三番艦 「絶望から希望に」
「エゼリオン…皇帝陛下。ここ、レヴァンクレス皇国は島国、もしくは国土の殆どを海に囲まれた国なのか?」
俺は自信に満ちた声でそう尋ねた。
エゼリオンはその言葉に頭を上げ、碧の質問にはっきりとした言葉で返答する。
「はい、その通りです。我が国は周辺を海に囲まれた島国になっています」
「なるほど…」
無理だと思っていたお願いに少し可能性が見えた。今の俺は何故か興奮している。
「とりあえずこの国の国防が今どうなっているのか教えてもらって良いか?」
「了解しました。バルドウィン、軍神様に説明を頼む」
「御意」
エゼリオンの頼みにそう返事するとバルドウィンは淡々と語りだした。
「今から1ヶ月ほど前、隣国のエルネア王国という国が我が国に対して戦争を仕掛けてきました。軍神様がおっしゃった様にこの国は島国です。我が国は海からのレヴァンクレス皇国本土上陸を阻止するべく海上で懸命に戦い、互いに膠着状態になった事で我が国レヴァンクレス皇国はエルネア王国となんとか休戦協定を締結する事が出来ました」
「あれ…それだったら良いんじゃないか?祖国を守る事が出来たんだし」
「…はい。確かに私達は”一度は”祖国を守る事が出来ました」
バルドウィンはわざとらしく含みがある言い方をした。その声は今までの声より力強い。
「一度は…とは?」
「第二次レヴァンクレス・エルネア戦争が迫っているのです…」
「それは…なるほど。そういう事か…休戦協定の失効期限が異常に短い…とかか」
俺は何かを察した。エゼリオンの隠れた顔とバルドウィンの震えた手。とても思い空気はだだっ広い大広間を狭くしている。
恐らく膠着というのも少しばかり違うのだろう。敵はまだ余裕がある。けど戦争を継続出来る状態では無い。だから"休戦"協定を結んだ。次の戦争の為の時間稼ぎ…
そういうシナリオが当事者達には嫌でも浮かんできた。そしてこれは妄想でも何でもない事実…確実に起こる有事…
「その休戦協定はあと何年ほどで失効される?」
「472日…一年でございます」
この世界の一年は472日なのか。いやそこはどうでもいい。問題なのは…
「現在、皇国を守る為の皇国海軍軍艦の総数は48隻、うち大破6隻中破11隻小破5隻。今の皇国海軍にレヴァンクレス皇国を守れる様な力は残っていません…一方敵エルネア王国海軍の数は詳しくは分かりませんが多く見積もって200隻程…」
「協定失効までにエルネア王国海軍と同じ程度の軍艦数を確保する事は出来ないのか…?」
「悔しいですがエルネア王国の造船能力は我が皇国よりも上なのです。この数的劣勢を埋める事は現状では難しいと具申いたします」
思った以上に最悪な状態だ。472日までにほぼ4倍、恐らくもっと多い軍艦を保有する海軍を相手しなければならない。そりゃ神話でも伝承でも信じたくなる。
「どうかお願いです!絶望的な状況なのは分かっています。無理を言っているのは十分理解しています。しかし貴方しか、貴方にしか出来ない事なのです!軍神様、私達の祖国を守る為、力を貸して下さい…!」
エゼリオンは涙を必死に堪えて叫んだ。声で何となく分かる。震える声はその決意と誠意でかき消している。
「…正直に言って俺はこの国と世界の事は全く知らない…し、俺の知識がどれくらい役に立つのかも分からない。それでも良いか…?」
「…はっはい…!!はい…もっもちろんです…本当に……ありがとうございます……」
エゼリオンの涙のダムはついに決壊した。最後の最後までよく持ちこたえたな、と俺は彼に尊敬の念を抱いた事を覚えている。
誤字脱字、ここの文少し変、ここはこうした方が良いなどと思ったら是非コメントをお願いします。




