えぴそーど1「この日」何かがあった
僕の名前は東海紅葉、表向きはどこにでもいる普通の中学生だ。
周りの人からはよく、「変わっている」と言われる。そんな僕にも親友がいる。名前は桜田葵衣。幼い頃から家族ぐるみで仲が良い、いわゆる幼馴染と言うやつだ。
ある日の下校中、急に事は起きた。その日、僕はいつも通り葵衣と学校から帰っていた。帰った後にどこかに遊びに行こうと話していた時だった。急に大型トラックが葵衣に向かって速度を落とすことなく突っ込んできた(当時の僕は突っ込んできたよに感じたと行った方が正しいだろうか)考えるよりも先に体が動いた。葵衣を押し退け僕がトラックの前に出た。
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どれだけの時間が経っただろうか。
僕は病院で目を覚ました。
どこも怪我はしていないようだ(残ってないの方が正しいだろうか)。
試しに手足を動かしてみる。
痛みは無い。
この状況には心当たりがある。
僕は超能力を持っているのだ(厨二病ではない)。
そのうちの一つがこの「Full recovery」というわけだ。
いくら超能力とはいえ平和な日本で使う機会もあまりなく、特に鍛えたりしていたわけでも無いので流石に大型トラックに轢かれた時の致命傷をすぐに治すのは難しかったようだ。
しかしそれでも後遺症が残らないほどにまで回復しているため効果が発揮されているのだろうとわかる。
時間を早戻しして事故を未然に防ぐこともできるのだが、事故に遭ってからなおったのがはやかったとはいえ、割と時間が経っているようなので、何となく進んだ分を戻したことによる時空への影響が大きくなりそうな気がするからやめておこう。
医者の方が来てもう完全に治っているとのことで、退院することになった。この時治りが早い事に関して言及されなかったことからこれに関しては自覚はないが能力なのだろう。
ここまでは今の状況が全て分かったようだがいくつか気になる事がある。
まずはなぜかこの超能力を使う事ができる理由が思い出せないことだ。
この世界では超能力が当たり前で無いことや超能力を使う事ができるという感覚(?)は自分の中に残っているのだが、使う事ができる理由だけが全く思い出せないのだ。思い出そうとしても白いもやがかかっているようで思い出す事ができない。先ほどの時間の早戻しが自分でダメだと感じた理由も思い出す事ができない記憶の中にあるのだろうか。
次に、なぜトラックを超能力で避けなかったのかだ。
当時僕はひとりで家に帰っていたはずなので、どんな速度であろうと自分が避けるのであれば問題なく避けられたはずなのだ。
そして、先ほどの理由が思い出せないことや超能力が当たり前でない事にもつながるのだが、自分が周りの人が知らない事を当たり前のように知っている事だ。
しかしやはりそれがなぜなのかも思い出す事ができない。
その後色々考えている間に手続きやら何やらの退院の準備が終わった。
明日からこれまでと同じ日常が始まる・・・のか?