パンダさんの心頭滅却すれば火もまた涼し!
アンニュイな午後。パンダさんは博士の研究所を訪れました。
博士は天才的科学者でしたが、パラノイアな発明で、学会から永久追放。
人里離れた野生の王国に亡命してきたのです。
博士は世間に復讐しようと新しい研究に着手。動物たちに協力を求めました。
ここでなら誰憚ることなく思う存分、非人道的な生体実験ができるでしょう。
研究所行ったらお小遣いもらえるしゴハンも出るので、みんな喜んで、
クスリ飲んだり、電気流されたり、解剖されたりしてるのです。
さて、パンダさんです。博士から一向に声がかかりません。
博士は小動物ばかり優遇しているのです。これはズルイ!不公平!差別だ!
研究所は楽しそう。あんまり愉快なんでそのまま帰ってこないのもいる。
そして聞き捨てならないウワサが耳に入ったのです。
「研究所はクーラー効いてて、夏でも涼しい!」
パンダさん、とうとうガマンできずに自分から押しかけちゃった。
ちょうど博士は、遅い昼食に取りかかっていました。改造手術が長引いたのです。
「いいトコに来た!ボクにもちょうだい」
博士はシブシブ、夕べの残りのカレーを出すことにしました。
「お腹がペコペコなんだよぉ」
ガツガツガツッ!んがぐぐっ!ペッペッペッ!
「なんじゃこりゃーっ!かっかかか辛れぇぇぇーっ!」
パンダさん、あわてて水をガブ飲み!
頭は熱くなり変んな汗がダラダラ舌はヒリヒリ!
「このクソ暑い中、なんてものを食わせるんだ!・・・これがウワサの非人道的な生体実験ってヤツか!」
博士、ムッとしました。せっかくごちそうしてあげたのに・・・
「暑い時に熱いものを食べると暑気払いになるんじゃよ」
「???????」
「いやっ、暑い時に熱いものを食べると汗が出るから涼しくなるんじゃよ」
「暑い時に熱いものを食べたから汗が出たんだぞ」
「だからぁ、汗が出て体が冷やされたから涼しくなっただろ?」
「汗が出たのは暑さ×熱さのコラボじゃねぇかっ。そんな回りくどい方法でなく、体温下げるなら素直にアイスクリーム食べればいいじゃん」
「・・・例えばここにタコヤキがあるとする。皮はカリカリで中はトロトロ熱くて食べられん。そこへグツグツ煮立った鍋焼きウドンが運ばれてきたら、タコヤキの熱さは感じないじゃろ?」
「えっ?タコヤキとウドンがあるなら早く言ってよ。熱くても食べるからさぁ」
「た、例えばのハナシだ!より高いものがあれば他は相対的に低く感じるという・・・」
「んじゃ、先にタコヤキでいいよ。そいでウドンね」
「タコヤキもウドンも無いと言ってるだろーがっ!」
「ははーん、ボクに食べさせずに独り占めする気だな!ゴーツクバリめっ!」
「きっ君とはオハナシにならんっ」
「オハナシじゃねーよ、タコヤキ!いい?タ・コ・ヤ・キ!タコヤキだよ!」
パンダさんの心頭滅却すれば火もまた涼し!
ええっとこりゃ、喉元過ぎれば熱さ忘れる、ってヤツでしょうーかねぇ・・・
・・・・・・・・・・To Be Continued