表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エッセイシリーズ

伏線

作者: 夢野亜樹

物語には流れが変わる瞬間のようなものがある。それは無数に散りばめられた伏線から変わっていくこともあれば、1つの強い衝突から変わるものもある。

僕は「ああでもない、こうでもない」といってどうしようもない社会や、ネットの世界を彷徨っている。今年で28才のフリーターだ。

もう少し詳しく書こう。YouTubeの動画の見過ぎと夜遅くまでのスマホゲームのせいで目が慢性的に疲れていて、顔にできるニキビ。薄くなる髪の毛。友達のいない孤独。言い表すとキリがないような、しょうもないような、小さいようで大きいストレスがこの物語の流れを変えてしまうのではないかと心配している。もちろん結末はバッドエンド。

何事もストレスは良くない。負の要素のある伏線はどれも悲しい結末に決まっている。どうせなら、運命の人に出会うとか、自分の新たな才能に気付くとか、ハッピーでラッキーなものが望ましい。


先日、バイト帰りの電車でのことだ。電車から駅のホームに降りた中年のサラリーマンが空けた席に、ピンク色のライターが置き去りになっていた。

僕はちょうどその席に座ろうとしていたので持ち忘れたか、ポケットから滑り落ちたかしたライターが邪魔だった。ただ、ライターをどけて座るような豪快さや、とぼけて気にもせず座るような無関心さは僕に持ち合わせていなかったので仕方なく、たった今ホームに降りたスーツ姿の男性に、

「すみません!このライター落としませんでしたか?」と声をかけた。

「ありがとうございます」

そう言って男性はライターを受け取るとこれから待ち受ける幸せな家庭へと帰っていった。

このなんて事ないちょっとした出来事に、僕は希望のような変化を求めている。つまらない、みじめったらしい28才男性の人生に。

例えば、これが中年サラリーマンではなく、黒髪ショートで文学好きな女性だったらば。ピンク色のセンスの一つもない下品なライターではなく、文庫本から落ちてしまった1枚の栞だったなら。これはハッピーでラッキーな伏線になりえたのかも知れない。

どうか、このつまらない人生を変えてくれ。この男に幸福を。

本当に何かを変えたいのなら、生活の一つの習慣から変えることだろう。YouTubeで配信者が銃を撃ってるのを観るのではなく、腕立て伏せでもしておくとか。夜中にスマホゲームをするのではなく、BARでマティーニでも飲むとか。

ただ、腕立て伏せよりストレッチ。マティーニよりジントニックのほうが僕の好みではあるが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ