父さんの親2
「俺宛のメッセージ…?」
この時代じゃ「かなた」という名前は珍しいらしい。俺以外の可能性は低いだろう。
「きっとこれは父さんの親…じいちゃんからのメッセージ…ってことだよな…」
なぜ会ったこともない祖父母が俺の名前を知っているのだろうか。しかも、これじゃまるで未来から来ることを知っていたかのようだ。
紙をひっくり返したり、あたりを探してもあるのはこの紙切れ一枚。これ以上の情報はない。これ以上の情報はないが、この一文でかなりの情報を得られたのも事実。とにかくまず第一の懸案事項。
『父さんの世話継続』
これが確定した。祖父母はきっと当分帰ってこないのだろう。なんならもう2度と帰ってこないかもしれない。
"父さんを救う"その一心で過去に来た。決して軽い気持ちで来たわけではない。しかし、これは想像を絶する。ただでさえ未来に帰るのが絶望的な状況で、赤子の父さんを育てるなんて…こんないつ死んでもおかしくない儚き生命、最悪のケース俺が父さんを死なせてしまう可能性すらある。
「未来に帰れない理由がまた増えちまったよ…未来では母さんをひとりぼっちにさせちゃってるのに…あーなんだか泣けてきた」
俺は不貞腐れるように横になり、この現状に文句を垂らしながら目を瞑り眠りについた。
「ふぎゃーふぎゃー」
横になったのも束の間、父さんの泣き声で目を覚ます。
「父さんごめん、俺もう疲れてるからもうちょっと寝ててくれ」
保護者として最低な発言だろう。そんなのは分かっているが、保護者デビュー初日にして壮絶すぎる出来事が立て続けに起こっているのだ。父さんも許してくれるだろう。
「ふぎゃーふぎゃー」
俺の思いとは裏腹に父さんの泣き声は強まるばかり。今ここで父さんを見捨てたら父さんを殺したのは俺になる。そんなことはずっと分かっているのに心の疲れが既に限界を迎えていた。
「父さん頼む!もうちょっと寝てくれ!」
泣きじゃくる父さんに懇願するも勿論泣き止むわけはない。
「………そういうわけにもいかないよな。父さんどうした?もうお腹減ったのか?」
疲れだなんだ言って今の父さんが待ってくれるわけはない。割れ物でも扱うかのように慎重にそしてぎこちなく父さんを抱き抱える。
「世のお母さんはみんなこんな思いしてるのか。俺、母さんにもっと感謝しとくべきだったな…」
見様見真似で真由美さんのようにあやしてみる。自分の体を左右に揺らしながら父さんのおしりをトントンと叩いた。不思議なことにこれが安心するのか父さんはスンと泣き止んだ。
「父さんも不安になっちゃったんだな。ごめんな。俺がもっと早くここに来てれば引き止めることができたかも…」
そうだ。過去に戻ればいいんだ。たらればの話ではなく俺には本物よタイムマシンがある。今日の朝、父さんが預けられる前に戻って、爺ちゃんを説得すればいいんだ。
「よし、そうと決まればタイムマシンの準備だ」
父さんを連れ、2階へと上がる。
今朝苦労して引きずり出したタイムマシンだが、ここで起動させたらタイムスリップした瞬間に爺ちゃんと鉢合わせてしまう可能性がある。鉢合わせしなくともあんな激しい光が部屋を包んだらご近所さんからも注目されてしまうだろう。
仕方なく屋根裏から引きずり出したタイムマシンをまた屋根裏へと戻す。
「あーこれ明日絶対筋肉痛だー。ていうか俺の明日っていつになるんだか」
虚しい1人ツッコミを繰り出しながらなんとかタイムマシンを元あったところへ戻し、タイムスリップの準備を進める。
「今戻れば大体朝の5時ごろか。たしか8時の時点ではもう既に預けられていたからちょっと早いくらいか」
このまま少し待って時間を調整することも考えたが、これ以上父さんの面倒を見るのも手に負えないし、何より俺に世話される父さんもかわいそうという理由で、俺は今すぐ戻ることに決めた。
「-を押して1、そして手を添えて×…だよな…」
箱に手を添え×を押す。タイムマシンが再びこの暗い屋根裏を光に包んだ。




