パンダさんのプリティーダービー!(後)
地上最速を決めるウマのレースは大人気!
今では毎週土曜日に定期的に行われます。
スリルと興奮!
ウマの走りには荒々しい躍動感がありました。
そして逃げ・先行・差し・追い込みといったレース展開。
目まぐるしい逆転のドラマに皆は熱狂!
誰が勝つかわからない!
そう、ウマたちの実力は伯仲していました。
そして単に走るのが速いだけでなく、
その日の体調・天候や馬場状態までもが、勝敗を大きく左右するのです。
初代チャンピオンのアシゲは次戦でクリゲに敗れました。
第一人者を自認していたクロカゲは三戦目にしてようやく初勝利。
他のウマも実戦を重ねる毎に手強くなってきている。
これには理由があります。
勝ち馬は一躍人気者となり、馬主も大喜び。
ご褒美にニンジンの大盤振る舞い!
四戦目からは各馬主が持ち寄ったニンジンを勝者が総取りに!
さらに見物客からのプレゼントも全部贈られました。
何しろ野生の王国は「弱肉強食」ですから、勝てば官軍。
敗者は敗者。ハナ差の二着だろうが、ビリと同じなのです。
なので連勝複式とか三連単だのワイドとかいった、ヤヤコシイ仕組みはない。
勝ち馬が全部持っていく!のです。
でも、いくらウマとはいえ、膨大な量は食べきれません。
そこで勝ち馬は余った賞品を応援してくれた見物客に分けました。
これがまた大好評!持ってきたプレゼントが数倍になって返ってくる。
こうなると応援側にも力が入る。真剣です。
今までは単にレースを楽しむだけでしたが、儲かるかもしれない。
各ウマを好き嫌いでなく、純粋に能力で判断します。
その他、体調・天候・馬場状態から前走の成績まで参考にせねばなりません。
馬場にはノミの予想屋まで出没する始末。
ウマのレースは空前の盛り上がりを見せたのです。
さてパンダさん、ようやく登場。
パンダさんもまたこのビッグウェーブに乗っかろうと、馬場に来た。
本日も超満員。そして表彰台には各自持ち寄った賞品が山積み。
パンダさんの賞品は売れ残りのパン一斤。
フフフ、これが帰りには酒やらお菓子なんかに化けるのだ。
パンダさん、さっそく出走表を確認して検討します。
パドック覗いたりしたけど、正直よくわかんない。
でも最近好調のクリゲが勝ちそうな気がしました。
皆もそう思っているのでしょう。
あたりを見回すとクリゲの応援団でいっぱい。
やっぱり、そうか!
パンダさんは安心してクリゲに投票しようと・・・まてよ。
クリゲの応援はたくさんいます。
クリゲが勝ったとして、あの賞品はコイツラと分けねばなりません。
分け前が少なくなっちゃう。
それに比べてアオカゲ!誰も賭けていない。
まあ、一度も勝ったことがないから無理もありません。
だけどだけど、勝負は時の運!レースに絶対はない。
未勝利といったところで差はせいぜい数馬身。誤差の範囲内だ。
そうだ、これまでにも一番人気がコケることは何度もあった。
しかも今日は小雨模様で気温も低い。馬場は不良。
ドロがはねて思うように走れないでしょう。
先頭集団が転倒でもすれば、あるいは・・・
パンダさんはアオカゲに賭けました。
勝てば総どり!ひとり占め!
パンダさんは馬券を握りしめ天に祈ります。
生まれて初めて神様の存在を信じました。
アオカゲ、来い!
レースがスタート!
何とアオカゲ、真っ先に飛び出した。
よし、行けっ!
パンダさん、金網つかんで絶叫!
ところがアオカゲ、ドロに足を取られたか外に振れカゲと接触、
そのまま三頭をまきこんで転倒!レースは大荒れ。
パンダさんの夢は、はかなく散った。
パンダさんのプリティーダービー!
ギャンブルは、程よく楽しむ大人の遊び!
・・・・・・・・・・To Be Continued