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(元)勇者の異世界旅行記 ~お仕事終わったので旅に出ます!~  作者: 天宮
序章:「勇者」のはじまりからおわりまで。
4/15

4:人類種と「魔王」との戦いの歴史について。

 創造神様に導かれるまま降り立ったのは、第一大陸「神秘の大地 アリアル」にある神聖帝国リリヴァル・ターレの帝都ヴァリアルの大神殿だった。

 神託に従い、勇者召喚の儀式を執り行ったのがヴァリアルの大神殿だったから。


 召喚後、僕はすぐにお城へと連れていかれた。そして皇帝陛下と謁見し、改めてこの世界の現状とその歴史を説明されたのだった。




 この世界に、突如として「魔王」が現れたのは約三〇〇年前の事。

「魔王」は魔族という手下を従えて、世界を侵略していった。

 魔族はこの世界の人類種と殆ど変わらない姿をしていたけれど、中身は別物だった。この世界の住人のことを、家畜としか思っていなかった。魔族は次々に人々を襲って、捕えて、「牧場」に放り込んでいった。

「牧場」は魔族たちが作った拠点の一つ。そこは人類種から様々なものを搾り取る場所だった。魔力や負の感情をはじめとする一種のエネルギーや、触媒に使うという髪や血液。魔族たちは他にも、さまざまなものを人々から搾取していった。そして、たくさんの人が死んでいった。


「魔王」は世界中に「魔の種」というものをバラまいた。「魔の種」はこの世界の生き物に寄生して、魔獣と呼ばれる存在へと変えていった。

 魔獣になったのは動物や、この世界に元々いた魔物という獰猛な生き物が殆どだったけれど、中には聖獣と呼ばれる希少な生き物や、人類種すらいた。

 魔獣は世界中で暴れまわった。たくさんの人を襲って殺した。たくさんの村や町を破壊した。そうして世界を蝕んで、人々を弱らせたところを、魔族たちが捕まえていく作戦だった。


 人々は抗い続けた。剣を取って、手を取り合って、生きるために戦い続けた。

「魔王」との戦いは、長く厳しいものになった。

「魔王」この世界に降り立ってすぐ、大陸を一つ占拠した。この世界にある八つの大陸のうちの、一番小さな大陸だった。他のどの大陸からも遠い、海に囲まれた小さな大陸。第八大陸。

 この大陸は元々他の大陸との交流が薄くかった。だから、異常が起こったことに気付くのが遅れてしまった。気付いた時には、遅かった。「魔王」の侵略の準備は、整ってしまっていた。


 侵略を開始した「魔王」は強かった。第八大陸――長い時の中で、「暗黒大陸 ゼーレイ」と呼ばれるようになったその大陸に隣接する六つの大陸を同時に攻めた。

 他の大陸同士が連携しないように、自分たちの事だけで手いっぱいになるように。「魔の種」をバラまいて、魔獣を暴れさせて、魔族に襲わせて。

 そうして、六つの大陸それぞれの約半分を、十年もしないうちに取ってしまった。しかし人々も負けていなかった。押され続けていた戦線を、どうにか膠着状態にまでもっていった。

 侵略されなかった最後の大陸、「アリアル」が本格的に六大陸を支援し始めたおかげだった。

 それから二五〇年の間、一進一退を繰り返しながら、長い長い戦いに明け暮れていた。


 状況が変わったのは今から四〇年ほど前の事。六大陸すべての戦線が、押し出され始める。

 当時はわからなかったけれど、長い年月の末に「魔王」が更なる力をつけたことが原因だった。そのせいで、配下の魔族や魔獣たちがパワーアップしてしまったせいだった。

 人々が、すべての力を出し切ってなお膠着状態に持ち込むのが精いっぱいだったのに、更に力をつけた「魔王」に、人々になすすべはなく。多くのものが死に、多くのものが捕まっていった。


 そして四〇年経った今。人々は絶望の中にあった。

 六大陸はそれぞれの大陸の端、たった一か国ずつを残して、他の国は滅んでしまったのだ。

 六大陸すべての大地が「魔王」に占拠されるのは、時間の問題だった。そうなれば、最後の大陸「アリアル」に攻め込むのも、また。


 そんな時に、一つの希望が宿った。帝都ヴァリアルの大神殿に、神託が降りたそうだ。


 この世界には、実際に神様がいる。創造神を頂点として、様々な神が天界から下界、つまり地上を見守っているらしい。

 神々は滅多な事では下界に干渉してくることはない。神の力は強すぎて、下界をめちゃくちゃにしてしまうから、普段はただ見守っているだけなんだそうな。

 だけど今回の「魔王」の事は例外として、神々は人々に力を与えていた。直接力を揮うことはできないけれど、それ以外の事は沢山。

 神々に仕える天使族を派遣して戦力を増強したり、神器を与えて選ばれしものに一騎当千の力を与えたり。

 それでもなお勝つどころか膠着状態にしかならなかったのが、「魔王」の怖いところだけれど。


 そういうわけで、してやられ続けていた神々が、最後の手段を取る事にしたと神託を降ろした。

 最後の手段、それこそが「勇者降臨の儀」。つまりは僕を呼ぶことだった。




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