死体の顔を押してみると、その拍子に無数の小バエたちが飛び出していくのみならず、顔はぺしゃんこにつぶれていってしまった、て話だよ。




