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42.公爵夫妻がお化け屋敷に行ったら。

注意:これは突発的に思いついたお話です。本編等には関係ありません。

 世界観が壊れている可能性があるので、何でもOKの方だけ先にお進みください。


 「ここよ、リーン。期間限定の『ホラーハウス』」

 「凄い人気らしいけど、そんなに怖いの?」

 「らしいわ。こないだミアが行ったのだけど、同行したお友達は泣いちゃったんですって。」

 

 一緒に行列に並びながらリーンが私を見る。薄青の目が面白そうに光った。

 

 「ふーん・・・君は怖くないの?」

 「全然怖くないわ!おばけとか幽霊は信じてないの。貴方は怖い?」

 「まさか。城もうちの屋敷もあれだけ古いんだもの、怪談の10や20あるよ。そんなとこに住んでて怖がってたら生きていけないでしょ?」

 

 彼が怖がる姿なんて想像できないけど、からかってみたら案の定、不敵に笑って返されてしまった。

 そうよね、古い建物って怪談あるわよね・・・・・・あれ?今、うちの屋敷も、って言った?

 

 「リ、リーン・・・私の部屋とか寝室には出ないわよね?ってか、どこに出るの?教えて?!いや、やっぱり言わないで?!」

 

 プチパニックに陥った私を引き寄せた彼が、落ち着けとばかりに背中をぽんぽん叩く。

 

 「なんだ、エミィは怖がりだったのか。ここに入るのは、やめといたほうがよくない?」

 「怖がりじゃないわ!ちょっと驚いただけ!それにここのは作り物だもの、平気よ!」

 

 彼のからかうような声色にムッとして私は全否定した。

 そう、屋敷にいると聞いてうっかり驚いただけで、怖くなんてないわ。おばけも幽霊もこの世に存在しないんだから。

 

 「そう?じゃ、順番きたし、入ろうか。」

 「えっ?!」

 

 いつの間にか前に並んでいた人達がいなくなっていて、案内係の人が扉代わりの黒い布をめくって私達に入るよう促していた。

 

 待って心の準備が!と言う暇もなく背中を押されて放り込まれ、布を下ろされた。

 

 中は真っ暗で、入った拍子に繋いでいた手が外れてしまった。

 置いて行かれてはたまらないので手探りでリーンを探したら、慌てたような気配がして身体ごと抱きしめられた。

 これはこれで動き辛いわ。

 よいしょ、と手を探し当て繋ぎ直す頃には目が慣れて通路が見えていた。

 よくよく見ればぼんやりとした光が足元を照らしている。

 なんだか怖さが消えて洞窟でも冒険しているような気分になってきた。わくわくするわね!

 

 「よし、行きましょう!」

 「あれ、意外と元気だね。」

 

 ちょっと面白くなさそうな彼を引っ張るようにして私は歩きだした。

 

 

 「わお!リアルね!」

 

 上から下がってきた作り物のおばけの生首に驚きつつも、それを手にとってじっくり見てしまう。

 隣でリーンがちょっと嫌そうにしているが、気にしない。

 楽しくなってきた私は、横から出てきた綺麗な幽霊の女性に手を振って、後ろから飛んできた何かを避ける。

 彼もそれを無表情のまま避けた。

 

 なんだろう、さっきからわーわー喋ってはしゃいでいるのは私だけみたい。

 せっかくのお休みにここまできて、彼が楽しくないのは悲しい。私が誘った手前、とても申し訳ない気がしてきて様子を窺う。

 

 「・・・リーン、楽しくない?」

 

 それを聞いた彼は目を瞬かせて、しょぼんとした私を見た。

 もし、楽しくないというのなら、あと半分くらいだろうし早足で通り抜けてしまおう。

 そう決めて、もう一度彼に聞く。

 

 「貴方、さっきから表情が死んでるわ。ここに誘ってごめんなさい。早く終わらせて他の所へ行くほうがいいわよね?」

 

 すると彼が焦りだした。

 

 「えっ、僕そんな顔してた?!ごめんね、えーっと、そう、僕はやっぱり怖くてそれを我慢してたから!」

 「ええ?貴方、入る前に怖くないって言ってたわよね?」

 「思ったより暗くてリアルなんだもの。怖くてたまらないんだ。」

 

 そう主張されれば、そんな気もしてきた。彼の手もなんか震えてるみたいだし。

 よし、そうならたまには私に頼ってもらおうじゃない!

 

 「怖いならしょうがないわね、私の腕に掴まってていいわよ。出口まで私がついてるわ。」

 

 いつもと立場が逆転したようで張り切って声を掛けたところ、私の身体が宙に浮き目線がぐんと上にあがった。

 

 「リーン?!何するの?!」

 「いや、だって僕は怖いから君にしがみついていようと思って。いいよね?」

 「よくない!これ、しがみついてないし!」

 

 なんで、縦抱っこされておばけを見て回らねばならないの!

 不安定な体勢で、暗くっておばけ(作り物だけど)の出る所を行くのは、私だって怖いわよ!

 だって上から降ってくるかもしれないし、何か出ても自由に逃げられないじゃない。

 そう思うとますます心細くなってきた。

 

 「あの、リーン?この体勢だと何か怖いのだけど。降ろして・・・」

 「ん?怖いの?じゃあ、僕にしっかりしがみついてたらいいよ。」

 「そうじゃなくて!」

 

 おかしい、私がその台詞を言う側だったはずなのに。

 結局、残り半分の道程をそのままの体勢で騒ぎながら進む羽目になった。

 

 

 やっと出口に辿り着き、入口と同じように黒い布をめくって出た外は、まだ午後の早い陽射しが照りつけていて明るかった。

 私は降ろしてもらうと同時に、眩しくて目を閉じた。そしてそのまま彼に抗議する。

 

 「リーン!貴方、絶対怖くなんてなかったでしょ。」

 

 すると頭にふっと柔らかい何かが触れる。急いで目を開けて彼を見れば、いたずら成功というような表情をしている。

 周囲を見回せば、同じようにホラーハウスから出てきた女の子達の顔がほんのり赤くなっている。

 何したの?もしや、この公衆の面前でキスしたとか・・・じゃないわよね?

 

 戸惑う私に彼はいい笑顔を向けて、

 「まさか。怖くて怖くてたまらなかったよ?しがみつかせてくれて助かったから、お礼に何か甘いもの食べに行こ。何がいい?」

 と答え、いつものように手を差し出してきた。

 私はその言葉に怒るのをやめて、彼と手を繋ぐ。

 

 「じゃあ、おばけっぽいもの!」

 「エミィは難しいこと言うなあ・・・。」

 

 ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

 季節外れもいいところなんですが書きたくなってしまったので・・・。

 

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