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番外編 甘く、酔う

スピンオフ『王太子殿下の4人目の婚約者は悪役令嬢?!』

を投稿したので記念して。


■■

sideL



先日のぬいぐるみのお礼にと、兄夫婦からエミーリアへ果実酒を言付かった。

確かにこの国では16歳を過ぎればお酒を飲んでも罪ではない。でも。


「彼女はまだ、お酒を飲んだことがないんですけど。」

と言えば、にっこり笑った義姉が、

「あら、まだなの?相変わらず過保護ね。これはとても飲みやすいの。お酒が飲めるかどうか、飲めるなら限界はどれくらいか、知っといたほうが良くってよ。」

とぐいぐい僕に押し付けたのだ。


これは、義姉上の実家の領地で作られてるお酒だな。あそこはりんごの産地で美味しいシードルができるんだ。

しかも、僕の好みの辛口じゃなく、初心者のエミーリアに合わせて度数の低い甘口を用意するあたり、上手い。


これは彼女に飲ませるしかないじゃないか。


酔った妻がどうなるかと邪な思いも抱えつつ、それを持って早々に帰邸した。



「わぁ、お酒は初めて飲むわ。」


夕食後の2人の時間に、もらったシードルとそれに合わせた軽い食べ物を用意して楽しむことにした。

相変わらず初めてのことには目をキラキラさせて喜ぶ妻を眺めつつ、グラスをちょんと合わせ、僕が先に味見をする。


「僕にはちょっと甘いけど・・・君にはちょうどいいかも。美味しいよ。」


そう勧めてみれば、恐る恐るグラスに口をつけた彼女が笑顔になった。


「美味しい!ジュースみたいね。」


そう言うなり、喉が乾いていたのか止める間もなく一気に飲み干した。

まあ、グラスに3分の1くらいしか入れてなかったけどね。


僕も残りを飲み干して、次はいつもの辛口のお酒を注ぐ。

実は僕はザルで、いくら飲んでも酔わない体質なんだよね。だから、家族にはもったいないから水でも飲んでろ、とよく言われる。

でも、ザルにだってお酒を楽しむ権利はあるはずだ。

横をちらりと見るとエミーリアが美味しそうに今度は少しづつ2杯目を飲んでいた。


心なしか顔が赤くなってきてるような。

え?もう?

量的にグラス一杯もまだ飲んでないよね?


この人、お酒だめなんじゃないだろうか、と不安に思いながら見つめていたら、まだ少し残っているグラスをテーブルに戻した彼女がぎゅうっとしがみついてきた。


な、何これ?!


エミーリアは酔うと甘えるタイプなの?!


控えめにいって最高なんだけど!


ちょっと慌てつつ、僕もグラスをテーブルに置いて彼女の背に手を添える。


「エミィ、大丈夫?気持ち悪くなったりしてない?」


そう尋ねれば、僕にしがみついたまま頷く。


「りーん、なんかふわふわして、たのしいの。」


そう言いながら顔を僕の胸にすりすりと擦りつけてきた。


こんなの初めてされたんだけど?!


これ、酔ってるよね。

妻がグラス半分の低度数のお酒でめちゃくちゃ酔ってる!


しかも、酔い方が想像以上に可愛い。


この人、これ以上可愛くなってどうすんの?!


僕をどうしたいの?!



「おかわりする・・・」


そう言うと僕から離れて、グラスを両手で抱え込んで残ったシードルを飲みきる。

このまま次を注いでいいかと、ロッテが目線だけで尋ねてきたので首を横に振った。

いくら可愛くても、もう飲まないほうがいいだろう。


ここまで弱いとは思わなかった。


「ロッテ、水にして。それから、よかったら残りをもらってくれる?女性向けのいいお酒だよ。」


小さい頃からの付き合いで、ロッテはお酒が好きなことを僕は知っている。

予想通り、ロッテは嬉しそうに頷いた。


「あら、いいんですか。こんないいお酒が飲めるなんて嬉しいです。」


「僕は好みでないし、エミィがこんなに弱いんじゃ、飲みきれないよ。彼女は夜会でのお酒は禁止だなあ。」


僕が苦笑すると、ロッテが優しい眼差しをエミーリアに向けた。


「こんなに真っ直ぐに甘える奥様は貴重ですね。」

「本当にね。可愛いなあ。」


子供のように水を飲む彼女の横顔は先程より赤くなっている。

随分酔いが回ってしまったようだ。

水で少しは酔いが覚めるかな。

普段これだけ甘えてくれることはないので少し惜しい気もするけど、彼女の健康が一番大切だからね。


「ごちそうさま。おやすみなさい。」


そしてなんと、飲み終わった彼女はすとんと眠りに落ちてしまった。


僕の膝枕で!


僕自身は時々エミーリアの膝枕を楽しんでいるけれど、僕が彼女を膝枕したことはなかった。

何度か勧誘してみたんだけど恥ずかしがって逃げちゃうんだよね。


今日は僕も初めてだらけだ。


流石に刺激が強すぎて、久々にタオルの世話になってしまった。


本当にここ数ヶ月なかったんだけどなー。

いや、彼女への愛情が薄れたとかいうわけではなくてね。



ロッテにはテーブルの上の片付けを頼み、そのまま下がってもらった。

2人きりの空間で、彼女の寝顔を心ゆくまで眺める。

毎日見ているけれど、見飽きないものだな。と思いながら艶やかな灰色の髪を撫でる。

この髪もかなり伸びてきた。もうまとめ髪にするのも苦労しないと先日の夜会の時に嬉しそうに言っていた。


君の心の傷も少しは癒えただろうか。

僕は君をちゃんと守れているだろうか。


抱き起こしてそっと唇を重ねたら、甘い味がした。

同時に身体が熱くなってふわふわする。


僕はお酒には酔わないけれど、妻には直ぐに酔うんだ。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

よろしければスピンオフも覗いてやってください。エミーリアはでていませんが・・・。

『王太子殿下の4人目の婚約者は悪役令嬢?!』のリンクを下に貼っていますので良かったらみてください。題名の上のリンクからも飛べるはず・・。


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