表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベジタラディア  作者:
第1章:はじまりの物語
7/11

.6

じゃがいもに引きずられるように小屋から離れると

冷たく澄んだ空気が、肺に刺さる。


振り返ると、小屋は原型を留めていなかった。

大きなキャンプファイヤーのように明るい火と

夜空よりも暗い煙が空に登っていく。


「なんで……。」

目の前で、全てが音を立てて消えていくのに

ピーマンは何も出来なかった。

「朝には役人が来るって。」

何故今じゃないのか。どうして朝なのか。

燃える小屋の周りには2人以外誰もいなかった。


「医者のところに役人が来てたんだ。」

「……大根先生のところか?」

じゃがいもは目を合わせずに話を続ける。

「君が貰ったのはネムリグサの粉だ。役人が出ていったあと、嫌な予感がしたから医者を問い詰めたんだ。急いで来たけど……間に合わなかった……。」


だから、身体が動かなかったのか。

ばあちゃんに薬を飲ませたのは俺だ……。

……俺が殺した。


「魔法を使った痕跡があるって言ってた。危険だから消すしかないって。お前のおばあちゃんだったんだな。……俺らを助けたの、魔法だろ。」


ピーマンは何も言えなかった。

泥水を綺麗な水に変えただけの魔法の

どこが危険だと言うのだろうか。

人の家に火をつけること、命を救ってくれた魔法、

どちらが悪かなんて分かりきっている。



ピーマンとじゃがいもの沈黙を破るように

ぽつぽつと雨が降り始めた。

どんどん強くなる雨。


じゃがいももピーマンもその場に立ち尽くしている。

目の前の炎が揺らぎ始め、徐々に色が失われていく。


「……消える。」

ピーマンの声は、どこか呆然としていた。

さっきまで、あれほど燃え上がっていた炎。

ピーマンからすべてを奪った炎は

雨に打たれて、少しずつ、確実に消えていく。


「死んだことにしてくれ。」

ピーマンは静かに言った。

「ばあちゃんの墓を作ったら、俺は出ていく。

もうここには何も無い……。」

「……分かった。」

じゃがいもは頷くしかなかった。

自分にできることはもう何もないと知っているから。


それからピーマンは、声を上げて泣いた。

この雨が、声と炎を消していく。

枯れない涙を拭う手は、炎に熱せられたからか

所々黄色くなっている。祖母の手と同じだった。



魔法は、全てを奪った。

そして同時に、命だけは生かした。

何も持たぬまま、生きるというのは

とても残酷なことだと、今夜、ピーマンは知った。



それはまるで、呪いのようだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ